「課題発見」とはお客様の課題を知ることではない
「最も必要なスキルは"課題発見力"」
営業にもとめられるスキルとして、こんなことをよく言われる。
そもそも課題発見力とはどのような能力なのか、また、どうすれば身につけられるのか。
結論から申し上げれば、課題発見力とは、お客様がどのような課題を持っているかを知る能力ではない。
例えば、私達が「それは課題だ!」と思ってみても、お客様にそれを解決したいという意欲がなければ、それはお客様にとっては課題ではない。お客様の「なんとしてでも解決したい」、その想いを引き出すことができてこそ、お客様の課題になる。そんなお客様の意欲があるから、私達は、課題解決のための提案が可能になる。
課題発見力とは、このような「課題を解決したいというお客様の意欲」を引き出す能力だ。
そもそも「課題」とは何か。「課題」とは、お客様の望んでいる「あるべき姿」と「現状」とのギャップだ。そのギャップを埋めることが「課題解決」であり、その手段が「ソリューション」となる。
例えば、1000億円の売上達成がお客様の望まれている「あるべき姿」だとする。しかし、「現状」は800億円しかない。ここには200億円のギャップがある。お客様は、このギャップをなんとか埋めたいと思っている。つまり「200億円売上を増やすこと」にお客様は意欲を持っている。これが課題だ。
もしお客様が800億円で良いと考えるなら現状が800億円なのでギャップはないので課題はない。
つまり課題とは、「お客様が自ら意欲を持って解消したいギャップ」ということになる。
課題を知るとは、このギャップを見つけること。そのためには、お客様が何を望んでいるのか、そして現状がどうなっているのかを知ることからはじめなくてはならない。この両者が分かってこそ、ギャップが明らかになる。
ところで、どのようにすればこのギャップを知ることができるか。例えば、お客様に「何をお望みですか?」「現状はどうなっているのですか?」などと質問して、お客様は素直にその答えを教えてくれることなど、期待すべきではない。お客様にしてみれば、説明できるほど整理できているとは限らないし、そもそも、何について聞いているのかさえ定かではなく、何をどう答えて良いのか分からないのかもしれない。あるいは、なんでそんなことをあなたに話さなくてはならないのかと思っていれば、たとえ分かっていても話しなどしてくれない。結局は、「何もありません」と言われ、話しはそれ以上先には進まない。
まず行うべきことは、お客様についての徹底した情報収集だ。お客様の現状はどうなっているのかを自分なりに丁寧に調べ整理しておくこと。その上で、お客様はこんなことを望まれているのではないか、あるいは、こうすべきだという自分なりの仮説を立てること。そして、お客様にこんな問いかけをしてみてはどうだろう。
「御社では社長方針として2015年度までに売上高1000億円の達成を掲げられています。しかし、現状は800億円であり、直近3年の売上高の増収も2%程度であることを考えると、あと3年で25%の増収を狙うというのは、容易なことではないように思います。やはり、同業他社が取り組まれていると同様のECサービスに新規参入し、そのギャップを一気に埋めようとお考えなのでしょうか?」
その答えは、YesかNoしかない。そして、Yesであれば、「では、やはりA社の提供されているソーシャル・メディアとの連携を考えたサービスを御社でも展開されるわけですね。」などと、さらに質問を重ねてゆく。その繰り返しにより、お客様の「あるべき姿」と「現状」とのギャップを明らかになってゆく。
もし、Noであれば、「では、アジア圏での販売拠点を拡充されるのですか?」と別の仮設を示しながら、お客様のYesを探り出す。こういう仮設をいくつか用意し、お客様との会話に望むことが大切です。「分からない」という答えなら、「分かる人を紹介して頂けないか」と食い下がる図々しさも欲しい。
「何かありませんか?」ではなく「これはどうですか?」の質問をあらかじめ用意し、それをお客様にぶつけてみる。これがギャップを発見する、つまり課題発見するための効果的な方法だ。
ただ、お客様が「あるべき姿」を知らないことも少なくはない。ならば、お客様に、お客様の「あるべき姿」を知らせることで、ギャップを創り出すことができる。
例えば、AIの適用によって、お客様のビジネスはどのように変わるのか。クラウド・サービスの普及やITテクノロジーの進化によって、情報システムの「あるべき姿」はどのようになるか。そして、その進化にふさわしいお客様の情報システムの「あるべき姿」は、どうあるべきなのか。
このようなお客様の「あるべき姿」を示し、現状との間にギャップがあることに気付かせることで、それを解決したいという意欲を引き出すことができる。
あるいは、お客様の現状をこちらが丁寧に整理し、本来あるべき姿との間にどのようなギャップが存在しているのかを、客観的、分析的にお知らせすることもひとつの方法だ。そうすれば、お客様は、そのギャップを知り、自らやるべきことに気付かれるかもしれない。
課題発見とは、このようにお客様の意識の中に、現状とあるべき姿のギャップを描き出し、それを解決したいという意欲を引き出すことだ。
一般論をかざして、「御社の課題は」と押し売りしても、お客様はそれを解決したいと思わない限り、課題を発見できたとは言えない。
課題発見力とは、広く様々な情報を収集し、それをお客様に当てはめて分析し、仮設を組み立てる力だ。そして、それをお客様に伝え、検証する手順をこなす力でもある。
課題とは、解決したいという意欲を伴う問題意識。問題の存在に気付かせ、それが何かをお客様の実際の業務やデータを交え具体的なイメージとして表現し、このままではたいへんなことになる、何とかしなくては、と解決への意欲を引き出すこと。
これが、課題を発見するということ。
課題発見力とは、言葉の言い回しや思考のフレームワークを学ぶだけでは、その能力を高めることはできない。むしろ、お客様やお客様を取り巻く環境、社会や経済の常識に関心を持ち、そういう情報をしっかりとアップデートしておくことが大切。その情報を使って的確な仮設を立てる。その能力こそ、課題発見力の本質と言える。
5月17日(木)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第28期」の受付を開始致しました。つきましては、御社でのご参加をご検討頂ければ幸いです。
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LiBRA 4月度版リリース====================
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- 【新規】Amazonのデータ収集戦略 p.30
- 【新規】IoT通信:LPWAと他の通信方式の比較 p.34
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- サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
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開発と運用編
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