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SIをサービス・インテグレーションと読み替えても何も変わらない

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「(クラウドにより)これまで手組みで構築していたようなSIは徐々に減少していくだろう。しかし一方で、これからはパッケージベースのトータルサービスやクラウドを利用した多様なサービスが増え、それらをインテグレーションするニーズが高まっていくと見ている。つまり、同じSIでもシステムインテグレーションからサービスインテグレーションが一層求められるようになる。当社では従来のSIノウハウも生かしながら、そうしたシフトに注力している」

 5月29日、富士通の経営方針説明会で、ITジャーナリストの松岡功氏が、「今後クラウドサービスがさらに普及していくと、SI自体が減少していくのではないか」と質問したことへの山本正已社長の回答である。

 「サービスやパッケージのインテグレーション」でSIビジネスを維持してゆくとのことようだが、その思惑通りに行くのだろうか。

富士通に限らず、SI事業者の方と話をすると、同様の話を伺うことがある。しかし、人月積算型のビジネス構造をどうするかについて、話を伺うことは少ない。また、自社独自のサービスやパッケージを提供するという話しでもなく、外部のサービスや製品を組み合わせることを前提としている。

クラウドがもたらす本質的な価値のひとつは、「エンジニアリング作業の劇的な生産性の向上」である。つまり、構築や運用、開発における工数を少なくする仕組みだ。だとすれば、クラウドサービスで工数を増やすことはできない。つまり、人月積算の拡大をビジネス目的とし続けるならば、ビジネスの拡大にはつながらないことになる。

また、他社の製品を仕入れ、売上を拡大できたとしても、その利幅は少ない。サーポートやマーケティングに費やすコストも、じわりじわりと収益を圧迫し続けることになるだろう。また、自社に独自性がなければ、価格競争を強いられるだけであり、ますますうまみのないビジネスとなる。

ならば、インテグレーションで稼ごうと言うことのようだが、ユーザーがこれまで同様に、きめ細かな個別対応を求めることも少なくなるだろう。なぜなら、ITの予算は頭打ち、構築や変更に対する即応力がこれまでに無く求められる時代となり、個別のカスタマイズやアドオンに必要なコストの捻出は難しく、時間的余裕もない。そうなれば、インテグレーションという「人工作業」に多大な費用をかける余裕はない。当然、そこでの収益も厳しいものになる。

富士通がこういう現実に対してどのような施策を打ち出そうとしているかは、この記事だけでは分からないが、根本的なビジネス構造の変革に取り組まない限り、SIビジネスの拡大は難しいだろう。

この課題は、富士通に限らず、SI事業者の多くが直面している課題でもある。SI事業者の方に話を伺えば、事業変革の必要性を感じていると誰もが口をそろえる。しかし、収益構造を変えることに真剣に向き合っているだろうか。独自性の創出のために人月を稼げるピカイチのエンジニアを現場から引き上げ、新しいことへの取り組みを任せているだろうか。

「システムがサービスに変わるのは、テクノロジー視点からビジネス視点に変わることを意味する」

この記事に書かれているとおりであるが、システムではなく、お客様のビジネス・プロセスや経営に対して、どのような貢献ができるかという視点から、これからのビジネスを考えているだろうか。

この記事を目にし、SIというビジネスの課題を改めて考えさせられた。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

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  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

工数で見積もりする一方で,納期と完成の責任を負わされるシステムインテグレーションの限界がかつてないほど叫ばれる今,システムインテグレーターはこれからどのように変わっていくべきか?そんなテーマで考えてみました。

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