SDカード/ホスト規格試験の最新動向
今回は、SD Association(以下SDA)のTest Guideline-WG および Mechanical-TGのCo-chairを務めている当社代表取締役社長 大原 の協力を得て、SDカードおよびホストの規格試験の最新動向についてご紹介したいと思います。
1.SDカードの市場動向
今やSDカードが世界で最も普及しているメモリカードのひとつであることに疑いを持っている方はいないでしょう。SDカードの規格は2000年に策定され、データファイルだけではなく、オーディオファイルやビデオファイルが読み書き可能な大容量かつ低価格なリムーバブルメディアとして、その対応製品は、パソコンや周辺機器をはじめ、デジタルカメラ、携帯電話、さらに近年は、様々なIT/AV家電製品に至るまで幅広く拡大しています。
2012年には、32GBから64GBまでのSDカードが市場投入され、8GBカードにおいては10USドル以下の製品も登場してきています。(2012年6月現在) 「10USドル以下」というのは、コンシューマ市場で普及が拡大する際のマジックナンバーです。8GBはDVD(4.8GB)を超える容量で、DVDムービーを記録・再生するのに十分な容量です。
2. SDカードの技術更新情報
SDカードは、SDXCで大容量への仕様の拡張を行い、物理層規格「SD Card Physical Layer Specifications for Host/Card」それぞれの最新バージョンVer. 4.10において、UHS-I(DDR)によるBUSスピードの高速化が図られています。 更に差動信号(LVDS)を用いたUHS-IIで、上位互換性のある高速化を実現する予定です。
これらの更新により、規格への適合のために試験を行う必要があるいくつかの重要な試験項目があります。その一例として、以下でホスト製品に対する「Power Supply Current Test」についてご紹介します。
3.Host Power Supply Test(ホストの電源供給能力試験)
この試験は、大容量と高速化により消費電力が増大するカードに対するホストの電力供給能力を確保することを目的としています。スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、USBリーダーなどのSDホストは、最低限200mAの供給が要求されています。Ver. 4.10規格のリリース以降は、SDXC、UHS-I、UHS-II(今後)、Wi-Fi IOカードの動作のために、500mA以上の供給が可能となります。このような電力供給能力を確保するために、SDAは電力負荷(Electric Load)による試験方法を定義しています。(図1参照)
図1: Host Power Supply Testの試験方法
SDホストのPower LineのElectric Loadを接続し、I-V値を測定する。
4. SDホストにおいて最低限要求される試験結果
図2はHost Power Supply Testの試験結果の事例です。縦軸が電圧で、横軸が消費電流(カード負荷時)
図2:
ホストの標準出力電圧は3.3Vです。カードの負荷(消費電力)が増加する際でも、ホストシステムは2.7V以上の電圧(200mAまで)を維持しなければなりません。図2の緑ラインのように、I-V値がこの条件を確保すれば、ホストシステムは200mAまでの範囲で十分な電力供給能力を有していることになります。
しかしながら、時として、カードの消費電力の増加により、ホストの出力電圧が3.3V以下に低下していき、200mAの負荷に至るまでに2.7V以下まで電圧降下するケースがあります。(図2の赤ライン参照) そのような場合には、このホストは最低限の電源供給能力の要求事項に適合しません。当社で市場に出回っている複数の製品を確認したところ、いくつかのモバイル機器のホスト、携帯電話、デジタルカメラ、USBリーダーの一部において、重い負荷(通話、ズーム、複数機器との接続)がかかった際に十分な電源供給能力を有していないことを確認しました。
5. 今後の製品に向けて
図3はUHS-Iカードの動的電流の測定結果の事例です。
図3:
この測定結果によると、ホストシステムは200mA以上を供給するのみならず、十分な電力供給能力は400mAくらい必要であることが分かります。
UHS-I上で機能するホストシステムあるいはWi-Fi SDカードのような高出力のカードは、このようなHost Power Supply Testでさらに電力供給を確認する必要があります。
6. SDAの動向
4項で説明したHost Power Supply Testの試験方法は、SDホストの物理層試験規格「Physical Layer Test for Host」のVer.3.1で追加され、近々正式リリースの予定です。SDAとしては、この新しい試験方法に基づいてホストシステムの電力供給能力を確認することを推奨しています。又、カード側に関しては、5項のようなAC電流のピーク電流に関する試験方法が定義されていません。この課題についてはTest Guideline- WGで議論が始まったばかりです。SDAは、この議論へのカードおよびホストベンダーの参加を歓迎しており、一緒になって議論を進めていきたいと考えています。
尚、アリオンは、SDA認定の「Designated Laboratory」(指定試験機関)としてSDカードおよびホストのVerification Testを実施しています。それ以外にも、前述のSDホスト製品の物理層試験規格「Physical Layer Test for Host」に基づく試験サービスや、多数かつ最新の市販SDカードとの接続確認試験、当社保有の豊富な測定機器(エミュレータ、アナライザ等)を用いた各種検証・解析サービス等を提供しています。ご興味のある方は当社までお気軽にご相談ください。
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K.S.