福田総理とバルトーク
福田総理が総裁選に勝利した頃、テレビで彼の知られざるプロフィールを紹介していて、趣味はクラッシック音楽、特にベルリオーズが好き、と紹介されていた。その後、日経新聞の「春秋」欄でも、総理のクラシック好きが紹介されていたが、こちらでは、バルトーク。記事では、バルトークの作曲家としての一面と、民族音楽研究家としての一面を取り上げ、彼の二面性を福田総理になぞらえようとしていたが、どうも福田総理よりも、その筆者にバルトーク好きのにおいを感じてしまった。
福田総理が本当にバルトーク好きかどうかの真偽はともかく、バルトーク愛好家の年齢層がちょっと気になった。以前聴きにいったジュリアード弦楽四重奏団のバルトークチクルスでも、白髪の老紳士を多く見かけたし、行きつけのバーでも「バルトーク聴くなんてめずらしいね。普通私のお父さんぐらいの人が聴くんじゃない?」なんて言われたこともある。どうも、バルトーク好きが多い世代は、6、70代ぐらいみたいなのだ。
ひょっとしたら、その世代には、なにかバルトーク好きになるトリガーがあったんじゃないだろうかと気になって調べてみたら、バルトーク生誕50年というイベントに行き当たった。演奏頻度の増加という意味では、生誕50年より没後50年のほうが意味を持つ。なぜなら、没後50年で多くの場合著作権が切れるからだ。だが、バルトークの没後50年は、1995年。そんなに昔のことではない。
1981年に何があったかというと、バルトーク全集なる40枚組みのレコードが発売され、著作権料を払いながらもバルトークが頻繁に演奏された。FMでもバルトークの特集をたくさん組んでいた(エアチェックなんて言葉があった時代ですね)。はて、その頃の3、40代が、演奏会場に頻繁に足を運んだり、40枚組みのLPをポンと買ってしまえたりする世代だったということなのだろうか。
これがその40枚組み全集。バルトークの全作品(初期の習作を除く)が、ハンガリー人の演奏によって収録されているのが魅力。現在では、CD版が出ているようだ。
結局ことの真偽はよく分からないが、先日のジュリアードでは、そうした白髪世代に交じって、バルトークのビートを感じてノリノリになっている青年がいた。そういう若い世代のバルトークファンも増えているというのは、よろこばしいことだ。