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The Sartorialistから考える「価値」をとらえる本当の意味

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「そういう考えもあったか~!」と新しい発見や気づきがあった瞬間は、人生の中での楽しい瞬間の一つです。 ずっと心に残るほど大きな気づきは、年に何回もあるものではありません。 今年の大きな「そうか!」の一つの話を書きます。

こちら、 海外のおしゃれスナップで人気のThe Sartorialist 

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         http://www.thesartorialist.com/
 
モデルではなく、一般の人のリアルな着こなしの方がずっとオシャレで面白いということから始めたブログです。写真集も出て、本屋さんで積んであるのを見た人も多いのではないでしょうか。 この写真家であるScott Schumanは、TIME magazineの、デザインに影響力あるトップ100人に選ばれています。
 
これ、確かにオシャレですけど、日本では、よく見る、いわゆる読者スナップ、読者モデルなんです。 日本ではずっと前からありましたよね?はるか昔、オリーブの時代からありました。ノンノの頃も、アンアンの頃も、そして、今も、色んな雑誌で日本や海外のオシャレな人のスナップ写真のコーナーはずっとある。 それと、The Sartorialistは、何が違ったのかずっと不思議に思っていました。スナップ写真をオシャレに撮っただけで、TIME誌のTop100に選ばれるのか?と。
 
そんな事を不思議に思っていたら、The Sartorialistの、本当の価値が書いていある記事を夏くらいに見つけました。
 
でも「The Sartorialist (ザ・サルトリアリスト)」を例にとってみると、あのブログはアメリカにおける一般的なファッションの印象を大きく変えたと思うんです。・・・・・西洋社会には昔からいつも民主主義とハイセンスの間に対立があるんです。みんな規則正しく美学的にうつくしい世界がほしい一方で、みんな好き放題に暮らせる民主主義の社会を求めている。・・・だから広い意味で、ファッションがスタイルを維持するためにはある一定レベルの独裁主義的なものが必要なのかも知れません。 *全文はこちら  
 
つまり、The Sartorialistは、ただオシャレな写真集だけでなく、アメリカの文化の中において「ハイセンスと民主主義のかけ橋」をするという大きな価値があったということなのです。TIME誌に選ばれた理由はそこにあったのだと合点がいきました。
 
これを読んで、思い出したのは村上隆の「芸術起業論」の中の一節。
村上氏は2006年のオークションで作品に1億円の値段がついて「日本人の一つの芸術作品として史上最高額の価格がついた」と言われていますが、氏はこれの金額に対してちっとも高額だと思わないと言います。その理由が以下でした。
 
「作品の価値は、もの自体だけで決まらない」からでしょう。価値や評価は、作品を作る人と見る人との「心の振幅」の取引が成立すればちゃんと上向いていくのです。欧米では芸術にいわゆる日本的な、あいまいな「色がきれい。。」的な感動は求められていません。・・・欧米で芸術作品を制作する上での不文律は、「作品を通して世界芸術史での文脈を作ること」です。・・・マルセル・デュシャンが便器にサインをすると、どうして作品になったのでしょうか?規制の便器の形は変わらないのに生まれた価値は何なのでしょうか。それが「観念」や「概念」なのです。これこそ価値の源泉でありブランドの本質であり、芸術作品の評価の理由になることなのです。くりかえしますが、認められたのは、観念や概念の部分なのです。
 
「評価する」本当の意味というのは、こういう事かと思いました。そのモノ自体の価値だけではなく、全体の中の位置づけ、どういう変化をもたらしたのかといった事を評価することが、本当の意味での評価。
 
The Sartorialistは、モノ自体だけで見ると「かっこいい、オシャレなブログだね。」という評価で終わってしまうかもしれませんが、全体の中で見ると「ハイセンスは独裁主義から生まれると考えていた文化の中で、民主主義から生まれるポテンシャルもあることを初めて多くの人に知らしめることができた。その功績は大きい」という評価されるのです。両者の価値は全く違う。
 
そして、「価値」を言語も文化も宗教も違う他国に伝えるためには、ここまで説明しないと伝わらない。日本はここ数年、海外へ日本の文化を発信することを目指していますが、本当の価値を伝えるには、そのモノ自体の価値だけでなく、全体の中で捉えた価値というものも一緒に伝えていく必要があるんだなと思いました。
 
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