2013年大胆予測:音楽ビジネスは大転換期。新サービス参入のチャンス到来!
新年、明けましておめでとうございます。
2013年は、世界的にも様々な変革の年となる予感がありますね。
今年は日本の音楽ビジネスにとっても大きな転換点になることでしょう。
現象面でみると、ストリーミングサービスが本格的に広まるかどうかということになりますが、底流にある変化をとらえることが大切です。
「所有から利用へ」というのは、インターネットにおける近年の大きなトレンドです。スマートフォンの普及と、WIFI網の充実や通信会社のデータ通信の月額制度によって、インターネットの常時接続が容易になりました。この恩恵を一番最初に大きく受けるのは、音楽ビジネスかもしれません。
海外ではストリーミングサービスが広まってきています。世界最大のSNS、フェイスブックと連携したSpotifyは、有料会員が500万人を超えました。欧州を中心に展開しているDEEZERも300万人以上の有料会員がいます。日本でも今年は月額課金型のストリーミングサービスが、本格的に普及しそうです。
日本の音楽市場の現状をおさらいしましょう
●パッケージ市場の驚異的な粘り
2012年のCD売上の正式データはまだでていませんが、2011年を上回って微増になるようです。ベテランアーティストのベスト盤など大型商品に支えられたので、このまま上昇気流というのは難しいでしょうが、現状の規模は、もう暫く、維持されそうです。2008年に米国を抜いて世界一のCD市場になって以来、世界のCD市場における日本のシェアは上がり続けています。
そもそもCD専門のナショナルチェーン店は、多くの国で姿を消しています。米国ではウォールマート(スーパーマーケット)とAmazon(ネット通販)が主役です。日本には、タワーレコード、ローソンHMV、TSUTAYA、新星堂(昨年北関東を基盤とするワンダーコーポレーションと資本提携)と4つもあります。世界的には非常に特殊な状況ですが、O2Oが重視される現在、ユーザーが音楽と接するリアルな場が残されているのは、貴重でもあります。
●iTunes Storeがデフォクトにならなかった音楽配信市場
日本の音楽配信市場は、2008年に2000億円まで伸びましたが、その時のシェアの9割はモバイル配信、いわゆる「着うた」で、iTunes Storeのシェアは7%前後と推測されていました。その後、スマートフォンの普及で、ガラケー向けサービスだった「着うた」市場は激減しています。前年比で約2割減で落ちています。iTunes Storeは、前年比1~2割増で売上を伸ばしているようですが、音楽配信プラットフォームのデフォクトとはならずに終わりそうです。米国では7割のシェアを持つと言われて、多くの国でNo.1の音楽配信サイトのデフォルトになっていることを考えると、これも日本の特殊性と言えるでしょう。iPodやiPhoneは売れて、PCの再生プレイヤーとしてiTunesは使っても、iTunes Storeは使われなかったという事ですね。日本独自のモバイル向け音楽配信「着うた」市場の崩壊が確定的な今、新たな音楽配信市場の開拓が急務になっています。
◆コラムスピン:iTunes Store は日本で失敗しているんだよ
●レコード会社がネットに音楽を開放し始めている
ストリーミングサービスが広まるには、必須条件の一つである、レコード会社の許諾についても、風向きが変わってきています。遅ればせながら、従来のビジネスモデルを守るだけではやっていけないという危機感が共通認識になってきました。DRM(コピー防止制御)を外したり、ソニー系レーベルがiTunesStoreで楽曲を販売するようになったのもその現れです。
レコード会社がストリーミングサービスに、前向きに取り組む理由が二つあります。
1)ストリーミングサービスの市場底上げ効果が海外で証明された
前述のSpotifyやDEEZERのサービスが、楽曲のダウンロードやパッケージの販売とカニバルのではなく、むしろ相乗効果で売り上げが上がっているという統計が出てきています。
日本のレコード業界も、世界一位のユニバーサルミュージックやワーナー、ソニーなどグローバル会社が中心的な存在ですから、海外のデータ、情報は十分に届きます。合法的な音楽サービスに積極的に許諾を出すことが、違法サイトの撲滅にもつながるだけでなく、パッケージ等への売上にも好影響を与えるという「新常識」が定着しつつあるのです。
2)違法ダウンロード刑罰化に伴う社会的な責任
昨年10月より施行されている改正著作権法で、違法ダウンロードに対する刑罰化が認められました。レコード業界は、この改正を推進した側として、インターネット上で合法的に音楽が聴ける環境を提供する社会的な責任を負いました。「できれば出したくない」という態度から、「一定の基準を持って開放していこう」と変わる契機になりました。
批判も多い法律改正でしたが、レコード会社の姿勢の変化は、功罪のプラスの側面だと思います。
●音楽関連の新サービス参入の好機がやってきた
常時接続環境ができ、スマートフォンが普及した現在、音楽ストリーミングサービスが普及する環境ができたのはご理解いただけるかと思います。特に日本は、ダウンロード型の音楽配信の普及が進んでいません。
アーティストとの関係性の証で、コレクション価値があるパッケージとストリーミングは好相性でもあり、業界関係者が安心して推進できる状況です。
ただ、本当に普及するには、こういった環境要因だけでは不十分です。ユーザーに利便性を実感させたり、わくわくさせたり、ライフスタイルへの提案をする必要があります。これは音楽業界外のITサービス事業者に期待しています。
これまで音楽関係のベンチャー企業は、スタートアップも含めて、音源(原盤)を使用するサービスの事業立案がほとんどありませんでした。おそらく、事業計画の途中で「日本は著作権が面倒だからやめた方がよいよ」「レコード会社が許諾出さないよ」などの助言があったのではないでしょうか?YouTubeをベースにしたり、許諾をクリアーするために苦労しているサービスも見受けられます。
昨年までは、確かにそうだったかもしれません。風向きは変わりました。今がチャンスです。Spotifyの日本サービスも今秋には始まるでしょう。日本人のライフスタイルを変える斬新な発想の音楽サービスが出てくることを期待します。もちろんグローバルサービスとしても可能性があります。J-POPは海外からも注目され、これまで正規に聞ける環境がありませんでしたから、クラウド化されたストリーミングサービスで初めて、本格的な「海外輸出」に取り組める状況になりました。
やりましょう!
音楽がデータファイルになった時からの軋轢の歴史をクラウド化が終わらせます。2013年を境に、デジタル技術と音楽が蜜月関係を結び、新たな産業を生み出していく、そんな未来に向かっていきましょう。私も微力ながら頑張ります。
個人ブログには、もう少しぶっちゃけモードで書いてます。こちらもご覧ください。ご質問、反論なども歓迎です。
◆独断的音楽ビジネス予測2013<続編> 〜ストリーミングとソーシャルメディアが主戦場になった時にアーティストとマネージャーとITベンチャーがやるべきこと〜
最後に、告知を3件。
◆1/16(水) sensor ~ it&music community 〜 vol.6『2013年、丸さんと語る音楽のあした!』
⇒ハッピードラゴンがお届けするトークイベントsensor新春のスペシャルゲストは元SME社長の丸山茂雄さんです。お見逃し無く。
◆「音楽人」養成メルマガ~ソーシャル時代に音楽を売る7つの戦略とは?~
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※MUSICMAN-NETにインタビューが掲載されました。こちらもご覧下さい。「第2回:コンペに勝つ方法」
山口哲一(音楽プロデューサー・株式会社バグコーポレション代表取締役)