オルタナティブ・ブログ > 芝本秀徳の『プロジェクトマネジメントの守破離』 >

プロセス、戦略、人間学の視点からプロジェクトを眺めます。

プロジェクトとは「プロセスの連鎖」

»

はじめまして、芝本秀徳です。

これから『プロジェクトマネジメントの守破離』と題して、どうすればプロジェクトを上手くいかせることができるのかについて、プロセス、戦略、そして人間学の視点で眺めていきたいと思います。

まず始めに、「プロセスとは何か」ということについてお話しします。

私の専門分野の一つに「プロセスデザイン」があります。ビジネスにおけるあらゆる成果は、必ず「プロセス」をともないます。このプロセスがうまくデザイン(設計)されているかどうかで、成果に大きな違いが出てきます。しかし、この「プロセス」という言葉は、あまりに一般的で、使い古されているため、かえってわかりにくいのが現状です。

先日も、ある経営者と話をしていたときに、「うちは営業がダメだとか、部下が思ったように動かないとか、いろいろ悩みはあるけれど、『うちはプロセスで困っている』っていう経営者はいないよね」という話がありました。

これはその通りで、まさにそこに問題があります。企画、営業、開発などといった<括り>は機能的なもので、誰にとってもわかりやすいものです。しかし、「プロセス」とは、機能を横断した、「顧客に価値を届ける流れや仕組み」なので、いざ問題を解決しようとすると、忘れられてしまいがちなのです。

プロジェクトマネジメントを考えるときも同じです。「要件開発」「設計」「実装」もしくは「リスク管理」など、特定のフェイズに問題を見つけることはかんたんです。しかし、それらの個々の問題が、どのようは構造で発生しているのかを知るには、「プロセス」の視点が欠かせません。プロジェクトとは、プロセスのつながりによってできているからです。

私は「プロセスとは何か」を説明するときによく、「プロセスはレシピに似ている」という話をします。

料理をつくるときに、新鮮で高級な材料や調味料をそろえて、さらにそれらの材料を切ったり、焼いたりする技術もそれなりに持っているとしましょう。これらの材料と、調理技術だけあれば、おいしい料理をつくることができるでしょうか。できませんね。おいしい料理をつくるためには、「レシピ」が必要です。

優れたレシピには、素材のおいしさを最大限に引き出すための手順、コツが書かれています。火は弱火なのか、強火なのか。どのタイミングで調味料を加えるのか。いつ火を止めるのかなど、そこにはおいしい料理をつくるための秘訣が書かれています。

プロの料理人は、かんたんにはレシピを人に教えません。レシピこそが、料理人の財産であり、差別化の源泉だからです。

経営やプロジェクトにおいて、このレシピに当たるものが「プロセス」です。

しかし、私たちの普段の仕事を考えると、技術や知識を集めることにばかり注力していて、それを運用するレシピ、つまりプロセスをつくることは、おざなりにされがちです。これは、料理人がレシピを研究せずに、みじん切りや賽の目切りの練習をしていることと同じことなのです。これでは、おいしい料理(成果)を生み出すことはできません。

すべてのビジネスは、あらゆる経営資源を価値に変えるプロセスの連鎖です。価値を生み出すためには、「価値を生むプロセス」を設計すればいいのです。

このブログでは、どうすればプロセスをデザインできるのか。プロセスの基盤となる戦略、そしてプロセスを実行する主体である人間について、みなさんといっしょに考えていきたいと思います。

Comment(0)