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情報格差などがもたらす情報社会の問題について考える

聴覚障害者に対する接客の記事について思うこと

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最近の記事について色々考える機会がありましたので紹介します。

聴覚障害者を「門前払い」した事件に関する記事について

JR尼崎市駅近くにある居酒屋にFAXにて予約を入れようとしたところ、聴覚障害があるという理由で断られた出来事がありました。

こういった「門前払い」は悲しいことに時々起こっています。

聴覚障害者が居酒屋の予約を断られた ろうあ団体抗議に「店が悪いとは思えない」の声が

JR尼崎市駅近くにある居酒屋に予約を入れようとしたところ、聴覚障害がある、という理由で断られ、ろうあ協会が抗議した、というニュースが報じられた。

注文する際の筆談も「対応不可」という居酒屋の対応に、ろうあ協会関係者は「筆談すらできないとなれば何処にも行けない!」と抗議したところ、店側が謝罪することになった。しかし、ネットでは「店が悪いとは思えない」などと、ろうあ協会などを批判する意見が出る事態になっている。

この記事では、「抗議」というキーワードが出ていて、ろうあ団体があたかも強硬的な態度に出たような感じが否めない。ろうあ団体がどのような抗議をされたのかといった所の記述が不十分で、ネガティブな記事に仕上がっているように感じました。

推測の域を出ないのだが、ろうあ団体は、おそらく、以下の2つの可能性を踏まえた上で、理解を求める行動に出たのではないかと思います。

  1. お客と店の間のコミュニケーション手段が、FAXという一方向の通信手段しかないために、どのようにしたら良いかといった相談がし辛いため、このような結果としてぞんざいな対応になった可能性がある。
  2. 筆談対応がどのぐらい負担になるのかといった面で、お客と店の間で多少認識の違いがあった可能性がある。

ネット上では、「店側にも客を選ぶ権利がある」「店の都合を考えずに権利だけ主張するのか」などといった意見が出ていますが、おそらくこういった記事には出ていない隠れた部分(ろうあ団体側の配慮)を関知していないからと思われます。もう少し、色々な立場のコメントを踏まえた上で、記事を書かないと、結果として、断片的な情報だけになってしまい、事実が誤って伝わる恐れがあるのではないかと思いました。

なお、筆談対応の負担については、弁護士の方が分かりやすいコメントを書いていましたので興味がある方は一読ください。

「筆談対応できない」聴覚障害者の居酒屋「入店拒否」で議論に...法的な考え方は?

◆聴覚障害者に「懇切接客」した様子を取り上げた記事について

その一方で、聴覚障害者にどう接客したらよいかを尋ね、メニューの説明にかわいいイラストを用意した山形市の居酒屋が、ネットで共感を呼ぶ出来事がありました。

聴覚障害者に懇切接客 山形の居酒屋にネット共感

聴覚障害者にどう接客したらよいかを尋ね、メニューの説明にかわいいイラストを用意した山形市居酒屋が、ネットで共感を呼んでいる。

大変良い事例ではあるのですが、過剰とも言える好反応には多少の違和感を感じました。聴覚障害者であってもなくても丁寧に接客することは、サービス業としては普通のことではないかと思います。

聴覚障害を持っていても楽しんで頂けるよう配慮することは大事なことですし、イラストなどで伝わりやすくする創意工夫には非常に良い試みだと思いました。

しかし、そこにフォーカスしてニュースとして取り上げるあたりが、某局の24時間テレビのような障害者を取り上げて感動の押し売りをするみたいで、何だか嫌な感じを受けました。

折角取り上げるのなら、障害の有無に関係なく優れた接客の例を取り上げるなど、公平性を意識した記事にして欲しいと思いました。

◆「門前払い」「懇切接客」といった対極な接客対応に対する記事について

これらの記事をきっかけに聴覚障害者への理解が進むのは大変良いことだとは思いますが、さまざまな立場を熟慮した上での中立的な記事であると、もう少し本質的な面が見えてくるのではないかと思います。

その一方で、読み手の方も、メディアに出ている情報を分析し、足りない情報を収集して、真実を知る力としてのメディアリテラシーを向上させるのも重要な課題ではあると思います。

皆さんは、一連の聴覚障害者関連の記事に対して、どのような考えをお持ちでしょうか?

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