交通費&経費精算システムの導入により、出張コストを25%削減したUSTグローバル
交通費および経費精算(以下、ひっくるめて「経費精算」)くらい、企業で働くあらゆる人たちにあまねく嫌われているモノも珍しいのではないか。
一般社員にとっては、経費精算といえば、「月1回やらなければならない面倒なもの」以外の何物でもない。
- 基本的に自費で立て替えているカネなので、全額取り返すのが当然ではあるが、取り返したところでプラスがあるわけではない。毎月1時間近く費やして経費精算はするが、要するにマイナスがゼロに戻るだけ。したがって、そもそも根源的にモチベーションが上がらない。
- しばしば経理部門から「○駅から○駅までの金額が違う」「領収書が添付されていない」「宿泊料規定をオーバーしている」といったチェックが入り、さらに手間がかかり、払い戻しが遅れ、最終的に自腹になったりすることも。
- 今や、たとえば首都圏ではPASMOやSUICAを使って、ほぼ金額を意識せずに乗り降りできている。航空券だって今ではeチケットがあたりまえだ。つまりほとんどの処理はすでにIT化されているのだ。ところが経費精算だけは、いまだにExcelに手打ちして、領収書を台紙にノリで貼って...と、紙ベースなこと、まるで昭和だ。IT化できないのか!?
一方、経費精算を処理する経理部門からしても、モチベーションは同じくらい、上がらない。
- チェックを入れるのが仕事だから、やってはいるが、社員には喜ばれないこと甚だしい。こちらだって意地悪したくてやっているんじゃないのに。規定があるんだから、守ってよ!
- しかも誰もが、締切のある月末から月初に集中して提出してくる。おかげで月初の数日は毎月深夜残業だ。もっと人を増やしてほしいけど、経理部門スタッフの人数は派遣社員も含めて、要するにこのピークに合わせているので、ピーク以外はむしろ余ってしまう。とてもこれ以上増やしてくれなんて言えない。
- 「〇駅から〇駅までは160円じゃなくて150円です」、なんていちいち調べてチェックを入れるなんて... まるで昭和だ。IT化できないのか!?
こうして全社員が嘆いているにも関わらず、経営者の動きは鈍い。
- だって、経費精算システムを入れたところで、売上は1円も増えないんだぞ?
- そりゃ、社員の時間を時給換算したらそれなりの金額になることは分かっているが、、、(ここからは口には出せない心の声で、)社員の給与は事実上固定費つまりサンクコスト。経費精算システムを入れて社員の時間が節約できたところで、それがキャッシュを生むわけじゃないだろう?そんなものに投資できるか!
かくして、平成26年の今も、昭和と変わらぬ紙ベース処理は連綿と続く・・・
・・・はずがない。SAPでは数年前から、SAP Cloud for Travel & Expense(以下 C4T、旧名称 SAP Travel on Demand)というサービスを開始し、すでに導入企業はグローバルで数百社に上っているが、この日本語版がついにリリースされた。
いよいよ、社員と経理部門の嘆きが解消されるときが来たのである。しかもここに、第四のステークホルダーとして、CFO(最高財務責任者)が登場する。なぜか?このC4Tを導入することで、「実はキャッシュを生む」ことが明らかになってきたのである。
先行事例として、2012年にC4TEを導入し大きな効果を上げている、UST Global社をご紹介しよう。以下、同社のシニア・プラクティス・ディレクター、コービー・ブレンドル氏による3つの講演の内容から構成した。
■SAP Travel OnDemand: Webcast
http://www.sap.com/pc/tech/cloud/software/cloud-for-travel/customer-reviews.html
■How SAP Cloud for Travel & Expense Transformed UST Global’s Travel & Expense Experience (Ariba Live 2014)
http://www.slideshare.net/Ariba/how-sap-cloudfortravelandexpensetransformedustglobalstravelexpenseexperience1
■Drive Value with Cloud Solutions for Professional Services Firms (Sapphire 2013)
http://events.sap.com/sapphirenow/en/session/4661
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USTグローバルは1999年創立のITコンサルティング会社です。売上は60億ドル(約6000億円)。1万人を超える社員が、50ヵ国以上で活動しています。
当社は、年間およそ1300万ドル(約13億円)の出張経費を使っていました。コンサルティングという業種柄、一般的な企業よりは多めなのはやむをえませんが、問題はその実態が見えていないことでした。
当社の場合、出張経費は、顧客プロジェクトに伴う、つまり当該顧客に請求できるコストと、営業活動など社内コストに大別されますが、「そのどちらだか分からない」という不明な経費すら50万ドル(約5000万円)ほどあったのです。
しかしなにを調べるにも、伝票を1枚1枚ひっくり返すような話になり、とてもではありませんが簡単に分析できるような状況ではありませんでした。
どの企業でもほぼ同じだと思いますが、出張から精算までは以下ようなステップを踏みます。
(1)出張者が概算コストを見積り、マネージャーに出張申請する
(2)マネージャーは内容とコストを見比べ、OKであれば承認する
(3)承認が出ると、出張者は実際に飛行機・ホテル・レンタカーなどの手配をする
(4)出張先でタクシーやレストランなどを利用した場合には、レシートを受け取り持ち帰る
(5)出張から戻ったら、すべてのレシートを貼付して、経費精算を申請する
(6)マネージャーが承認すると、経理部門に送られる
(7)経理部門は内容をチェック、もし出張規定などルールに合っていないものがあれば指摘や差し戻しを行う
(8)経理部門が最終的にOKすれば、支払処理が行われ、出張者に払い戻される
(9)経理部門は定期的に内容を監査し、規定違反や優先ベンダー以外の利用をチェックする
非常にステップが多く、すべてにマニュアル作業が関わり、社員の手間と時間を食っています。当社でも、
- 出張前の出張申請(1)とマネージャーによる承認(2)は、面倒で時間がかかり、遅れ気味でした。
- 出張後の経費精算の処理(5)(6)にも時間がかかり、社員もマネージャーも、不満がつのっていました。
- また顧客案件による旅費は顧客に請求できる契約になっているのに、処理が滞っているがゆえに請求漏れとなっていたコストもかなりの金額になっていました。
コストを下げるため、トラベル・ポリシー(出張規定)があり、航空会社・レンタカー・ホテルなどは原則としてコーポレート契約のあるベンダーを優先的に使わなくてはいけないのですが、
- そうした規定は、予約あるいは精算申請の提出時(上記(6)まで)には何もチェックされず、経理部門に回ってから(7)はじめてチェックされるので、ほとんど効果がありません。規定を知らなかったあるいは無視していた社員に対して警告を送るくらいのことはしますが、高い飛行機に乗ってしまった後では、コストダウンという意味ではすでに手遅れなわけで。
- また規定の適用チェックも、人間が目視で行っているのでは抜け漏れも起き、徹底されません。
- また出張申請の提出や、それに対するマネージャーの承認(2)が遅れれば、それだけディスカウントチケットを買えるタイミングが失われたり、リーズナブルなホテルが満室になったりして、結果的に高くつくことになります。早ければ早いほど安く買えるチャンスがあるのですが。
そこでわれわれは、C4Tを導入することにしたのです。 その結果、どうなったか?
まずC4Tは、大きなキャッシュを生んでくれました。
- マネージャーの出張承認が早くなり、その分早く予約できたため、航空券だけで35万ドル。
- 出張管理部門のスタッフを3人減員できたので、12万ドル。
- 出張者が経費申請をするのにかかっていた時間が85%短くなり(45分から5分ちょっとに)、計8,750時間の時給に相当する72.5万ドル。
- 経費申請を承認するマネージャーの時間が90%短くなり、5,000時間の時給に相当する50万ドル。
- 経理部門で監査を担当しているスタッフが2人減員、9万ドル。
- 日当が、チェック漏れで多く支払われることがなくなり、11.5万ドル。
- オンライン予約は原則として、出張規定に沿ったものを、コーポレート契約のあるベンダーからしか購買できなくなったため、145万ドル。
これらの合計で、すでに年間335万ドル。つまり出張経費1,300万ドルの25.7%の節約が達成できました。出張そのものを減らしたわけではありません。同じ人数・期間の出張を行いつつ、コストだけを25%削減しました。
さらに追加で、
- 顧客へ請求するべき経費を自動的に把握できるようになったためきちんと請求して取り返せる分と、
- 航空会社、ホテルチェーン、レンタカー会社などコーポレート契約しているベンダーとは、購買量を明示して交渉できるため、さらに有利な条件を獲得できるはず。また、実際に契約した価格が適用されているか?を監査することも容易にできる。
ことから、今後さらにプラスアルファのキャッシュが得られると考えています。
- 各国の消費税(VAT)に対応
- 各国の法律で決められたレートや、自社が独自に定めたレートは、自動的に反映される
- 出張規定も自動的に適用され、各国ごとに決められた宿泊料の上限や優先ベンダーを利用させることができる
- 日当も各国ごとに、出張規定によって定められた内容が自動的に適用される
などの自動化が可能です。
さらに良いことは、ステークホルダーをみなハッピーにすること、です。
出張者は、
- 出張承認が早くおりるので、その分リードタイムがあり、より便利な時間帯のチケットをより安く(規定の範囲内で)買える、
- モバイルアプリでレシートを撮影し、日付などを選ぶと自動的に当該出張に割り当てられるのが便利、
- 処理が簡単、時間短縮!
マネージャーは、
- ひとり出張させるごとにかかる費用の全体像が事前に把握できる、
- 事前に出張規定が徹底される分、事後に(規定を超えた精算で)問題が起こることがない、
経理部門は、
- 出張規定があらかじめ徹底され、精算の段階で社員に嫌われ役になることがなくなった、
- 各国ごとに異なる規定をいちいち手作業でチェックしなくてよくなった、
- 包括的なレポートが出るので、どこに課題があるか、さらなる節約の余地は、などより戦略的なことに時間を使えるようになった、
- 予約の段階でアラートが出るので、社員が規定を意識するようになり、結果として規定の遵守率も格段に向上。優先ベンダーの利用率も上がった、
財務部門は、
- 出張経費が25%も減った。これはまさに、われわれ財務部門が主導すべき課題だ、
- 予算のコントロールもしやすくなった、
IT部門は、
- 使いやすいモバイルアプリなので、ユーザーが勝手に使い始め、ウチの部門はまだかと催促が来るほど。事業部門トップなど重要なディシジョンメーカーを含め、IT部門にとっての”ハッピー・カスタマー”を得ることができた、
- 既存の人事システム(PeopleSoft)と連動でき、人事関連情報はそこから引っ張ってくるので楽、
と、関係者がみな喜んでくれています。
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社員にこれだけ喜ばれ、時間と手間とミスが減る上に、なによりコスト節減によってキャッシュを生むとなると、これはもはや経営陣にとって、「導入しない理由はない」と言ってもよいのではないだろうか?
さらに、SAP C4Tは非常にオープンで、さまざまなクラウドベンダーや外部サービスとの連携によって、さらなる利便性を提供することができる。たとえば、
- GetThereなどのトラベル予約サイトと連携し、予約の段階で規定チェックを働かせて、出張規定を超える場合にはアラートを発する
- ネット予約した航空券、ホテル、レンタカーなどの場合、領収書も紙でなくメールで送ってくることが多い。この場合、メールで届いたものをそのままTraxoに転送すると、内容を文字認識し、自動的に自分の旅程と照合して、問題がなければ経費精算に回
す(※現在のところ英語のみ)
- Google Map上で地点を指定すると、走行距離を自動計算して、レンタカー代金などをチェックし精算
- コーポレートカードの利用明細をカード会社から自働的に取り込み、旅程と照合して精算処理
- そして、SAPをはじめとする各社のERP(基幹業務システム)と自動連携して、一連の経費処理を自動化する
などだ。
実際には日本においては、国税庁の方針により、「写真撮影した領収書」だけで経費精算を終わらせることはできない。精算の際には実物の領収書を添付させる必要があるので、「レシートを紙に貼りつけて提出する」という手間だけは今のところやらざるをえない。
しかしこれは、全体の中における手間の一部だ。それ以外のところだけでも、メリットは十分大きいと言えるだろう。
※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、USTグローバル社のレビューを受けたものではありません。
【参考リンク】
■SAP Travel OnDemand: Webcast
http://www.sap.com/pc/tech/cloud/software/cloud-for-travel/customer-reviews.html
いわゆるWebinarとして、オンラインで行われた事例説明。約40分、英語。
■How SAP Cloud for Travel & Expense Transformed UST Global’s Travel & Expense Experience
http://www.slideshare.net/Ariba/how-sap-cloudfortravelandexpensetransformedustglobalstravelexpenseexperience1
Ariba Live 2014での講演資料、15ページ、英語。
■Drive Value with Cloud Solutions for Professional Services Firms
http://events.sap.com/sapphirenow/en/session/4661
Sapphire 2013でのパネルディスカッションの動画(檀上4名のうちの一人がブレンドル氏、計30分、英語)。
■SAP Cloud for Travel and Expense
http://www.youtube.com/watch?v=HWF49CuOP8s&list=PLAN4lvL4kFnite9O4lF7yFvpJ76kXyeWO
Youtube上の関連動画リスト(英語)。画面イメージなども多数あり。
■サンディエゴ共同港湾管理機構におけるSAP Cloud for Travel and Expenseの利用(YouTube動画、日本語字幕つき)
他ユーザーの事例だが同じソリューションを利用している。