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PDCAサイクルが月次→日次に。プロモーション施策を大幅に精緻化したT-Mobile

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前回は、情報系/データ活用で効果を出すための「CEEDAIMAサイクル」(読みにくいのでシーダイマ・サイクルと発音することにする)を紹介し、ビッグデータかどうかではなく、CEEDAIMAサイクルを速く回しているかどうかが重要だ、と述べた。

そのひとつの典型例が、今回ご紹介する、Tモバイルである。

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T-Mobile社のWebサイト
http://www.t-mobile.com/

 

■クロス・チャネルでのマーケティング活動

Tモバイル(T-Mobile USA)はAT&T、ベライゾン、スプリントとともに米国の4大携帯電話会社の一角を占める通信大手である。携帯電話の契約数はおよそ3,500万(ちなみにNTTドコモは6,013万、KDDIは3,511万、ソフトバンクは2,895万:2012年3月末現在)。社員数約40,000人を抱え、その多くが全国3,000店舗のTモバイルショップと20か所のコールセンターで働いている。

米国の携帯電話契約数は約3.2億件(人口1人あたり1台強)となり、日本同様、飽和状態に近づきつつある。したがって携帯キャリア各社の営業戦略の基本は、フィーチャーフォン(日本でいうガラケー)からスマートフォンへの切り替えを促すことによって、4Gデータ通信などの付加価値契約を販売することにある。

Tモバイルも例外ではなく、3,500万人のユーザーに対し、コールセンター、店舗、SMS(ショートメッセージサービス)、Webなど多様なタッチポイントを通じたクロス・チャネルでプロモーションを展開。大小あわせると100を超えるプロモーション施策を継続的に実施し、スマートホンや4G回線への切り替えなどを促進している。
 

■Before:隔週(月2打席)

しかし以前は、各プロモーションに対する成果は、各店舗やコールセンターでの契約データをバッチ処理で集計して初めてわかる、という状態だった。集計処理は週次~月次で行われていたため、CEEDAIMAサイクルも基本的に月に2回転。つまり年24回しか打席に立てなかった、ということになる。

また、顧客が興味を持ち店舗やコールセンターに問い合わせはしたものの契約には至らなかった、というケースは集計されなかったため、ドロップ率も把握できていないかった。

(筆者注:上記「Before」の状況だが、「まあそんなものじゃないか?」と感じた方も多いのではないだろうか。「ウチでも同じような状態だよ」「まあ年24回見直しできれば上出来なんじゃない?」と。だが、下記「After」と比べると、その不利さは歴然とする)

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■After:日次(月30打席)

そこでTモバイルは、2011年6月中旬、新マーケティング情報システムの構築に着手した。SAP HANAに複数の基幹系システムからのデータを夜間バッチ(日次)でロードし、SAP BusinessObjects BIからの非定型検索を可能としたのだ。TモバイルとSAP技術陣の緊密な連携により、わずか4か月後の10月中旬には本番稼働を開始している。

インメモリDBであるHANAのパワーを十分に発揮し、明細データをそのままHANAで持っているため、詳細レベルまでのドリルダウンが可能となった。

一方で、あるレポート作成では、Beforeで600秒かかっていたものがAfterでは6.8秒(88倍)になるなど、処理速度はそれぞれ数十倍に。また別レポートでは、本番稼働後5か月(2011年10月→2012年3月)でデータ量は12倍以上に増えたが、処理時間は16.7秒→32秒と2倍弱で収まっており、大量データになればなるほどHANAの高速性が際立っている、とのこと。

プロモーションごとの効果測定の精緻化。顧客を特性ごとに約100のセグメントに分け、セグメント内でさらにパラメータを少しずつ変えて効果を検証しているが、日次で効果が測定できるため、パラメータを微調整して効果検証を毎日繰り返すことができている。

非定型検索のクエリも約50~60倍速くなったため、マーケティング担当者による分析作業も”バッチ処理”から”インタラクティブ”になり、クエリを繰り返すことによってより正しくデータを理解することができ、従来よりはるかに詳細な粒度の分析が可能となった。

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またHANAはモバイル端末との連携性が高いことを活かし、マーケティング部門社員に加えて、役員や幹部社員など70人のタブレット端末にも実績データのフィードを開始。よりタイムリーな意思決定に貢献している。

本稼働から5か月(インタビューしたのは3月)、徐々に成果が見えてきているとのこと。次の情報開示が楽しみである。
 

■次のステップ

Tモバイルではさらにこのマーケティング活動データを、マーケティングチャネル側の改善にも活用できないかと検討中だ。

顧客とのタッチポイントとなるコールセンターのエージェントや店舗の店員の接客・営業スキルは、プロモーションの成否に大きく影響するが、従来はそうしたスキルレベルはデジタルには把握できていなかった。

しかし今後は成約しなかったケースも含めたすべてのタッチポイントの状況がHANAに一元化されるため、たとえば営業成績のよくないスタッフへの追加教育などが考えられる。

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いかがだろうか。CEEDAIMAサイクルを速く回すことに成功した、あまりにも典型的な例ではあるが、その戦略が意図するところは明確だ。

 

※当記事は、公開情報をもとに筆者が構成したものであり、T-Mobile社のレビューを受けたものではありません

 

 

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