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祝ASCII.technologies創刊号Azure特集発売!技術系硬派雑誌を歓迎する2つの理由

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UNIXマガジンの後継雑誌でありながらWindowsと名のつく特集に違和感を覚えるかも
しれないが、先日紹介したASCII.technologies(アスキードットテクノロジーズ)の
創刊号が書店に並んでいる
。特集は「マイクロソフトのクラウドプラットフォーム
Windows Azureの衝撃とマイクロソフトの戦略」である。

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この場をお借りして改めて臼田編集長ならびにアスキー・メディアワークスの
スタッフ各位に創刊のお祝いを申し上げたい。また、丸山不二夫先生をはじめとする
著者各位、連休返上での精力的な原稿執筆に感謝と敬意を表したい。

途中、正直申し上げて本当に発売に間に合うのか?と不安に駆られることもあったが、
信頼のおける著者・編集スタッフ各位と仕事ができたことを誇りに思っている。
結果、Windows Azureやマイクロソフトの技術的方向性ををわかりやすくまとめた
よい企画に仕上がったことは非常に喜ばしい限りだ。

購入いただけると大変ありがたいが、書店で見かけた際に手にとって立ち読みだけでも
していただけると関わったメンバーの一員として嬉しい限りである。

さて、Web媒体やベンダー発行の刷り物系への執筆が多い中、今回は私にとって
久しぶりに書店売り雑誌の仕事となった。Webで多くの技術情報が発信される中、
確かに紙媒体のメディアにはつらいご時世なのかもしれない。発展的解消とはいえ、
ユニマガがなくなるという話を聞いたときは衝撃的だったが、自分の購買行動や
情報収集の習慣を考えてみれば納得できない話でもない。

月に1~2万円程度の書籍代というのは、ビジネスパーソンとして標準的かやや多い
方だとは思うが、正直なところ、ここ数年IT系の雑誌を買うことはほとんどなかった。
書籍を買うか、Webで調べるかのどちらかで事足りていた感がある。そんな私が
技術系硬派雑誌のチャレンジに共感している背景を2つの視点から述べることにする。

■雑誌のもつブランドイメージがエンジニアの意識レベルを向上させる

まず、IT以外の領域に広げて雑誌のブランド価値を考えて考えてみたい。
戦略コンサルタントになる前から、HBR(ハーバードビジネスレビュー)Think!
好んで読んでいた。加えていうならば、読んでいることを周囲にアピールしていた。
当時の私からするに、持っていると賢そうに見える、カッコイイ雑誌だったのである。
英語版ならなおのこと。リーマンショック以降、戦略コンサルや投資銀行指向の若者が
今も生息しているかどうかはわからないが、企業内に生息しているMBA候補生などは
同じような感覚をもっているのではなかろうか。さすがに私も30を超えてキャリアを
それなりに積んだ今では昔ほど肩肘張ることもなくなったが、これら
「持っているだけで賢そうな雑誌」に対するブランドイメージはそれほど変わらない。

IT系雑誌で同じようなポジションを占めている雑誌があるだろうか、と見渡すと
CIOマガジンはやや近いかもしれないが、対象が現場エンジニアというわけではない。
「高級感」という観点ではITアーキテクトが一番近いかもしれない。

取り上げる内容的にはWEB+DBあたりも好きなのだが、体裁、文面的にちょっと
ポップな感じが否めない。ASCII.technologiesが何の軸で切ったどのセグメントに
ポジションされるかは今後も注視していきたいが、賢そうなイメージ×技術硬派に
こだわり抜き、販売数や広告のために世間に迎合した入門書とならないことを願っている。
うまく読者を啓蒙することができれば、日本でも意識レベルの高いエンジニアを対象とした
市場を創り出せる素地はあるだろう。

■職人気質が支える紙媒体クオリティ

次に、業界の人材育成の観点に言及したい。偉そうな物言いで恐縮ではあるが、
今回、紙媒体の紙面を手がける人たちと仕事をしたことで、反対にWebの仕事しか
していないメディアや書き手の人たちに、ある種の儚さのような感覚を感じてしまった。
もちろん、単純に経験の差による基礎スキルの違いというのもあるのだろうが、
雑誌屋としてのある種のプロ意識を生み出しているのは、Webメディアに対比した
次の3点の違いによるところが大きいのではなかろうか。

1.組版・印刷・流通など各工程のスキルに職人芸的な側面がある
2.印刷工程にまわすと修正がきかない一発勝負が緊張感・集中力を生んでいる
3.広告だけに頼らず雑誌自体で対価をとっている

Webの場合、ブログやHTML編集ツールが普及したおかげで、書き手やメディア側の
「専門的」なスキルは少なくてすむようになった。取材に応じてもらえる人脈とある程の
文章力さえあれば、世の中にメッセージを配信できる。

一方、雑誌となると紙の種類やら、印刷機の特性やら、雑誌コードやら様々なことを
業界知識として覚えなければならず、多くは体系化されていない暗黙知として受け継がれて
いるように、少なくとも外部からは見える。職人気質を醸し出す要素の一部だろう。

また、編集が容易なWebの利便性が緊張感や集中力を削いでいる面もあるだろう。
校了後のやむを得ぬ修正となった場合、各方面から罵声を浴びせられながら
印刷所に出向いてシール貼りをする恐怖体験を通じて、スパルタ的に校正スキルが
体に染みつくのではなかろうか。身体的感覚を伴わないWebではなかなか難しい。

そして何より、コンテンツに対する対価を読者から得ているというビジネスモデルが
意識レベルで大きく影響していると思われる。広告営業による収益比率も少なく
ないだろうが、書店でいくらかのお金を払ってでも買ってもらえるレベルに仕上げ
なければ雑誌を継続できないという恐怖感か、努力が販売数や売上など数字として
ページビューやユニークユーザー数より直感的にわかりやすい達成感を醸成して
いるのではなかろうか。

結果、作品としての誌面もよいものに仕上がる可能性が高くなる。

こういったバックグラウンド、プロ意識のある人たちがWebをやると強い。

ソーシャルな感覚を重視するつながり世代には理解しがたいこともあるかもしれないが、
残念ながら世の中はもう少し上の世代の活躍で支えられている。その価値観や行動特性
を理解するためには、その背景を知っておくとスムーズだ。たまには紙の仕事もして、
継続的にスキルを向上すべきだと私自身も書き手の一人として身につまされている。

先日の投稿では、世代間のものの見方の違いを述べたつもりである。
カトキハジメ以降のガンプラOnly世代も、人間ドラマの中で地上から見上げたときの
かっこよさを重視したいというガワラ派の想いを理解し、諸先輩方々に敬意を払いながら
よいところを吸収する貪欲さが、より多くの人々に受け入れられる作品を生み出す鍵となる。

難しいから読まない、ゆるふわな記事の方が気楽でよいという若手エンジニアが幅を
きかせてしまう世の中になってしまったら、それはメディアや我々技術ベンダーの怠慢であり、
貪欲なインドやアジア圏の台頭を前に、日本のIT業界を廃れさせることになるだろう。

ASCII.technologiesには、読者に受け入れられることをゴールにするのではなく、
スキルや意識レベルの高い読者層をつくり上げてゆくことをゴールにこれからも
つっぱっり通していただきたい。

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