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米Yahoo!に追従して在宅勤務を禁止したベスト・バイが、同時に取りやめたある画期的な制度

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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
前回、米国Yahoo!が在宅勤務を禁止するというニュースに関しての記事をまとめましたが、

米Yahoo!の在宅勤務禁止令への好意的な見方

今回はその件の続報と、同じく在宅勤務禁止の施策をほぼ同時に発表したベスト・バイ社をご紹介します。


実は選ばれし者のみが在宅勤務禁止の対象?


最新のMashableからの続報ですが、

Actually, Marissa Mayer Didn't Ban Yahoos From Working At Home

New York Timesの記事を参照しつつ、

the vast majority of Yahoo employees still have the option to telecommute.
...
Yahoo's policy change is specifically targeted at 200 employees who work from home full-time in an effort to boost morale for the rest of the staff. Some of these employees reportedly "did little work" for Yahoo and even started up their own companies on the side.
... managers have reassured employees that they can work remotely when necessary.

Yahooの社員の大多数は未だに在宅勤務をするオプションを持ち合わせている。
... Yahooの方針変更はあくまで常勤の形で在宅勤務を行っている200人の社員をターゲットとしたもので、その目的は残りのスタッフの士気を高めるためだった。この対象となった社員のうちの何人かは、伝えられるところによればYahooのために「ろくに仕事をしていない」人々であり、副業で自分の会社を立ち上げ始めた者までいるのだとか。
... マネージャーたちは、必要に迫られた場合は会社に来なくても勤務が可能な旨を伝え、社員を安心させている。

士気を高める、というよりは、勧善懲悪のような気もしますが、Yahoo社員からの目立った反論も目立たないことを考えると、在宅勤務禁止の影響はごく一部だけが対象で、他の社員が不安がるような事態には発展していないのかもしれません。


しかし同じ動きはベスト・バイにも


世界最大の家電量販店であるベスト・バイでも、実は同じような在宅勤務禁止の動きが出ていました。同じ記事の中ですが、

Best Buy recently followed Yahoo's example and eliminated a flexible work program that gave its corporate employees the option to work when and where they wanted ? though, like Yahoo, these employees still have the option to work remotely sometimes if their manager approves.

ベスト・バイもYahooの例に倣って、社員にいつどこで働きたいかについて社員の希望を尊重するオプションを認めるフレキシブル・ワーク・プログラムを廃止した。しかしYahooと異なり、もしマネージャーが認めれば、時々は在宅で勤務するオプションも可能となっている。

Yahooもどうやら必要に応じて在宅勤務が可能なようですが、ベスト・バイよりは裁量が少し狭い、ということになるのでしょうか。
Mashableでも、このベスト・バイの動きは別途伝えられていますが、

Best Buy Cracks Down on Employees Working From Home

実はベスト・バイが在宅勤務に対して断固たる処置をとる背景には、もう少し大きなベスト・バイ側の経営的意思決定が働いています。
上記の記事の中でも言及のある、ベスト・バイで取り入れられていた特徴的な制度、ROWEについて見ていきましょう。


両刃の剣的な制度、ROWE


THE END OF WORKING FROM HOME: Best Buy Kills Flexible Work Program

The Star Tribuneによる報道によると、

the company announced Monday that they were ending their Results Only Work Environment program (ROWE) where employees were evaluated only on results rather than time worked. Corporate employees could work when and wherever they wanted, as long as the job got done.

ベスト・バイが月曜に明らかにしたところによあると、同社は勤務時間ではなく結果のみで評価される、Results Only Work Environment(ROWE、結果のみを志向した仕事環境)プログラムを終了することを発表した。これまでは同社の社員は仕事が終わりさえするのであればいつどこで働くかも好きに決めてよかった。

働く側からすると天国のようにも感じられる半面、その場にいて観察していないと評価がなかなか難しいプロセス面が全く評価されないROWEは大変厳しい制度ともいえるわけで、いわば両刃の剣のような制度です。
今回の動きについて、日本語のメディアでは、以下のCNNの記事がわかりやすいですね。

米家電大手ベスト・バイ、自主在宅勤務の制度を打ち切り

元々ベスト・バイがこのROWEを入れたのは2005年のことで、成果主義、もっというと、結果主義、実績主義を極限まで適用した制度として、人事の世界では有名な企業でもありました。
上記のCNNの記事にもありますが、実は今回ベスト・バイがROWEを打ち切った背景には、Yahooと同様、経営不振によるトップ交代があります。

Like at Yahoo, there's a new CEO in town, Hubert Joly, who is under immense pressure to turn the company around and reform a dysfunctional culture.

Yahooと同様、この町には新たなCEO、Hubert Jolyがいる。彼は会社をターンアラウンドさせ、機能不全となっている文化を修繕するという、非常に大きなプレッシャーのもとにいるのだ。

今回のベスト・バイの件は、Yahooの二番煎じのような印象を与えてしまってはいますが、Joly氏は同社において、フレキシブルな働き方に関するディベートにも参加した上で、

the ROWE program was "fundamentally flawed from a leadership standpoint"

ROWEプログラムは「リーダーとしての観点から見ても、根本的な欠陥がある」

と今年2月16日の段階で述べていたそう。

Best Buys' particularly liberal policy was heavily publicized in the past, and it's a big shift to do away with it entirely.

ベスト・バイの極めてリベラルな方針は過去大々的に報道された経緯があり、それを完全に捨て去る今回の件は非常に大きなシフトである。

画期的な制度が失敗したことに対する非難を甘受してでも、経営を立て直そうとするリーダーの姿がここに見られます。理想だけでは経営は出来ませんし、これは実際の在宅勤務禁止の運用がどういう形で行われているかが判然とはしないYahooでも同じなのでしょう。

ROWEに関する日本語のテキストとしては、例えば以下をご参照ください。



ダニエル・ピンクがTED Talksでも絶賛した制度なんですけどね。。。

やる気に関する驚きの科学 (TED Talks)

Reality Bites. / 現実は厳しい。


在宅勤務のメリット/デメリットをまずはしっかり認識を


日本でも在宅勤務をはじめとして、リモートワーク、もっというと、アウトソーシングやクラウドソーシングなど、物理的に同じ場所に存在しない中での共同作業は増えていく傾向にあります。
いかなる制度を導入する際にも、当該制度のメリットとデメリットをしっかりと把握することが重要です。

在宅勤務のメリットやデメリットは、Fast Companyの以下の記事が一番まとまっている印象です。

Marissa Mayer, Yahoo, And The Pros And Cons Of Working From Home

そして導入の際に重要なのは、上記記事の最後に書いてあるとおり

A Happy Medium / 折衷案

を探り出すことにあると言えるでしょう。
個人的に、この表現好きなんですよ、ハッピーな中間点。妥協というとちょっと悲観的な感じがしませんか?

閑話休題。Business Insiderで紹介されている、米靴小売Zappos社のTony Hsiehは、在宅勤務には否定的なのだそう。

TONY HSIEH: Here's Why I Don't Want My Employees To Work From Home

しかし一方で、以下の記事の中にあるアメリカ国勢調査局のインフォグラフを見てもわかるとおり、在宅勤務自体は日本だけでなく米国でも近年非常に多く使われている制度でもあります。

There's Been A Huge Shift Towards Working From Home Since The 90s

在宅勤務などの流行にむやみやたらと乗っかるのも一手ではありますが、基本的には各社が各施策のメリット/デメリットを十分に精査するとともに、どの施策が自社の収益性や業績の向上を果たす上で最適なのか、自社の的確な自己分析に基いて戦略的に判断していくことが重要ですね。
ご一読感謝!


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流行に乗っかるのは簡単なのですが、その場合は思考停止していないかどうか、今一度判断を!
本当に効く施策を行うためには、当該施策のメリット・デメリットの判断も重要ですが、本来は自社をきちんと分析することから開始するのが得策です。本当に、本当に、施策を導入することで効果を上げたいのであれば。しばしば端折られるのですけれども。




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