MicrosoftのArm戦略はどうなるのか?
少し前になりますが、Windows on Arm(WoA)について気になるニュースが流れました。「M1 MacでWindowsがサポートされないのは、MicrosoftとQualcommの間に独占契約があるからだ」と言うのです。
「気になる」と書きましたが、私にとっては結構驚きでした。実は、4年前に
というブログの中で、まさに
(WoAは)いまのところSnapdragonだけでしか動かないようです。この辺、MicrosoftとQualcommの間の取り決めなのか、技術的にSnapdragonでARMv8への特別な拡張が行われているのかどうかが気になっています。
と書いていたからです。上の報道から考えると、技術的にそこまで踏み込んだ理由では無く、契約上の理由だったということですね。
このブログでは、だいぶ前からWoAの行く末、最近ではM1 Macでのサポートについて気を揉んできました。
この記事でも書いていますが、私の理想としては、Intel版WindowsがM1 Macで動くことです。もちろんM1 MacでWindowsを動かすのであればWoAが筋ではあるのですが、Rosetta2があれだけのエミュレーション性能を発揮していることから、「ひょっとしてIntel版が動いたりして」と思っていたのです。しかし、M1 MacでIntel版Windowsが動かないのか、などと言っているのはどうも私だけのようで、世間ではあたりまえのように「WoAがM1 Macで動くのかどうか?」という話になっています。
Intel用のWindowsバイナリがM1で動くかどうかが問題なので、WoAのX32/X64モードでIntelバイナリが動けばそれはそれで良いのですが、どうも速度が遅いようで、実用に耐えないのではないかと危惧しています。まあ、最終的に使ってみないとなんとも言えないのですが。
でも書きましたが、M1があれだけのパフォーマンスと省電力性を見せつけ、さらにはIntelバイナリがそのまま高速で動くことを実証した後では、Microsoft/Qualcomm連合が出してきたSurfaceは、どうしても見劣りがしてしまいます。
Microsoftの次の戦略は?
今回、Qualcommとの間に何らかの独占的契約があったとして、それが切れるのであれば、Microsoftには別の展開を期待したいところです。しかし、報じられているニュースを見ている限りでは、ちょっと迷走しているようにも見えます。
最初にQualcommはWoA用のSnapdtagonを開発しました(このチップは他のスマホ用にも販売されました)が、その後Surface専用のチップを開発しています。
しかし、これと同じ時期に、Microsoftが独自にArmベースのチップ(サーバー向け)を開発しているという報道もありました。
さらに、この記事ではMicrosoftとAMDがArmベースのチップを開発しているという話もあるようです。
Microsoft and AMD are reportedly developing an Arm processor for laptops
そして、今年の夏にはIntelバイナリとの新たな互換性ソリューションを発表しています。
実は迷走しているのでは?
いろいろ取り組んでいることはわかるのですが、どうも個々の取り組みのベクトルがあちこちを向いているようで、統一した方向性が見えないように感じます。自社開発なのか、パートナーとの共同開発なのか?ハードウェアを絡めた最適化なのか、ソフトウェアによるエミュレーションのみなのか?いろいろな可能性を試しているように見えるのは、明確な戦略が立てられていないからでは無いでしょうか。
元々全然アーキテクチャの違う環境にOSやアプリを持っていくわけですから、AppleがM1で見せたようなハードウェアとOSを横断して徹底したパフォーマンスのチューニングが必要になるのではないかと思いますが、Microsoftは今のところAppleの様に半導体設計会社を買収してまでそこに踏み込むつもりは無いようです。なんでも自社に取り込んで垂直統合を目指すAppleと、パートナーとの関係を重視するMicrosoftとの基本的な戦略の違いなのかも知れません。Microsoftはクラウド事業では成功していますし、何もかも成功しなくても良いのかも知れませんが、そうであれば、是非早めにM1 MacでWoAをサポートするという決定を下して欲しいと思います。
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