なぜ日本の経営者は「IT苦手の壁」を築いてしまったのか
「IoTとAIについて、話をして頂けないでしょうか?」
"IT企業ではない"ところから、こんなご相談を頂く機会が増えました。経営者や事業部門など、「ITの素人」にも分かるような話をして欲しいとのご依頼です。話しを聞けば、
「ITをうまく活用してゆかなければ、まずいと感じています。しかし、自分たちの事業にどのように取り込めばいいのか、よく分かりません。そのきっかけになるような話しをしてください。」
上場企業での講演では、社長が参加されたこともありました。それほどまでに、ITを活かして競争優位を築かなければという機運が、多くの企業で高まりつつあるようです。
その一方で、今朝の林雅之さんのブログ「デジタルおよびテクノロジーの能力を最も重視する日本のCEOは4%、世界最低水準」にもありましたが、日本全体で見れば、まだまだのようです。
今年1月に上梓した拙著「未来を味方にする技術〜これからのビジネスを創るITの基礎の基礎」は、そんな「ITの素人」の方にも、ITで何ができるようになるのか、どう向き合えばいいのかを解説したものです。ITやちょっと先の未来について、事例を交えながら、できるだけわかりやすい表現を心がけました。ささやかではあるのですが、「世界最低水準」の汚名を返上するために、お役に立てればと願っています。
ところで、なぜ日本の経営者は、斯くも「IT苦手の壁」を持つようになったのでしょうか。これは、私の勝手な想像でしかありませんが、「キーボード文化」が無かったことが背景にあるのかと思っています。
いまでこそ、コンピュータのUIは多様化していますが、かつてコンピュータを使うにはキーボードに向き合うしかありませんでした。
コンピュータが登場する以前、米国のビジネスの現場では、だれもが当たり前にアルファベット26文字のタイプライタを叩くリテラシーがありました。その延長線上に登場したのがパーソナル・コンピュータです。そのため、コンピュータは身近な存在として、ビジネスの現場に受け入れられてゆきました。そんな背景が「IT苦手の壁」を生みださなかったのではないでしょうか。
一方、我が国では、数千文字の漢字とひらがなを使いこなし、鉛筆やペンで文字を書くことが当たり前でした。タイプライタを使いこなすのは「タイピスト」の専門の仕事でしかなかったのです。そこにコンピュータが登場し、これまで経験の無いアルファベット26文字のキーボードの使い方を習得しなければなりません。また、文字を書くスピードも一文字をアルファベット二文字で入力し、しかも仮名漢字変換が必要なことから、どうしても遅くなってしまいます。そんなことから、キーボードを使うことへの抵抗を感じ、それが結果として、「IT苦手の壁」を意識付け、ITへの理解を遠ざけてしまったのではないかと考えています。
「コンピュータ=キーボード=IT=苦手」
そんな意識の連鎖が、日本の経営者の多くに、いまなお根強く残っているのではないでしょうか。
しかし、ITはもはや日常の中に埋め込まれ、企業活動もまたITなくして機能しないのは、経営者であっても理解しています。しかし、それは、「タイピストの仕事」つまり「情報システム部門の仕事」であるとの認識がいまもあるのです。
確かに、機器の選定やシステムの構築となると専門知識を持った人たちに任せるしかありません。しかし、ITは、私たちの日常や社会、ビジネスに深く関わり、これまでの常識を大きく、そして急速に変えようとしているいま、「ITは苦手だから」と言い訳し、逃げおおせるものでもありません。せめて、ITがもたらす新しい常識がどのようなもので、なぜ必要とされるのか、どのような価値を生みだそうとしているのかといったことは知っておきたいものです。また、たとえ詳細な技術論はできなくても、ビジネスの施策や戦略を描くために必要な基礎的なことやその動向について知っていることは、もはや経営者の常識と言えるでしょう。
ITベンダーもまたこの現実を受け入れるべきです。自分たちのやっていることが、「情報システム部門の仕事」ではなく「経営のための仕事」であることを、あらためて自覚し、ITの経営における価値を「ITの素人」にも分かる言葉で伝えてゆかなければなりません。
そんな心がけが、経営者の「IT苦手の壁」を打ち破り、「デジタルおよびテクノロジーの能力を最も重視する日本」へと変えてゆくのではないでしょうか。
【受付開始】ITソリューション塾・東京/大阪/福岡
「IoTやAIで何かできないのか?」
「アジャイル開発やDevOpsでどんなビジネスができるのか?」
「うちの新規事業は、なぜなかなか成果を上げられないのか?」
あなたは、この問いかけに応えられるでしょうか。
「生産性向上やコスト削減」から、「差別化の武器としてビジネスの成果に貢献」することへとITは役割の重心を移しつつあります。そうなれば、相手にするお客様は変わり、お客様との関係が変わり、提案の方法も変わります。そんな時代の変化に向き合うためのお手伝いをしたいと思っています。
東京での開催は5月16日(火)からに決まりました。また、大阪では5月22日(月)からとなります。さらに福岡は7月11日(火)からを予定しています。
詳細日程や正式なお申し込みにつきましては、こちらをご覧下さい。
ITソリューション塾では、IoTやAI、クラウドといったテクノロジーの最前線を整理してお伝えすることはもちろんのこと、ビジネスの実践につなげるための方法についても、これまでにも増して充実させてゆきます。
また、アジャイル開発やDevOps、それを支えるテクノロジーは、もはや避けて通れない現実です。その基本をしっかりとお伝えするよていです。また、IoTやモバイルの時代となり、サイバー・セキュリティはこれまでのやり方では対応できません。改めてセキュリティの原理原則に立ち返り、どのような考え方や取り組みが必要なのか、やはりこの分野の第一人者にご講義頂く予定です。
2009年から今年で8年目となる「ITソリューション塾」ですが、
「自社製品のことは説明できても世の中の常識は分からない」
当時、SI事業者やITベンダーの人材育成や事業開発のコンサルティングに関わる中、このような人たちが少なくないことに憂いを感じていました。また、自分たちの製品やサービスの機能や性能を説明できても、お客様の経営や事業のどのような課題を解決してくれるのかを説明できないのままに、成果をあげられない営業の方たちも数多くみてきました。
このようなことでは、SI事業者やITベンダーはいつまで経っても「業者」に留まり、お客様のよき相談相手にはなれません。この状況を少しでも変えてゆきたいと始めたのがきっかけで、既に1500名を超える皆さんが卒業されています。
ITのキーワードを辞書のように知っているだけでは使いもものにはなりません。お客様のビジネスや自社の戦略に結びつけてゆくためには、テクノロジーのトレンドを大きな物語や地図として捉えることです。そういう物語や地図の中に、自分たちのビジネスを位置付けてみることで、自分たちの価値や弱点が見えてきます。そして、お客様に説得力ある言葉を語れるようになるのだと思います。
ITソリューション塾は、その地図や物語をお伝えすることが目的です。
ご参加をご検討頂ければと願っております。
最新版(4月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
新入社員のための「最新トレンドの教科書」も掲載しています。
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*クラウドについてのプレゼンテーションをインフラ編から独立させました。
*使いやすさを考慮してページ構成を変更しました。
*2017年度新入社員研修のための最新ITトレンドを更新しました。
*新しい講演資料を追加しました。
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クラウド・コンピューティング (111ページ)
*「インフラとプラットフォーム編」より分離独立
【新規】クラウドによるコスト改善例 p101-108
開発と運用(68ページ)
【新規】管理運用の範囲 p.37
【新規】サーバーレスの仕組み p.40
インフラとプラットフォーム(211ページ)
*クラウドに関する記述を分離独立
【新規】多様化するデータベース p.127
【新規】クラウドデータベース p.156-158
IoT(101ページ)
【新規】IoTはテクノロジーではなくビジネス・フレームワーク p.16
【新規】LPWA主要3方式の比較 p.52
人工知能(103ページ)
【新規】自動化と自律化が目指す方向 p.14
【新規】操作の無意識化と利用者の拡大 p.21
【新規】自動化・自律化によってもたらされる進歩・進化 p.22
テクノロジー・トピックス (51ページ)
【新規】RPA(Robotics Process Automation) p.17
サービス&アプリケーション・基本編 (50ページ)
*変更はありません
ビジネス戦略(110ページ)
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド(14ページ)
*変更はありません
【新入社員研修】最新のITトレンド
*2017年度版に改訂しました
【講演資料】アウトプットし続ける技術〜毎日書くためのマインドセットとスキルセット
女性のための勉強会での講演資料
実施日: 2017年3月14日
実施時間: 60分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち
【講演資料】ITを知らない人にITを伝える技術
拙著「未来を味方にする技術」出版記念イベント
実施日: 2017年3月27日
実施時間: 30分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち
詳しくはこちらから
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
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斎藤昌義 著
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