MSP部門を切り離してMSP企業を買収するIBMの狙いとは
新年早々、IBMがクラウドのマネージドサービスプロバイダー企業であるTaosを買収すると発表しました。
記事によると、Taosは「カリフォルニア州サンノゼを拠点とし、テクノロジーや金融サービス、ヘルスケア、小売、輸送、教育などの業界で30年の実績を有する」「クラウドのマネージドサービスプロバイダー(MSP)」だということです。
と、ここまで読んで何か違和感を感じました。あれ?IBMって、少し前にマネージドサービス事業を切り離して分社化するという発表をしていましたよね?
「グローバルテクノロジーサービス(GTS)事業の一部であるマネージドインフラサービス部門」でした。でも、MSPと似ていると言えば似ています。わざわざ他の会社を買うくらいなら、自社の部門を切り離すことは無かったのではないでしょうか?しかしそれは、日本企業的発想なのかも知れません。
今回は買収金額が非公開で、Taosの年間売上もよくわからないのですが、従業員650人くらいということで、売上もそれほど大きくは無いものと考えられます。であればなおさら、切り離す予定の部門から一部を残せば良かったのでは無いか?とも思うのですが、どうもそうでは無いようです。
この記事によると、TaosにはAWS, Azure, Googleに関するExpertise(専門知識)があるのだそうです。IBMは、ハイブリッド・マルチクラウドの事業を展開して行くにあたって、この専門知識と事業ノウハウが欲しかったということなのでしょう。逆に言うと、先日切り離した部門にはそれが無かった、ということにもなります。
欧州でもMSP企業を買収
そして、実は私も見落としていたのですが、IBMは12月にフィンランドのNordcloudという会社を買収しています。
Nordcloudも、マルチクラウドに強みを持つMSPだということです。
Nordcloudは「Amazon Web Services(AWS)」と「Google Cloud Platform(GCP)」、「Microsoft Azure」という3つのクラウドプロバイダーから認証されている。
IBMは、自社のMSP部門を切り離し、本体はハイブリッド・マルチクラウド事業に専念するという戦略をとりました。そして、そのハイブリッド事業を強化するために、ハイブリッドに強い外部のMSPを買収している、ということになります。これはなかなか凄いことです。日本企業であれば、切り離す部門から一部を選抜して本体に残し、ハイブリッド・マルチクラウドの勉強をさせる、という選択になるのではないでしょうか。(日本では従業員を解雇しにくいとか、ビジネス慣行も大きいとは思いますが)
「規模」を買う日本企業、「時間」を買う欧米企業
IBMは、「時間」を買ったのではないでしょうか。教育すると言っても、事業のノウハウは半年や1年では蓄積できません。その分野で長い経験を持つ企業や部門を買収するのが早道です。IBMに限らず、欧米企業の場合は、ビジネスを迅速に展開するために特定の技術を持つ企業を買収することが多いのに対し、日本企業は将来を見据えて事業規模を拡大したり、基礎的な技術を持つ企業を買収することが多い様に思います。この辺が、日本企業と海外の企業のスピード感の差、ひいてはDXへの取り組み姿勢などにも現われているような気がします。Googleの買収企業リストなど、ものすごい数に上ります。
近年業績が振るわなかったIBMには時間がありません。ということで、実績も人員もある既存企業を買収し、できる限り早く事業を立て直す、という戦略に打って出たものと考えられます。今後、世界各地で同様の買収を仕掛けて行くのではないでしょうか。
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