【MIX特集】UX戦況分析:アドビにどう立ち向かうべきか。クラウドはどう関係するのか
圧倒的シェアを持つFLASHをどう攻略するか、MIXではそのような話が多くなるだろう。
SilverlightやExpression製品群などの直接的なものだけでなく、
AzureやLive Services、IE8、Visual Studioなどの間接的な製品に至るまで、
総力戦を仕掛ける準備を整えつつある。
DTPの時代から慣れ親しんだデザイナーやWeb開発者に高い支持を受けている
アドビ社の強固な基盤に立ち向かう戦術にはどのようなオプションがあるのだろうか。
1つの例として、先日お会いしたある企業のCIOおよび社内開発部隊の責任者の方々から
いただいたヒントをご紹介しよう。
この企業では以前インターネット向けのサイトと一部のイントラサイトでFLASHを用いた
RIAサイトを作成している。見た目のわかりやすさからも、お客様および経営層から
一時的には高い支持を得ることができたようだ。
しかし、その後彼らは問題に直面する。メンテナンスの不自由さだ。
3ヶ月、半年と使い続ければ、当然細かな修正をしたくなるものだ。
お客様やユーザーからのフィードバックに基づくもの、サービス提供側の戦略変更に基づくもの、
運用・管理効率化を目的とするものなど、変更要求はどんどん積み重なってゆく。
簡単に整理すると、これらの現象は2つの制約に収斂するようだ。
1つは権利・契約面の話。
もうひとつはそもそも技術の話。
まず、権利・契約といっているのは、サイトの作成を依頼した業者との
契約関係に起因するものを指している。たとえば、FLASHでのサイト作成を依頼する際、
納品物としてはWebサーバーにデプロイされる実行形式である.swfファイル、および
外だしされたコンテンツ、バイナリ、設定ファイルのみとなる。私の少ない経験でも
同じような状況に陥ったことがある。
ただ、これは作り手の視点に立てば当然のことで、細かな修正を作業効率の高い
継続的ビジネスとして受注したいと考えるだろう。ソースを渡してしまえばそれまでである。
SIでいうところのアプリケーション保守にあたるような概念だろうが、都度発注となること、
さらに左脳的なソフトウェア開発に比べ文書化が十分進んでいない右脳的なデザイナーの世界では、
その担当者がそのプロジェクトをずっと担当し続けてくれるかどうかは疑問だ。
まあ、これは権利・契約の話なので、値頃感は期待薄だが所詮はカネで解決できる。
.flaファイルを納品してくれ、という条件にすると金額が跳ね上がることは覚悟すべきだろう。
次に、そもそもの技術の話。
上記契約問題を解決してソースである.flaファイルを入手できたとして、
自社内の開発者が手を出せるかという問題だ。アニメーションツール的な発祥を持つFLASHは、
一般的な開発言語とは概念がかなり異なるため、Java開発者がPythonを習うのとは訳が違う。
世界観やオブジェクトモデルに慣れるためには結構な時間が必要だ。
これは、アドビ社も理解しているようで自基盤のFLEXやFlash Catalyst手を打ち始めている。
既存技術を進化させたMXMLとActionScript3で開発者フレンドリーになろうとしていると思われる。
コンセプトとしては、MXMLできれいに分離された環境で、デザイナーはFlash Catalystを使い
美しいアニメーションやフォーム画面を仕上げ、開発者はFLEXおよびActionScriptでサーバー側の
リソースも適宜呼び出しながらプログラムを書いてほしいということなのだろう。
対するマイクロソフトの状況はどうかというと、すでにこの関係ができあがっている。
というより、そもそもソフトウェア開発環境であるVisual Studioしか持たなかった我々の
ラインナップに後からExpression製品群が統合されてきたのだからそうならざるを得なかった
という状況は外部からも推察できるのではないだろうか。
結果、我々は主にWindowsアプリケーションの高度なUI記述言語として発展させてきた
XAML(「ざむる」と読む)を介したVisual StudioとExpressionの分離に成功している。
開発者は使い慣れたC#でロジックを書き、デザイナーはExpressionでUIを作成する。
そして、その気になればお互いXAMLのソースをみてちょっとした変更や言及を行える。
ちょっとしたUI変更をアプリケーション開発者がVisualStudioから行うことももちろんできる。
Visual StudioとExpressionを行き来しながら開発するスタイルは、すでに受け入れられつつある。
自分で把握してきめ細かなメンテナンスを行いたい場合、このポイントはかなり重要度が高い。
そして、今回のMIXでおそらくこのホットな領域に関しても何らかのアップデートがあるだろう。
MIX特集とはいえ、何故クラウド関連を主たるテーマとするこのブログでRIAにそこまでこだわるか。
我々の目的はRIAアプリケーションの統合開発環境を提供することであり、RIAサイトやアニメーション
作成ツールだけを単体で提供することではない。昔からそうだった。
このような環境がそろいつつある中、そろそろVB6の世界から脱却すべきではなかろうか。
「クラウドっぽい」エクスペリエンスへのニーズの高まりがその後押しをすることになると考えている。
例えば、これらは「クラウドを感じさせない」といった方がよいかもしれないが、
非同期処理でパフォーマンスが保証されないクラウドとのサービス通信が背景にあっても
ネットワークやその他レイテンシーを感じさせない、心地よく待てるインタフェースや、
エラーが起こっても動じない、ユーザーに不安を感じさせない懐の深いインタフェースが
「クラウドっぽい」RIAなのだろう。
ハードウェアの進化で、PCだけでなくあらゆるクライアント、デバイスはすでに高い処理能力を
獲得している。昔のダム端との違いを見せつけられて「やられた」と思うような
サービス、アプリケーションが出てくることを期待しつつ。
そろそろ私の便が出撃の時間である。次回の投稿は開催直前のMIX会場より。
ちなみに、【MIX特集】とつけている投稿ではテーマ性の設定を、ガンダム>MIXで。
今週いっぱいは続く予定。ちまたで話題のガンダム30周年特集も当然やるのでこうご期待。