バックアップとしてのVOCALOID
1970年代後半から80年代にかけて、この人のタイコを聴かない日はないのではないかというほど売れっ子だった天才ドラマー、ジェフリー・ポーカロ(Wikipedia)が亡くなって15年と2カ月がたちました。いま、TOTOの現在のドラマーは名手サイモン・フィリップスなんですけど、「ジェフじゃなきゃ」という声は今も高く、あのドラミングスタイルをもう一度見たい、聴きたいというファンは多いはずです。
そのジェフが1992年に亡くなったとき、思ったこと。
「でも、彼はLINNのドラムマシンのサンプリングサウンドとなって、まだ残るのだ」
LM1に代表されるLINNのドラムマシンは、ジェフが叩いたものがサンプリングされていると言われていたのです。たしか、米国版はジェフで、欧州版は別の人、または逆、という触れ込みでした。
残念ながらそれはデマだったようで、ジェフの音色で自由にドラムマシンを動かすというのはかなわぬ夢となってしまいました。
ジェフは実際にLinnDrumを操っていたらしいので、面白がったかもしれません。もっとも、ジェフがすごいのは音色ではなく、そのフレージング、タイム感覚なので、音色が同じだからといって再現できるものではないんですけどね。
ということを考えながらふと思ったこと。
自分の声が失われているとわかっていたら、自分の声を最新のVOCALOIDに残したいと考えはしないでしょうか?
ジャンルによって違いはあるはずですが、ヴォーカリストの声域、色つやのピークは若い頃にくると思います。そこから歌い方を変えてまたヴォーカルスタイルを変身させるということを何度か繰り返した上で成熟したシンガーになっていった例も多いのですが、最終的には音程も不安定になり、キーを大幅に下げ、テンポも落としてうたう、ということになります。
また、先頃の忌野清志郎のように、声そのものを失う危険もあるわけです。
だったら、VOCALOID、もしくはその進化したものに「バックアップ」をしてもらうというのは考えられると思います。
いまのVOCALOIDの収録作業はどのくらいの時間と資金を必要とするものなんでしょうか。VOCALOID Editorなどのソフトウェアは流用できるとして、フォルマントをフィックスするまでに必要なコストはどれだけかかるのでしょうか?
それを歌手がVOCALOIDを「自分が操作するためにだけ」使う、ということもありうるかもしれません。自分以外のだれにも使わせず。
わたしも、「あなたはどのパートですか?」と聴かれたら「ヴォーカルです」と答える人なので、もしも自分の声がダメになるようなら、VOCALOID化を考えます。
初音ミクで遊んでいるようにみえるのは、そのための練習なのです。