人や会社の成長にはアイデンティティ・クライシスが必要
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
本日のエントリは脳科学に関するHarvard Business Reviewの記事から。
Why an Identity Crisis Might Be Just What Your Brain Needs
なぜ脳はアイデンティティ・クライシスを必要とするのか
2011年度のNeuroleadership Summit(脳科学リーダーシップサミット)では、アイデンティティ・クライシスが人や会社のパフォーマンスを向上させるのに役立つ、という内容だったそうです。
具体的にどのように機能するかというと、
- identity drives motivation,
アイデンティティがモチベーションを促進し、
- motivation drives action,
モチベーションが行動を促進し、
- action drives results.
行動が結果を促進する。
という流れになるのだそう。
原文で挙げられた例が大変わかりやすいのですが、高速を走っていて横を140km以上で車が追い抜いていっても、通常ならそこで追いついてやろうとは思わないのですが、これは「自分が警察官だ」というアイデンティティを持っていないからだそう。一方自分が警察官なら間違いなく追いかけていって御用だ、となります。警察官としてのアイデンティティが追いかけようというモチベーションとなり、実際に追いかけて違反切符を切って点数を稼ぐ、否、大きな事故を未然に防ぐ、という順になります。
一方、ビジネスにおいては、例えば自分がある分野の専門家だと自任していたときに、誰かが自分の主張に真っ向から挑戦してきた時、自分のアイデンティティが脅かされ、アイデンティティ・クライシスが起こります。
From a neuroscience standpoint your brain shifts into a "fight or flight" limbic response and for a time you can't even think straight.
脳科学の立場からいうと、あなたの脳は辺縁系の闘争/逃走反応にシフトし、しばらくの間まともに頭が働かなくなります。
実際には酸素やグルコースや前頭前皮質の話になるのですが、とはいえ、なぜ、このような困った事態に陥るアイデンティティ・クライシスが実際には役に立つのか。
The problem is that not all of our identities serve us or serve our company. In many cases an identity crisis (one identity clashing with another) gives us a valuable clue that we must drop an identity that doesn't serve us if we are to be effective at work.
問題は、全てのアイデンティティが我々自身や会社の役に立っているのではないということだ。多くの場合アイデンティティ・クライシス(1つのアイデンティティが他のアイデンティティと衝突すること)は、仕事上で効果を発揮しないが故に捨てねばならないアイデンティティについて有益なヒントを与えてくれる。
つまり、アイデンティティ・クライシスが起きたときというのは、いいスパイラルから外れ、悪いスパイラルに落ち込もうとしているサインといえるわけですね。
If a company has a strong collective identity an employee who carries an identity of "I am an expert" into a meeting will allow that identity to yield or be secondary to the collective identity of "I am a team member" (or some other identity tied to the mission of the company).
もしある会社が強い団結力のあるアイデンティティを持っていた場合、「自分は専門家である」というアイデンティティを持つ社員が会議に加わったとしても、そのアイデンティティは「自分はチームメンバーである」という集合的なアイデンティティ(あるいは会社のミッションに紐付いたその他のアイデンティティ)に場所を譲るか、二番目のアイデンティティとして機能することになる。
このように企業としてのアイデンティティは、企業が高いパフォーマンスを発揮するために従業員を方向づけるのに非常に役に立ちます。しかし、
Often this is more challenging than it appears.
このような(アイデンティティ・クライシスが効果的に機能する)ケースは実際には稀である。
というのは、ミッション・ステートメントといったものが、実際には従業員にきちんと浸透していないから、なんですね。著者のWasden氏のこれまでの経験では、セミナー等に参加した人の中で自社のミッションを語れるのはたった2%ほどなんだとか。
でも脳科学的に適切にアイデンティティ・クライシスを活用して会社のパフォーマンスを上げることが効果的だとすると、
if employees don't know it, or if the mission statement is uninspiring, organizations can't expect employees to perform optimally.
もし従業員がミッション・ステートメントを知らなかったり、ミッション・ステートメントが全くもって退屈なものだったりしたら、組織は従業員が最適なパフォーマンスを上げることを期待することははなはだ出来ない。
ということになってしまいます。
将来的には企業内のアイデンティティ・クライシスをなくし、"社員が一丸となる"という状態に持っていくのが理想的ですが、それを実現するためには、
companies...create "brain friendly" environments where employees can work more productively on common goals, and avoid limbic meltdowns that put employees conflicting identities at odds with each other.
会社は"脳と相性のいい"環境を整備して、従業員が共通の目標に沿って生産的に働けるようにするとともに、従業員同士がアイデンティティの衝突を起こしてしまうような崩壊的な事態を避けることが求められる。
ということだそうです。まずは力強い企業ミッションというアイデンティティを紡ぎ出すところから始めてみるのがよさそうです。
お読みいただきありがとうございます!
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