電子出版についてもう一度考えてみよう
EbookExpo 2013がどちらかと言うと低調で静かなものだったことは前に書いた。ここ2−3年、EPUBなどフォーマットについての議論や、黒船組の日本上陸についての憶測や不安、電子書籍の価格設定、そしてDRMの功罪など、議論のネタに事欠かなかった。今年に入ってそういった議論はほとんど影を消した感がある。それぞれ一定の見解が共有されるようになったのだろう。EPUBは電子書籍の標準のフォーマットとしての地位を確立し、アマゾンやアップルは予想通り上陸を果たし、電子書籍の価格はいわゆるエージェント制で落ち着き、DRMはそれぞれ書店のいうままに使われ、結果として良くも悪くも先行しているアメリカ市場の数周遅れで走りはじめたところだろう。
なのに、なぜみんな元気がないのだろうか?以前紹介した文化通信のアンケートを見る限り、出版社はおっかなびっくり電子出版とやらを始めてはみたものの、制作費ばかりかかり、書店に出してもほとんど売れず、売れても手元に入ってくる収入は微々たるものという現実を目の前にして呆然としている。この現実を次のように解釈してみた。
現在抱えている課題
(1)電子書籍をだしても売れない
(2)電子書籍を制作するコストが高い
(3)電子書籍をだしても利益がでない
これは何故か
(1)新刊を電子化していない
(2)電子版の価格が高すぎる
(3)けっかとして電子書籍の魅力がない
出版業界の抱えている問題はかなり深刻なものだ。いろいろな意味でインターネットが社会の基盤として定着しWebでの情報発信、情報交換が当たり前の社会になった今、出版は根本的な変革を求められている。
上に描いたグラフは出版の行方を思い切り単純化したものだ。書籍・雑誌合わせて2兆円あったビジネスがどう変化していくかを表している。Pは紙媒体、Eは電子媒体、WはWebを核とするその他の情報系の媒体だ。Pは急激に減りEはそれを補完することができない。もとのビジネス規模を維持するためにはPとE以外のWを開拓するしかない。横軸の時間は媒体の内容やビジネスモデルによって変わる。音楽業界になぞらえるならPはCD、Eはダウンロード、そしてWはそれ以外の形で世の中に氾濫している音楽コンテンツだ。
つづく)