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Appleがあるのに他の○○は必要なのだろうか?という問いへの僕なりの答え

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 最近のApple製品は本当によく出来ている。

 このところよく売れているから書いているのではなく、過去を振り返っても、今ほどAppleの製品が充実していた事は無かったと思う。もちろん、もっとデザインと筐体、キーボードにコストをかけることができた時代もあったかもしれない。
 ごく最近の例を取っても、MacBook Airは先代モデルに比べ明らかに質感が下がってしまった。キーボードも液晶も、筐体の作りも、どこか安普請になってしまった。しかし、それでも今の製品は最高の状態にある。

 たとえばMacBook Airは、最新のプロセッサアーキテクチャから数えると、2世代も古いプロセッサを搭載している。ところがSSDを用い、インターフェイスやSSDコントローラを高速化し、さらにOSの振る舞いを工夫することで、実に快適に使える環境を提供してくれる。多くの人がMacBook Airを使うと、プロセッサが古い事など忘れてしまう。

 もちろん、少々の工夫でパソコンが急に高速化するわけではない。しかし、速く感じさせる工夫はできる。製品が最高の状態にあるというのは、ユーザーインターフェイスや本体そのものの品質感、それに感性に訴えかけるユーザー体験の質の高さだ。
 このことを、他の多くのパソコンプラットフォームを支えるMicrosoftはどう考えているのだろう。

 International CESで漏れ伝わってきた話によると、MicrosoftはPCメーカー幹部とのミーティングを多数こなしながら、Appleが現行MacBook Airで実現していて、パソコンメーカーがどこも実現できていない(メーカーだけでは実現が不可能な)事柄について話し合ったという。
 すなわち、インスタントオンと言えるような素早い復帰と、バッテリの減りを気にせずに済むようなスタンバイを両立させる方法や、各部の振る舞いをもっとシンプルにして、ユーザーに余分な問いを投げかけずに済むような工夫についてだ。インスタントオンについては、以前に比べればかなりマシになったとはいえ、現行MacBook Airにはまるで歯が立たない。

 MacBook Airの技術は、当然ながら別の製品にも順次広げていくと考えられるため、今のまま放置すれば、コンシューマ市場のAppleの躍進はさらに進むだろう。全体のシェアだけを見ていても解らないが、Appleは1000ドルを超えるプレミアムパソコン市場(コンシューマのみ)で8割程度のシェアを握っていると、数ヶ月前にとあるPCメーカーの担当者が話していた。

 ハードウェアメーカーがどんなに頑張ったところで、Windowsと共に直さなければならない部分は、どうもならない。MicrosoftはWindows 8で問題を解決すると話しているが、ハッキリ言ってそれでは役に立たない。メーカーは今すぐにWindows 7を改良し、あるいはメーカー自身が努力するための道筋を与え、そこでの成果をWindows 8にフィードバックするぐらいでなければならない。

 Microsoftが解決策を提供できなければ、病気療養中のスティーブジョブズは自信満々にこう言うかもしれない。
「Macがあるのに、他メーカーのPCが本当に必要なのだろうか?」

 同じ事はスマートフォンやタブレットにも言う事ができる。昨今、Android端末が多数登場し、iOSは今後、シェアを下げ続けるだろうとの予測があるが、その話を聞いたならば、次のようなスティーブジョブズは言うと思う。
「iOSを搭載した最高のデバイスがあるのに、他の端末が本当に必要なのだろうか?」

 実際のところ、公平に判断を下すならば、今のところiOSとAndroidでは前者の方が完成度は高い。さらにアプリケーションやコンテンツ流通のエコシステムなども含め、ユーザーを取り巻く環境全体を評価すると、その差はさらに拡がると思う。Androidには自由はあるが、故に混沌とした世界から抜け出せていない。単純にスマートフォン用のソフトウェアプラットフォームとして考えれば、iOSのアドバンテージはまだまだ大きいと感じる。

 しかし、それでも僕はライバルは必要だと思う。今やスマートフォン、タブレット、PCは社会インフラの中に溶け込んでいる。Appleはグローバルにひとつのソリューションで物事を解決しようとしているが、今後、さらに普及していく事を考えると、もっと柔軟性がなければ消費者に不利益があると思う。フェリカひとつの対応をとってもそうだ。

 さらにここに来て問題になりつつあるのは、Appleが自社の構築する整然としたエコシステムに、異分子が入り込まないよう、厳しく取り締まっていることだ。このところ、その動きはさらに厳しくなってきている。Appleは独自のDRM(といっていいか怪しいぐらいに機能的には貧弱だが)を他社にライセンスせず独占しているため、他社との競争から過度に守られているのではないだろうか。
 無論、それはApple自身が勝ち得た地位なのだが、競争環境が阻害される状況が長く続きすぎると、発展・進歩の速度は衰えるものではないだろうか。今のApple製品を越える人心を捕まえる製品が生まれなければ、Apple自身も軽快なステップを踊れなくなるに違いない。

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