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盛り上がるブレストばかりが良いブレストじゃない。沈黙も含めて大事にしたい。(アイデア・デザイン・創造学を研究しているといろんなTipsに触れます。600文字で紹介します。)

ブレインストーミングを邪魔する要因

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ブレインストーミングを効果的にしたい。そう願うリーダは「邪魔する要因がある」ということを知っておく。それだけでも、だいぶ利益があります。阻害要因があるとわかっていれば回避するように、準備やかじ取りができます。

ブレストの阻害要因.png

ブレインストーミングの4つの阻害要因

1.評価懸念

変なことを言ったら、馬鹿な人だと思われるんじゃないか。この評価を心配してしまう気持ちが、創造的な思い付きの表出化のブレーキになります。
 
取り払うには:
 
チームの中で、ばかばかしいことを言ってもいいんだという関係性を作ってやること。あるいは、この場は馬鹿なことをいっても何も問題はない(むしろ、多様性の担保という意味では良い面がある)という共通視座をリーダが提示すること。
 
ばかばかしいことを言える関係性づくりには、5分ぐらいのちょっとした創造的な内容のアイスブレイクをする。あるいは、皆でランチを取って雑談して、気軽に話せる関係性を作ってから、ブレストにはいる、なども。
 
共通視座づくりとしては、「二段階ブレスト」のように、「今は、How(実現方法)は気にしないで、What(こうだったらいいのに、という理想案)だけ出せばOK。Howは後半のブレストで考えますから。」といった感じに、ブレストを構造化して進行します。
 
 

2.発言量の同調

他の参加者の発言量にあわせ、場を乱さないでおこう。人の集団には、そういう同調圧力が生まれます。その抑制的心理が、たくさんの選択肢を生み出すことへのブレーキになります。
 
取り払うには:
 
最初の数人の発言は、闊達な雰囲気や、意見提示を触発してくれるような人に喋ってもらう。そうすると、同調性圧力は良い方向に効きます。最初の1~2人が、緊張感を作り出してしまうのを避けておく。
 
あるいは、「ブレイン・ライティング」のような、皆が強制的にアイデア量産するブレスト技法を使います。
 
 

3.社会的サボタージュ(あるいは、フリーライド)

参加者の中に優秀案を次々出す人がいる。そうすると他の人は、自分はしゃべらないでおこう、と怠ける。そんなつもりはなくても、精力的精神を働かせることにブレーキをかけてしまいます。結果、発言をわずかな人だけがしてしまう。
 
(これは難しいです。あなたがクリエイティブ・リーダなら、発言をする側でしょう。そして部下たちは黙る。さりとて難しいのは「じゃあ、今日は俺は黙っておこう」と態度を一変させると、皆は「あれ、いつも闊達な彼が黙ってる。誰も発言しないし、空気が重いなぁ」と。つまり発言量の同調、が効いてしまいます。)
 
取り払うには:
 
集団のサイズを小さくして萌芽させる。収穫するときに集団サイズを元のサイズにもどす。つまり、ブレストを6人といった大きな集団でする状態を一度、断ち切って、ペア・ブレストをしてもらい、そのあとペアをシャッフルし、更にペアブレストをしてもらい、最後に元の集団に戻し、場全体でブレストをします。(6分、6分、15分、ぐらい。出典「PPGブレスト」)
 
 

4.生産性ロス(あるいは、発話のブロッキング)

ブレスト中、ひとは「聞く、考え出す、言う」の3つの状態を行き来する。誰かが話すとき、メンバーは強制的に「聞く」状態になる。人数が多いほど「聞く」時間が長くなる。アイデアを考え出す行為は、一人でしているときに比べかなり少なくなる。これが、アイデア創出のブレーキになります。
 
取り払うには:
 
全員が思考する時間を時々はさむ。誰にも意見を促されることもなく沈思黙考できる。それを発言しあい、互いに、いろんな観点を得て、また再び、皆が沈思黙考。そして発言しあう。これを繰りかえすことで、集団浅慮の状態から、熟慮されたアイデアと相互刺激のいいところを使えます。(沈黙2分、ブレスト5分、沈黙8分、ブレスト11分、ぐらい。出典「Zebraブレスト」)
 
 
この記事は、以上です。
 
ブレストが効果的か否か、というのは、ブレストを引っ張るコツや技法を使ってみると、だいぶ変わってきます。
 
思考系の技法に振り回されるのはナンセンスです。
ですが、アイデア創出の仕事は、さっさと終えて、その先の仕事へ進もうとしたら、ブレストのステージをなんども失敗して森に迷い込む前に、ブレストの座組をいちど整えて、やってみると、結構違うもんだなぁと、思うでしょう。
 
私がアイデアプラントの仕事で、各地各社を訪問して歩いて、昼の雑談にそういう話をすると、こういう短いヒントからでも、ブレストのやり方を改良させて創造的企画を生み出していくチームは結構、あります。
 
 

((ご挨拶))

 

オルタナティブ・ブログの前身、誠ブログでブログを書いていました、石井力重(いしいりきえ)です。
 
アイデア創出の支援、という変わった仕事をしています。

ブレインストーミング・サポートツールを開発したり、アイデアワークショップの設計とファシリテーションをしたりしています。最近では、いくつかの大学で、アイデア基礎、創造学、デザイン論などを講義しています。創造技法の研究者として、新しいブレインストーミングのスタイルを開発して、効果を分析しています。

 
ブログでは、ブレインストーミング・テクニックや、エンジニア向けのアイデア発想法についてご紹介します。IT領域で創造的努力をされている方々の一助になれば幸甚です。

 

石井力重(いしいりきえ)
2018年5月10日

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