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日本は金利を上げるだけで円安を止められるか? 答えはNO!

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円安.jpg

対米ドル円安傾向が続いています。

政府は為替介入も行っていますが、
明確に円安が転換されるほどにはなっていません。
介入後、短期間で元の水準戻ることを繰り返しています。

また、世間を見渡してみると、
物価高阻止のためには円安をストップさせなければならないという論調が強く、
そのためには日銀の政策金利の引き上げを求める意見が多いように見受けられます。

果たして、昨今の円安の傾向は、
日本の政策金利を上げるだけでストップするのでしょうか?

答えはNO!です。
確かに日本と米国の金利差は為替に影響を与えますが、
話はそれだけで済む単純な話ではありません。

円安は日本にとってプラスなのかマイナスなのかの議論はいったん横に置いて、
今回は、昨今の円安はなぜ起こっているのかを解説してみましょう。


1.日米の金利・実質金利差
これは現在一般的によく言われていることです。
2026年8月15日現在、
日本の政策金利は1%
米国の政策金利(FF金利)は 実効で3.63%
となっていて、この金利差が円安ドル高傾向を生んでいます。


2.日本企業の海外投資
財務省によると、2025年末の日本の対外資産残高は1,805.6兆円。
前年から141.4兆円増えています(資産の評価額アップを含む)。

この141.4兆円すべてが新たに海外へ投資されたわけではありません。
円安や海外の株価上昇などによって、
すでに持っている海外資産の円換算評価額が増えた部分も含まれています。

一方、実際の資金の動きとして、
2025年の対外直接投資は+32.6兆円の取得超でした。

つまり日本企業が海外企業を買ったり、
海外子会社へ増資したり、海外工場へ投資したりする流れは
巨大なものになっています。

これは基本的には、
円資金 → 外貨 → 海外資産
なので円売り要因です。

ただし、企業がすでに海外に保有しているドルを使って投資するケースもあるので、
対外投資額=同額の円売りではありません。ここは注意が必要です。


3.日本人の海外証券投資
2025年度だけでも、日本の居住者による

海外株式・投資ファンド +2.07兆円

の取得超がありました。

取得超とは、
海外証券を新たに取得した額から、
海外証券を処分(売却・償還など)した額を差し引いたものです。

ここには個人だけでなく、生保、銀行、年金、投信などが入っています。
具体的には、オルカンやS&P500を買う動きです。
NISAの導入により個人の投資も大きくなっていますが、
機関投資家の金額も非常に大きいものになっています。

これも為替ヘッジの有無がありますから、
10兆円投資=10兆円の円売りとは言えません。
しかし、円売り需要を生み得る構造であることは間違いありません。


4.デジタルなどサービス赤字
これは経産省がかなり問題視していますが、
2025年度の日本は、
サービス収支は、約▲3.88兆円でした。

しかも経産省は
「いわゆるデジタル貿易赤字が拡大している」と明記しています。

さらにはわざわざ「デジタル赤字」をテーマにした報告書まで出しています。
ソフトウェア・データを中心とした海外サービスへの依存を、
日本の産業構造上の問題として分析しています。

要するに、
Google広告
Microsoft/AWS等のクラウド
各種SaaS
ソフトウェア
コンテンツ
ライセンス
AI利用料

などの海外サービスを日本側が購入するケースが大きくなっているということです。
これは最終的には外国企業への支払いですから、継続的な外貨需要になります。
ただしサービス収支全体では、
インバウンドによる旅行収支の大幅黒字がこれを相殺しています。
したがって、「デジタル赤字だけを見て円安原因とする」のも言い過ぎではあります。


5.エネルギー・資源輸入
これは最も分かりやすいと思われますが、
日本は原油、LNG、石炭などを大量に輸入します。
これらは基本的に外貨建て取引です。

したがって資源価格が上昇する局面では、

日本企業が円を売る
→ ドル等を調達する
→ 原油・LNGを購入

という外貨需要が増えてます。

ただし、これは未来永劫ずっと同じ強さの円安要因ではありません。
資源価格が下がれば、輸入総額は減りますので、
循環的な要因と言えるでしょう。


6. 海外で稼いだ利益が円に換金されない
昨今は、海外に子会社を作り、
海外で工場を作り、外貨で利益を得る企業が一般的になっています。
つまり、日本の企業の利益は、海外で生み出されているケースが増大しているのです。
財務省自身が2025年に、
「第一次所得収支は還流しているのか?」
という、そのものズバリの研究を出しています。
第一次収支とは、簡単に言えば、
海外に持っている資産や事業から得た儲けの収支のことです。

この研究の中で、
日本の第一次所得収支は2024年だけでプラス40.2兆円でした。

ところが、
これを40兆円の黒字だから
40兆円分が外貨から円に転換されたと考えるのは間違いです。

海外子会社の利益には再投資収益があります。
たとえば某自動車メーカーが米国子会社が1,000億円稼ぎ、
そのうち500億円を米国工場の設備投資に回したとします。

国際収支統計上は、
その500億円も日本が海外から得た直接投資収益として
第一次所得収支に計上されます。

ところが実際には、ドルのまま米国に残って再投資されるのです。
円には一度も変換されないのです。


以上、考えられる円安傾向の原因を挙げてみました。

こうして見てみると、
現在の円安は日米の金利差だけで起きているわけではないことが分かります。

日銀が政策金利を引き上げれば、
日米金利差が縮小し、円高方向への力が働く可能性はあります。

しかし、日本企業が海外で稼ぎ、
その利益を海外で再投資するようになったことや、
日本から海外への投資、
海外サービスへの支払い、
エネルギーや資源を購入するための外貨需要など、
日本経済そのものの構造から生まれている円売り要因まで、
政策金利を上げることで消えるわけではありません。

したがって、
「日銀が金利を上げれば円安は止まる」
と考えるのは少々単純すぎるのではないでしょうか。

ただし、昔から「為替相場ほど予測するのが難しいものはない」
といわれているほど為替の動きは奇々怪々です。

注意深く観察し続けることが大切です。

最後に参考文献を挙げておきます。
財務省「日本経済と資金循環の構造変化に関する研究会」

経済産業省「データに飲み込まれる世界、聖域なきデジタル市場の生存戦略」

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