伝統工芸品が不振の一因は流通構造の変化にあり
現在、私達が旅行に行った際、おみやげ屋さんで、目にしたり手に取る各地域の伝統工芸品が振るわなくなっている。10年間で市場規模が約半分といった商業統計もでている。
何故だろうか?消費者の価値観の変化。お味噌汁を飲む御椀を輪島塗でといった気持ちで生活の中で使う方は、一部の方を除いて少なくなっていることは実感できる。その他、当然であるが、価格が高いといったことも挙げられる。そして、スーパーなどで売られているものとの価格差は開く傾向があり、いくらいいものであっても、あまりに価格差があれば、特にデフレ傾向の中、選ばれなくなるのは当然ではないだろうか。また、「扱いにくい」といったこともあるかもしれないし、「デザインが好みに合わない」といったこともあるだろう。
いずれにしても、消費者のニーズその他の実態と、生産者とのギャップが生まれていったことは間違いがないようである。
では、なぜ、ギャップが生まれたかといえば、その一因は流通構造の変化にある。小売店の大型化が進む中で、従来の問屋の機能が大きく縮小した。もちろん、物流の効率を考えると、以前、言われたような「問屋無用論」は、あり得ない話であると思うが、10年以上前にイオンが仙台に物流センターを設けたのを皮切りに、川上統合の流れもある。そして、大型化した小売店が、安くプライベートブランドを直接メーカーと交渉し造らせたり、海外から価格が安いものを仕入れしたりといったことが進んだ。
そのため、従来は、問屋が消費者のニーズを把握し、実際に工芸品を作っているところにフィードバックしていたが、その機能が弱くなっている。消費者の声が届かないとすれば、当然、ズレが生じてもおかしくない。さらに、伝統工芸品を作っているところの意識も、職人的なこだわりがあり、消費者のニーズに合わせるといったことは、妥協することといった意識もあったと思われる。
では、どうしたらいいのだろうか?
1.流行にあわせた商品企画(デザイン・機能の革新)や他とのコラボレーションを行う。
2.技術を応用して新用途開発をする 3.新市場を開拓する
4.コト・文化・体験として売る。
5.地域限定でしか売らない。(以前、ブログで紹介した黒木本店の例など)
他、たくさんの打ち手は考えられる。その中で、3の新市場の開拓で、海外に進出した例はたくさんあるが、比較的最近の例として、川口商工会議所がKAWAGUCHI i-mono 鋳物について、成長著しい中国でイベントの模様がYOU TUBEにアップしてあったので掲載する。
いずれにしても、しっかりと、消費者ニーズや流通構造その他、外で起きていることをしっかりと踏まえた上で、「伝統とは革新である!」といった虎屋の黒川社長の言葉にあるように、消費者のニーズをウォッチングしつづける仕組みと実際の取り組みが重要ではないでしょうか?