リテールの歴史を塗り替える!? SAPプレシジョン・リテーリング~その1
仮に、あなたが、スーパーマーケットの経営者だったとする。
以下のような超・能力を持った「お買い物コンシェルジュ」を多数揃えて、来店客ひとりひとり全員につけ、お買い物を手伝わせることができるとしたら、どうだろうか?
①来店客が今日買おうと思い描いているもの(お買い物のリスト)を一品残らず読み取る超能力(笑)がある。
②来店客ひとりひとりの過去の購買履歴をすべて、一品残らず憶えている。従って「毎週買っているこのヨーグルト、今日はよろしいんですか?」とか、「お米は5週間ごとにお買い求めになっていますが、そろそろ残り少なくなっていませんか?」とか、「お魚好きの○○さん、今日は新鮮なサンマが入ってますよ」とかいった"お勧め"ができる。
③店頭にある全商品についての詳しい商品情報をすべて暗記しており、たとえば産地や原料などについて、聞かれれば即答することができる。
④さらに、全商品ごとの「代替候補」を憶えていて、「このフランスワインがお好きな方は、このチリワインもお好きなようですよ」とか「この△△コーヒーをお求めの方には、当社プライベートブランドの○○コーヒーもお勧めです。値段は120円高いですが、量は2倍入ってます」など、適切な"お勧め"をすることができる。
⑤また「併買傾向」も熟知していて、「カレールーを買った人には福神漬けを」とか「ピザソースを買った人にはとろけるチーズを」などの"お勧め"もすることができる。
⑥さらに"タイムリーなお勧め"も得意ワザ。たとえば金曜日の夜にはスパークリングワインとか、23時を回って帰宅するサラリーマンには「残業お疲れさまでした、エビスビールとおつまみセットいかがです?」とか。
⑦一方で、今日のチラシに出ているセール品やクーポンなど、「お買い得品」情報についてもひとつ残らず憶えていて、忘れずに"お勧め"することができる。
⑧さらに、いわゆるタイムセール、つまり時限的なお買い得品についても知っていて、「今から閉店まで精肉コーナーはすべて2割引きですよ」「このスイーツは賞味期限まであと2時間なので5割引き♪」といった"お勧め"もする。
⑨上記すべての情報を掛け合わせて、来店客がより満足度の高い買い物ができるよう、つかず離れずアシストする、「お買い物コンシェルジュ」。
・・・そんなこと、できるわけがない?
ところが、できるのである。その名は... スマートフォン。
言わずと知れた... iPhone5です
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実のところ、IT的に分解していけば、①~⑧は(つまり⑨以外は)難しくないことがわかる。ある程度大手のスーパーであればすでに持っている、あるいはやればできることばかりだからだ。
- ①は「お買い物リスト機能」を持ったスマホアプリをつくるだけだから、難しいことはない。
- ②過去の購買履歴は、すでに取れている。ハウスカード会員は会計のたびにカードを提示し、1%ほどのポイント還元を受けているのだから。(つまり「取れている」という表現は正確ではない。「売上代金の1%のお金を払って履歴を買っている」というのが正しい。)
- ③詳しい商品情報は、企業としてはもちろん持っている。ネットスーパーのサイトなどでは詳しく表示していることもある。
- ④⑤は、全購買履歴を持っているのだから、仮説検証できる。「カレーと福神漬け」みたいな容易な仮説(笑)もあれば、いわゆる「おむつとビール」のような、データベース分析でしか発見できない組み合わせもあるだろうが、どちらもやれる。
さらにいうと、仮説を実際に検証していくことができる。つまり実際に「△△コーヒーを買おうとしているお客にプライベートブランドの○○コーヒーをお勧め」してみた結果、「896人中、243人がスイッチした」という詳細な実績が残る。
- ⑥は④⑤のバリエーションで、単に時間帯という要素を付加しているに過ぎない。しかし営業では、タイミングの良さがすべてだったりもするのである。
- ⑦⑧も単に③に時限的なフラグがついているだけだから、データとしてはすでにある。(ただし今の商品マスターはリアルタイム性はない、単なる「台帳」なので、リアルタイムにチェックする仕組みは必要になるが)
では、残ったものは?⑨だけ、つまり①~⑧を束ねてお客に提供する「お買い物コンシェルジュ」だけだ。たしかに生身の人間には、①~⑧を頭の中でやることはできない。しかしそこはコンピュータとスマホの組み合わせならできる。
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ということで、以下の動画をご覧いただこう。
■SAP Precision Retailing powered by SAP HANA (1分56秒、BGMのみ、声なし)
YouTube: SAP Precision Retailing Powered by SAP HANA
・・・が、動画だと流れていってしまって、ポイントがよくわからないので、以下に解説していく。
スーパーにやってきた女性客は、好みのクッキーの看板を見つけ...
...それをスマホのカメラで撮影すると、SPRはあらかじめ登録されている広告画像一覧と照合して...
...どの商品かを認識(Product Found)。女性は追加(Add to List)をタップして、お買い物リストに追加。
一方、男性客は、お買い物リスト(Shopping List)に入っているアスパラガスを見つけて、チェックすると右上の三角マークがつく。
...「オーガニック派(Organic Enthusiast)」バッジをゲット。10%引きになるとのこと。
...商品情報(ちなみにコレは$12.99)とともに、店からのお勧め(Store Suggestions)が表示され...
...タップすると、「これもお好きかも(You might prefer)」が表示され、商品情報を読んだ結果、こちらにスイッチ。(ちなみにこちらは$22.99。つまりアップセル成功!)
...お買い得品(Better Deal)が表示された。(こちらは$5.99ですから確かにオトクかも)
あなたへのお勧め(Your Deals)がいろいろ表示されている中で、カモミール紅茶を見つけ...
...タップすると、また店からのお勧め(Store Suggestions)が表示され...
...「よく合います(Goes Great With)」とお勧めされたのはハチミツ。まあいいか、と追加(Add Both)...
...して、ハチミツもお買い物リスト(Shopping List)に追加され...
...ハチミツ一点、クロスセルも完了!(この男性、おススメに弱いかも?(笑))
女性のほうは、さっき入口で撮影して追加した、チョコチップクッキーを購入。
レジでは自分の会員コードをバーコードとして表示し、スキャン。これで購買履歴が自分とひも付く。
「ありがとうございました。あなたが今回節約したのは$23.45、ゲットしたポイントは70ポイントです」
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・・・ということで、最初に提示したとおり。
このような超・能力を持った「お買い物コンシェルジュ」を多数揃えて、来店客ひとりひとり全員につけ、お買い物を手伝わせること、は、もうすでに可能なのである。
このソリューション、SAPプレシジョン・リテーリングはつい先日リリースされたものだが、単なるスマホアプリとはワケが違う。文字通り、すべてのリテールを変えてしまう可能性を秘めているのだ。
その詳細は?...次回に続く。