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スマート革命、アップル地図問題はグーグルのオープン姿勢放棄に原因

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<序文>

 一人一台のパソコン+ブラウザーのオープン時代から一人が七台のスマート機器と閉鎖型アプリを使いこなすポストPCコンピューティング時代(スマート革命時代)への移行期に当たって、インターネット環境がオープンなエコシステム(生態系)からオープンと閉鎖が微妙に並存する閉鎖型のエコシステム(生態系)へと移行を始めています。これまで閉鎖型ビジネスモデルの代表はアップルであり、オープン型のビジネスモデルの代表はグーグルでした。

 

 さてウオールストリート・ジャーナル誌のブログであるallthingsDは、アップルの地図問題を関連者にヒアリングし、失敗作といわれているアップル地図問題の背景にはグーグルのアップルに対する差別化姿勢が大きな要因としてあると述べています。従来、オープンだったグーグルがサービスにおいて差別化を行う方向に進み始めたというのは、明らかにオープン性の部分的な放棄と言うことなのでしょう。(但し、筆者としてはオープンだから良いとか閉鎖だから駄目と言うことを言うつもりは全くありません。)

 

 

★★ Apple Reportedly Ditched Google Maps Over Lack Of Turn-By-Turn Navigation

 

 

<音声でのターン毎のナビ機能を巡る交渉>

 allthingsDによればアップルはグーグルマップの契約期間を後1年も残して独自地図の採用に踏み切り、色々批判を浴びています。その背景にはグーグルがアンドロイドOSに提供しているドライバーのターン毎の音声ナビの仕組みを巡る交渉にありました。アップルは音声でのターン毎のナビ機能( Voice-guided turn-by-turn driving directionsをiOSでも使えるようにして欲しいと申し出たところ、グーグルはそれを拒否したそうです。(アンドロイドの競争力維持の為だそうです。)アップルがなおも強く迫った所、グーグルのin-app brandingを強化して欲しいとかGoogle Latitudeを入れろとグーグルが迫り、その結果、アップルは独自地図路線を採用するに至りました。

 

これは明らかにグーグルのオープン姿勢の部分的な放棄を示しています。

パソコン時代からスマート機器の時代へとグーグルも姿勢を変化させ始めています。

 

<現実のビジネスはオープンと閉鎖の微妙なバランス>

 さて現実のビジネスはオープンと閉鎖の微妙なバランスの上に成立しています。例えば米国のCATVのような有料放送業界には「プログラムアクセスルール(番組提供義務)」があります。このルールの下では例えライバル企業の申し出であっても適切な料金の支払いさえあれば、自社が開発したドラマなどの番組の提供を拒否できないと言うオープンなものです。一方同じ動画でも映画の世界には、提供時期に時差を認めるウインドウズと言う閉鎖的な商慣習があります。劇場での上映から一ヵ月後にDVDを販売し、その後にCATVでの放送を認め、地上波が一番最後に来ると言ったものです。

 

 そう考えればインターネットのエコシステム(生態系)も現実のビジネス環境に近づいたと言うことなのかもしれません。

 

アップル地図問題は現代の共有地の悲劇>

 中世の昔、村の共有地(コモンズ)では、村人が皆で仲良く羊を飼って暮らしていました。しかし資本主義の初期、繊維産業が勃興すると各家々が競って羊の数を増やし、共有地を囲い込んで商業主義に走りました。その結果、共有地は滅んでしまいました。この話はオープンか、独占かと言う議論の中で時々出てきます。

 

地図問題では領主のグーグルが、「もはやグーグルマップは共有地ではない。」と言い出して住人のアップルを差別したと言ったイメージです。グーグルにしてもこれをやりすぎると独占禁止法問題で取り上げられかねません。

 

アップル独自地図問題では既にオンデマンドによる自動車レンタルサービス企業がIOSへのアップグレードを来週まで延期せよとユーザーに言い始めるなど影響が大きくなって来ています。また非難の矛先もアップルだけではなくグーグルにも向きかねない情勢です。

 

グーグルマップへのトラフィックの45%はiOSから来ていると言う報道もあります。アップルユーザーは「グーグルマップが突然、使えなくなった。」と言う点に関して、まずはアップルを非難するでしょうが、しかし次の矛先はグーグルの差別姿勢=閉鎖性に向かいます。「何で俺たちを差別するのか。」と当然、怒るでしょう。

 

サービス支配論理が重要性を増す中、アップルの地図問題は今後どんな展開をするのでしょうか。

 

★★More Maps Backlash? Uber Tells Drivers To Hold Off On Updating To iOS 6 Until Next Week

 ドライバーにiOSへのアップグレードを保留せよと注意を促したオンデマンドレンタルカー企業Uber

Uber

<出所:テッククランチ>

 

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