クラウドコンピューティングへの取り組み(5) マイクロソフト
マイクロソフトは、Windows OfficeやOutlook等、Windows 等のOS上で動作するデスクトップアプリケーションにおいて大きなシェアをもっています。
PCにアプリケーションをインストールする事業はマイクロソフトのコア事業として当面変わらないことが予想されるものの、各社が進めるクラウドコンピューティングを進める中において、マイクロソフトもクラウドへと転換を図ろうとしています。
マイクロソフトは、2008年7月に開催された「ガートナー SOA サミット 2008 」等様々ななセミナー等においてクラウド戦略を発表しています。
マイクロソフトは、企業競争力を高めるクラウドアプローチとして、以下の3つに分類しています。
「完成品サービス」
SaaS上のアプリケーションをそのまま導入して利用する形態。「完成品サービスに該当するのは、「Windows Live」、「Office Live Small Business」、「Exchange Online」、「SharePoint Online」等です。
「付加サービス」
既存のデスクトップアプリケーションに必要に応じて付加的に利用する形態。「付加サービス」に該当するのは、「Office Live Workspace」、「XBOX LIVE」、「Windows Live OneCare」、「Exchange Hosted Service」等です。
「ビルディング ブロック サービス」
主に開発者向けにデバイス間でアプリケーション等を連動させるためのAPI等を開発できる形態。
「ビルディング ブロック サービス」に該当するのは、「Live Mesh」、「Silverlight Streaming」、「Virtual Earth」等です。「Live Mesh」は2008年の4月時点では、「各デバイスからファイルやプログラムを他者と共有したり、同期したりできるプラットフォーム」と一般ユーザ向けのプラットフォームとして位置づけられていましたが、開発者向けにシフトしつつあるようです。
マイクロソフトのシニア・バイスプレジデント、クリス・カポセラ氏は、2008年5月に、5年後には、Exchangeのメールボックスのうち50%はExchange Onlineで提供されるようになっていると予測し、5年間で数千万件の企業のメールアカウントがMSのデータセンターに移ることになる見通しを示しています。このモデルはMS社利益幅は縮小するが、収益は向上するとしています。電子メールが今後どの程度、クラウド上にアーカイブされていくかは要注目です。
そして、 10月1日、ロンドンで開催されたマイクロソフトのイベントにおいて、正式名称は未定ですが、「Windows Cloud」の存在を公表しました。(「Windows Strata」 に正式決定かといわれていますが、現時点で正式発表はありません。)
Windows7とは別のプロジェクトで、クラウドコンピューティング上で提供するアプリケーションの開発環境を提供するようです。おそらく、Gグーグルの「Google Apps Engine」やセールスフォース・ドットコムの「Force.com」等と同じ、PaaS(Platform as a Service)に位置づけられるのではないかと思われます。
また、10月8日に開催されたパートナー向けのイベント「Microsoft Japan Partners Conference 2008」にて、「ソフトウェア+サービス」を強調し、クラウドコンピューティング事業を強化していくことを述べています。
スティーブ・バルマー社長は、「10年後には社内で運用されるサーバーは無くなり,すべてがクラウドに移行する。」と断言をしています。ということは、マイクロソフト自体が10年以内にこれまでのビジネスモデルを変革していかなければないと言うことを意味しています。
マイクロソフトは、既存のデスクトップアプリケーションの強みとクラウにあるWebアプリケーションの良さをうまく使い分け、そして、クラウドコンピューティングの市場に本格的に参戦しようとしています。