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【書評】iCloudとクラウドメディアの夜明け

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やっと涼しくなってきたと思ったのに今日はやけに暑い。どうも、有給休暇を取って動物園に行ってきました、松井です。

パンダ見てきました。近くで見たら熊でした。

さて、本エントリーはオルタナブログのばんちょーからご提供いただいた書籍「iCloudとクラウドメディアの夜明け 」の書評です。

本書のテーマはiCloudとクラウドの未来。アップルが満を持してリリースする予定のiCloudとそれを取り巻くクラウドサービスの過去と、今後の展望について書かれた一冊。

まずは本の構成について触れておきましょう。構成としては短い章を多く並べるというここのところ主流となりつつあるものになっています。今時は細かい隙間時間で本を読む機会が多いと思うのでこうして小分けにされてるとありがたいですね。

そして、内容の方に目を向けると、クラウドサービスが我々に与えた影響の考察から始まって、ソニーとアップルのクラウド戦略の比較、かつてのソニーがおかした過ちとその逆を行き成功したアップルの比較からアマゾンやその他クラウドサービスの戦略にまで話が及んでいます。本書が客観的なアップルや、アップルを取り巻く環境に関する無いようであるのとは対照的に、内部から観察したアップルを綴っているのが「ジョブズ・ウェイ 」ということになるでしょう。

特に印象深いのがソニーの失敗とアップルの躍進に関するもの。かつてソニーが音楽プレーヤーで一斉を風靡し、その後アップルに市場を奪われるまでの経緯が詳細に書かれており、商売において何が大切かを考えるのに十分な材料となるでしょう。

この部分について個人的な体験と感想を書きたいと思います。かつては僕もソニーの音楽プレーヤーの使用者でした。筐体デザインがすばらしく、ポータブルデバイスでありながら音質もすばらしいものでした。しかし、ソニーはフラッシュメモリ プレーヤーに移行するときに大きな失敗を犯しました。本書でも書かれているが自社技術「ATRACK」に執着しすぎた。そのため僕はソニーを捨て、どこのものともわからない韓国製のMP3プレーヤーを購入したのです。デザインも音質もソニーには到底及ばないものでしたが、パソコンからMP3をコピーして持ち歩くということの手軽さに比べれば妥協できる範囲です。

このときが、ソニーが顧客目線から技術主体の企業になった転換期だったのだろうなと感じました。

本書では、このようにソニーとアップルの歴史を辿るだけでなくソニーやアップルと、関連する業界とのせめぎ合いなども綴られています。今後、新しいサービスや概念が登場したときに関連する業界がどのような反応を示すのかということへの興味もわいてきました。これからもこのような業界同士の小競り合いというのは続いていくのでしょう。

ところで、本書について一カ所だけ異論を唱えたい部分がありました。それを書き連ねてこのエントリーを締めたいと思います。書評を異論で締めるってのもなかなかアレですが。

僕がこれは違うなと感じたのは第三章にある「デジタルハブからiCloudへ」について。僕が思うにアップルはデジタルハブからiCloudへ移行したのではなく、iCloudという新しいデジタルハブを追加したに過ぎないと感じています。デジタルハブからiCloudへの移行ということは、人とデータを結ぶという考え方ならしっくりと行きます。しかし、アップルが提供しているものは人とデータを結ぶことではないのです。アップルが目指すものは昔も今も人と人もしくは人と体験を結ぶことです。

このことを説明するために、アップルの2つのサービスを取り上げます。ひとつめは「Genius」、ふたつめは「Cover Flow」です。

この二つのサービスはアップルの目指すもの「人と体験を結ぶ」という目的をよく表しているサービスです。どちらも、利用者の利便性や効率といった観点からはおそらく生まれてこない機能でしょう。利用者が自分のデータをどこからでも利用できるということでいえばGeniusなど無くても、自分で選んだ曲を聴けるだけで十分です。Cover Flowについていえばあのグラフィックを実現するためにマシンパワーが必要になりますし、聴きたい曲簡単に選べるということであればリストと検索で十分ということになります。

しかし、そうしたデメリットをとってでもこれらのサービスを提供しているのは「人と体験を結ぶ」という考えれば自然なことであると理解できます。

Geniusでは新しい音楽と出会う体験を、Cover Flowではたくさんのレコード コレクションから聞きたいアルバムを探し出す体験を提供しています。この辺りはジョブズが音楽好きであることにも関連しているのでしょう。

そして、ジョブズがアップルを離れた後現在の目的を維持できるかどうか。それがアップルが偉大な企業であり続けるか、平凡な企業に成り下がるかの命運をわけるのです。


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