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エンジニアと営業はまったく別の精神構造を持たなければならないのか

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「来年度から営業をやらされることになりました。馴れないことで、戸惑っていますが、精一杯頑張ります。」

長年エンジニアとしてやってこられた方から、こんなごあいつをいだきました。そこには「不本意」の想いが見え隠れしていました。

「エンジニアも管理者になれば、数字に責任を負ってもらわなきゃと考えています。でも、その自覚がないんですよね。もっと営業感覚を持ってもらわないといけないと思っているのですがねぇ。」

あるSIerの経営者から伺った言葉です。どうも、エンジニアと営業は、まったく別の精神構造を持たなきゃいけないと言いたげでした。

「『全員営業』が我が社のモットーです。エンジニアであっても営業としての自覚を持たせなきゃいけませんからね。」

中堅SIerの社長の言葉です。この話を聞いて、以前中国・深圳の工場を訪問したとき、構内に沢山の標語が掲げられていることを思い出しました。それについて、工場長に尋ねると「みんなやらないから書いています。できているなら書きませんよ(笑)」との話を思い出しました。

「営業とエンジニアは違う。」

そんな思い込みが、彼らの前提にあるのかも知れません。

本当にそうなのでしょうか。私は、このような話を聞くたびに、「営業」の本質が理解されていないなぁと思えてしまいます。

「できない営業」は、沢山の顧客をまわり、時間をかけ説明したことで、「営業した」気持ちになり満足してしまいます。しかし、数字は上がらず、「こんなに営業しているのに売れないのは、うちの製品やサービスが悪いからだ。お客様のレベルが低いからだ。」と自分を正当化します。

「できる営業」は、どのような状況であっても確実に数字を稼ぎ出してきます。うまくいかないときも、どうしようと知恵を絞り、まわりに助けを求めます。まるで、自分が「できない営業」であるかのように振る舞い、まわりを巻き込んで、自らの不足を補おうとします。

この両者の違いにこそ、営業という仕事の本質があります。

「相手に売り込まれていることを感じさせず、ぜひ売ってくださいと相手に言わせる能力」

「できる営業」が共通に持つ能力です。一方、「できない営業」は、相手に売り込まれていることを意識させ、煙たがられています。中には、そのことにも気付かず「売り込み」を続けるものもいます。

両者の根本的違いは、お客様への愛情です。相手への思い遣り、あるいは、相手の立場や仕事の現場、どのように困っているか、何をしたいのかについて「想像」し、それに「共感」し、「行動」することと言い換えることもできます。「できない営業」は、いまの自分の状況さえも想像できずにいるのです。

想像と共感だけでは相手にはわかりません。行動することで、相手に伝わるのです。

これを営業の仕事に当てはめれば、まずは徹底したお客様についての理解と考察です。お客様の事業内容や業績、経営上の課題や業界の動向などを学ぶことです。知識を持ってお客様との対話に臨めば、自ずと質問も思いつき、相手への理解も深まります。なによりも相手もそこまで考えてくれているのかと心の敷居を下げてくれるはずです。

そんな対話を繰り返しながら、相手の状況を想像すれば、どんなことに困り、何を解決したいのかが見え、相手の気持ちに共感できるようになります。

「よく分かりました。ぜひ、解決策を考えさせてください。」と伝えれば、「よろしくお願いします。」となるはずです。

ここに「売り込み」はありません。でも、案件発掘はできました。こういう能力こそ、営業という仕事の本質なのではないかと思っています。

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このことに営業とエンジニアの違いはあるのでしょうか。エンジニアであったとしても、お客様への愛情や思い遣りがなければ、「できるエンジニア」にはなれないはずです。お客様の現場についての理解、困っていることへの「想像」と「共感」なくして、お客様に満足して頂ける仕事などできないはずです。

強いて営業とエンジニアの違いをあげるなら、「行動」の違いでしょう。つまり、相手への伝え方です。営業であれば、「優れた提案」や「リソースの調達や体制の確保」、「関係者の説得」といった行動が必要です。エンジニアであれば、「業務ロジックとシステム・ロジックの最適化」や「システム設計」、「システム開発」となります。

「数字に対する責任」も「営業」と思われますが、営業だけで数字は上がりません。エンジニアもまた「売れるシステム」を提供しなければ数字にはならないのです。そのためには、数字を追いかけることではなく、お客様の価値を最優先に、お客様から「ぜひ、よろしくお願いします。」と言って頂けるものを生みださなければなりません。

できる営業は、そのことを心得ています。ですから、うまくいかないときには、どうすれば、「ぜひ、よろしく」と言わせることができるだろうかを考え、いろいろと工夫をします。ドキュメンテーションもプレゼンテーションもそんな工夫を体現する手段ではありますが、本質ではありません。

「数字」を追いかけるのではなく、お客様の「ぜひ、よろしく」を追いかけるから、ビジネス環境が厳しくても、結果として数字がついてくるのです。

エンジニアも同じです。「ぜひ、よろしく」とお客様に言って頂けることに喜びや誇りを感じられないとすれば、それは、とても残念なことです。

「相手に売り込まれていることを感じさせず、ぜひ売ってくださいと相手に言わせる能力」

その本質は、こちらからの相手への愛情であり、思い遣りです。そして、その成果は、相手からの深い信頼として返ってきます。このような関係がお客様との間で成り立てば、売り込みの必要ありません。そうなれば、競合は存在せず、優先的に仕事の依頼が来るはずです。これこそが、営業の本質です。ここに営業とエンジニアの違いはありません。

どんなにすばらしい技術があり、どんなにすばらしい製品があっても「営業」なくして売れません。プレゼンテーションやドキュメンテーションの能力も営業活動の手段ではありますが、その前段として、「想像」と「共感」が必要なのだということを忘れないようにしたいものです。

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【新規】アメリカとドイツの取り組みの違い p.88
【新規】インダストリー・インターネットのモデルベース開発 p.90
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基礎編 50ページ
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