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HPは何故Palmを買収し、スマートフォン市場は今後どうなるのだろうか

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HP、Palmを12億ドルで買収

身売りの噂が絶えなかったPalmだが、HP(Hewlett-Packard)に落ち着いたとの一報。
HPは、今は少々他社の後塵を拝しているが、歴史的には電卓に始まり、熱狂的なユーザーコミュニティを抱える200LXシリーズ、ハンドヘルドPCのJornada、買収したCOMPAQから引き継いだPocket PCのiPAQなど、AT&T向けのiPAQ Smartphoneシリーズなど、コンスタントにPDA/スマートフォンを開発し業界を先導してきたメーカーである。

そして今回のPalm買収。

これまでWindows Mobileを利用していて、iPAQの開発チームなどを抱え、またネットブックで採用していて経験のあるIntel AtomのZシリーズ活用の可能性(現にiPad対抗カテゴリのHP SlateではAtom採用)など、社内にスマートフォン市場に対する新たな打ち手のための資産やコンテクストがあるにも関わらず、何故Palmを買収しようと考えたのだろうか。

その理由として、下記のような点がHPがこのままではスマートフォン市場に深く攻め入ったとしても勝ち目があるとは感じず、Palmに活路を求めた理由ではないかと考える。

1.Windows Mobileの変化
Windows Phone 7はそれまでのWindows Mobile 6.5とは連続性を持たない新たなプラットフォームになっている。そのため、既存のiPAQ向け独自ソフトウェアなどの資産や開発ノウハウを生かせない状況である。

2.スマートフォン提供メーカーの乱立
RIM(BlackBerry)・Apple(iPhone)・Toshiba・Sharp・Nokia・Samsung・Motorola・Sony Ericsson・ High Tech Corp(HTC) など既に高いシェアを誇るスマートフォンメーカーが存在する上に、Android登場以来参入容易性はさらに高くなった。特にハードウェアボタンが少ないタッチパネル機+Androidの組み合わせなどは大雑把には簡単に作れてしまうため、HTC SENSEやXperia nexusなど独自UIを用いて何とか差別化を図らざるを得ないような厳しい市場になってしまった。

このような環境でどう生き残っていくのか、スマートフォン専業ではなくWindows Mobileの資産も無くなりそうなHPからしたら、このままの状態で単独では難しいのではないかと考えたとしてもおかしくない。

3.独自OSの魅力とアプリケーション環境の変化
Palmの特徴・売りは何かと言われたら、間違えなくWebOSの提供する高速で美しいUIと環境だろう。また同時に快適なマルチタスク環境も実現していた。なぜこんな事が出来たかというと、初期Palm(WordpadやTungsten等、後のGarnet OS)の頃からPalmはOSから環境を独自に開発しているからだ。

Androidの普及でそれなりに美しいUIを持ったOSが開発不要で提供されているが、逆に独自性が打ち出すのが難しい、レッドオーシャンのような市場になる中、独自OSという究極の独自性は決定的な差別化要因となる。

一方、それがアプリケーション開発者・提供企業からすると開発環境と市場の細分化と開発の障害となり、魅力のあるソフトウェアがプラットフォーム上に揃わないのではないかという懸念もある。

しかしながらPalmの搭載するWebOSは、Linux+WebKitで開発され、OS標準のUIからアプリケ-ションまでHTML+JavaScript+CSSで作られる、Google Android以上にWeb orientedな環境である。さらにHTML5への対応も積極的で先進的ある。
HTML5はGoogleも推進し、Adobe Flashに対抗する意図からAppleも採用する規格であり、こうなってくるとHTML5に対応していればアプリケーション開発についてはOSの差を問わないのでないかとなってくる。
(実際はデバイスの違いや、加速度・GPSなどセンサデータの呼び出し方法の違いなどもあり、各OSにおける開発環境の生産性なども問題になるだろうが)

また、HPにとってはユーザーコミュニティを巻き込んで成功した200LXが独自OSだったという歴史もあり、コミュニティ・アライアンス戦略の取りやすさという点でも、コントロールのしやすさは魅力的だろう。

以上3点の理由を考えて、HPがスマートフォンを先導する立場にないことから取らざるを得なかった戦略であることは間違えなく、やはりiPhoneやAndroidの第一人者的なHTC、独自のファン層を持つBlackBerryが有利なのは変わらないだろう。またWindows Mobile 7の評判も高く目が離せない。
(後、現時点の報道ではHPがWebOSを引き継ぐかも不明。さすがに引き継がないと意味ないと思うけど。)
(その他気になるのが、Microsoft SilverlightやAdobe Flash/AIRなどのアプリケーション実行環境がどう絡んでくるか。)

どのプレーヤーが生き残るのか、プレーヤーが増える/競争下でなかなか撤退しない様は、まさに拡大するスマートフォン市場を象徴しているなと思う。

SIMロック解除の議論がある中だが、特にSony Ericsson以外の日本企業はこれからどうしていくのだろうか?
富士通の「らくらくホン」などは、高度化・高機能化するスマートフォンでは絶対にフォローできない層に対する商品としてかなり芽があると思うのだが。

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