ソフトウェア技術者のための英語
【ソフトウェア技術者のための英語】
こんなタイトルのエッセイ連載をはじめてみようかと思う。きっかけは、ぼくが昨年、Agile2008において Gordon Pask Award という賞を頂いたことだ。これはとても嬉しい1つの出来事だったが、今振り返ってみると、これまでに人生の中で人に何か認められたとか、貢献した、と思えること、そして現在の仕事やビジネス活動にいたるまで、ほとんどの仕事が自分の英語能力と関連していることに気付いた。「英語重要」だとあらためて気付いたのだ。現在の何か「知の創造活動」に参加しようと思ったら、英語で表現できる能力が必須となる。
例えば、現在ぼくが関わるAgileというムーブメントにおいて、多くの人がその知識体系(Body of Knowledge)を数年かけて試行錯誤で作ろうとしている。その議論は、ブログで、メーリングリストで、カンファンレンスで、twitter で、facebookで起こっているが、そこに参加し、自分の痕跡を残していくためには英語で表現できることが必須だといえる。いかにいい内容を日本語で書いても、それが読まれなければ、知の創発に参加できない。これは、ソフトウェア知識の中で英語の占める割合の多さ、そして英語⇒日本語、日本語⇒英語というその知識流量の圧倒的な非対称性と、インターネットによるコミュニケーションの即時性が掛けあわさった結果だ。twitterで書いた一行が、名だたるコンサルタントたちの間を一日に数往復して一つの新しい知識を形成するような、「集合知ダイナミクス」に参加するための言語は、今、英語に限るのだ。
ということで、ぼくの英語勉強法をいくつか指南したい。特に、英語で表現するためには、という方向で行きたい。また、いくつか現代的な(twitterなどを使った)英語勉強 Tips なども含めようと思う。
実はこのエッセーにはもう一つ理由がある。43歳になったこともあって、もうそろそろ僕自身の経験から何か20代、30代の若いエンジニアに対して役に立つ、教訓めいたことを言ってもよいだろうと思ったこと。「なにえらそうなこと言っているんだ」と言われそうな態度をとるのはとても苦手なのだが、たとえそう言わても、日本のぼくよりも若くて可能性のある人たちに、なにか経験から伝えたいと思った。だから、ちょっと上から目線の書き方になる部分や自慢めいて聞こえる部分がある点はご容赦いただきたい、と免罪符を切ってはじめよう。
このエッセーに興味のある出版社の方、新書にしていただける可能性があったら、ご連絡ください(笑)。
【日本人が英語で表現するために乗り越えなければならない5つの壁】
さて、まず、「日本人が英語で表現する」ということを考えたとき、超えなければならない4つの壁がある。それは、
- 英語をたくさん読み聞きすること
- 英語で考えること
- 英語のボキャブラリ(語彙)を持つこと
- 文法を腑に落とすこと
だ。そして、表現する中でも、「話す」という場面ではさらに、
- 英語として聞こえる発音をすること
という難関がもう1つ加わる。この順に、壁、と、その克服法を説明したい。
図は、会話・文章という軸と、伝える・理解するという軸で、「読む」「書く」「聞く」「話す」を位置づけてみた。日本人は、圧倒的に「読む」側が得意で、そこから離れると苦手になる。特に、「話す」のが苦手な人が多い。この連載では、どちらかというと「表現すること」(右下)に向かって話しを進めたい。そして、そのためには「読む」「聞く」といった左側の活動の蓄積が重要だ、ということもおいおい書いていく。
。。。。(つづく)