オルタナティブ・ブログ > 餅は餅屋、品質検証は品質検証屋 >

ますます複雑化する開発製品の品質検証。エンジニアの皆さんに向けてAllion Labs, Inc.(アリオン)の島田が品質検証よもやま話をお届けします!

タッチパネル試験ソリューション

»

 DIGITIMESリサーチの調査結果によると、世界のタッチパネルの出荷台数は2013年には17億台以上に達し、2012年の同期と比較して17.2%の成長となるようです。この中で、主にタッチパネルを採用しているのは携帯電話であり、その出荷台数は約12.8億台、2012年と比較して14.2%の成長で、全体の73%を占めています。タブレットPCの出荷量は約2億3千万台、全体の13.3%を占め、出荷台数としては全体の第二位、前年との同期比で38.2%の成長です。また、タッチパネル対応のPCの出荷台数は約2,633万台で、こちらは前年同期と比較し251.3%の成長率となりました。ここで注目すべき点は、タッチパネル対応モデルのPCのニーズが大幅に成長している点です。これは大型パソコンがタッチパネルを採用することで、マーケット内で優位となり得ることの現れであり、DIGITIMESリサーチはデスクトップPC市場の中でもオールインワン型PCが大部分の出荷台数を占めるであろうと予測しています(図1参照)。デスクトップPC市場におけるオールインワン型PCの出荷台数は継続的に成長しており、2013年は8.7%の見込み、2014年は10.4%に昇ることが予想されています。

図1:2013年オールインワン型PCが世界のデスクトップPC出荷台数の10%に到達

 Microsoftが2012年に発表した、タッチパネル対応のWindows 8 OS発売は、予測通りPC市場売上の底上げには繋がりませんでした。しかし、マーケット調査機関と大手タッチパネルメーカーは2013年の成長を楽観的に捉えています。大型タッチパネルの利用が新しいビジネスを創りだせるかは、その根本的な技術の歩留まり(ぶどまり)率、効率、安定性にあります。タッチパネルの品質をベストな状態にすることで、各メーカーおよびユーザーにとって使いやすいものにできるかが、アリオンの注目しているポイントです。今後予測されているタッチパネルの利用方法、それはオールインワン型PC、車載システム(IVIシステム)などに搭載されることです。本記事では、タッチパネル関連製品の検証に関連するノウハウと、検証中に遭遇した問題事例をご紹介いたします。

 タッチパネルに対する試験のポイントは ①機能試験 ②正確性試験 の二つに分けられます。

①機能試験

 - 互換性試験

目的:試験機材と異なるシステムのUSB末端に対する互換性を確認。

 - タッチ機能試験

目的:タッチパネル操作と関連する操作が試験機材で正確に実施できるかを確認。

 - パワーマネジメント試験

目的:DUTがスタンバイ、ハイバネーションなどの状態から復帰するまでの時間と動作を確認。

 

②位置精度試験

目的:タッチ機能試験装置にて、試験機材の検出位置の精度を確認。

 タッチパネルの機能性、および正確性を詳細に試験することが容易ではないからこそ、試験範囲は装置本体のハードウェアからソフトウェア、プログラミングに至るまで幅広くカバーしています。技術革新により、タッチパネルのサイズがどんどん大きくなっていくことに加え、ユーザーは更に高い位置精度、省エネを求めており、また、低い故障率のタッチパネル製品を期待していることでしょう。この技術規格の品質安定と生産効率を保証するために、一連のテストソリューションを確立することは、各メーカーがタッチパネルを利用した製品を発表するためには必須条件です。

 

問題事例 その1:Touch Jitter Tests

 Touch Jitter Testsを実施する際、タッチスクリーンの上に指で描いた線の位置検出誤差が1ミリを超えた場合、試験にFailとなります。線引き試験を垂直線・平行線で行うとき、静電容量方式と光学式パネルでは両者とも大きな問題がありません。しかし、線引き試験が五本の対角線描写、円の描写、半円描写(表1)に変わった場合、静電容量方式と光学式パネルの両者とも、静電容量検出の不良や、軌跡の検出光が遮蔽されることが原因で誤差が発生しやすくなり、試験にFailとなってしまいます。この場合には、メーカーは試験結果に基づいて製品を調整しなければ、試験要求を満たすことができません。

1Touch Jitter Tests

マルチ移動 (対角線)

 

Radial: 円形の描写

Radial Inset: 半円の描写

問題事例 その2: Touch Input Tests

 タッチスクリーンの上に指で五本の斜線を描いたとき、光学式タッチパネルの場合はパネル側に赤外線を照射し、赤外線のグリッドを形成します。使用者がタッチスクリーンを触るとき、遮断された赤外線の位置を計算して、タッチした位置を検出します。この構造の利点は、どのような物で触っても検出できる点ですが、欠点は使用者が画面をタッチしなくても赤外線を遮蔽すると間違った入力になってしまう点にあります。また、複数の入力がある場合には陰になった部分を検出できない場合があります。この為、五本の斜線を同時に描くとき、光学式パネルは軌跡が遮蔽された影響により試験がFailとなる場合があります(表2)。こうした場合の対策としては、照射を増やして赤外線の網状エリアを拡大するほか、プログラムとファームウェアを更に精密に調整し、要求基準を満たすようにする必要があります。

2Touch Input Tests

Converge: 収束

 

問題事例 その3: Touch Physical lnput Tests

 この試験は、静電容量方式、光学式ともにFailとなる場合がある試験です。静電容量方式パネルを例にしますと、その検出原理はモニター上に配列された透明の電極と指との間に発生した静電気による静電容量の変化を利用しており、発生した誘導電流で座標を測定しています。Tap Coverage―Center(表3)を行っている時、特定の位置で、タッチを検出できないポイントが発生しています。特にMicrosoftが規定した試験での50ポイントの中でFailが発生してしまうと、再度プログラムやファームウェアを調整し直さなければなりません。

3Touch Physical lnput Tests

Tap Coverage(Center)

 

問題事例 その4:Touch Z Axis Test

 使用者にとって、タッチスクリーンを使用しているとき、パネルが敏感過ぎるため、まだタッチしていないにも関わらずレスポンスが発生してしまう状況は、とても使いづらいと感じるでしょう。よって、スクリーンを試験する場合、Z軸のタッチ試験も確認しなければなりません。メーカーのプログラム設計や電流検出回路が好ましくない場合、タッチパネルとの間に隙間があってもタッチのレスポンスが発生します。Microsoftもこの部分における基準が特別に作られていて、0.5mmに近づいた時点でレスポンスがある場合、タッチレスポンスではFailと定義されてしまいます。

4Touch Z Axis Test

Touch Z Axis Test

 

 以上の評価事例を、まとめると、不具合原因は、規格を正しく実装している機能試験の点と、タッチセンサーの精度の二種類に分類することができます。デバイスのハードウェアの基本的な機能面において、多くのメーカーはデバイスを設計する時には、Sample RateやHID要求仕様等、関連規格要求に従う必要があります。もしこれらに適合していない場合、タッチ試験の中にあるベーシックチェックで、メーカーのデバイスが要求事項を満たしていないことが発覚し、Failとなるでしょう。二つ目の問題事例は、Touch Jitter関連の試験項目です。これ実施した際に、その精度が1mm以内でなければならないことと、実際にタッチしていないのにZ軸を検出してしまうということが、最もFail率が高い試験項目となります。この部分については二種類の精密なタッチ試験用機器を準備しました。これを用いて試験を実施し、問題を確認して修正、および再試験を実施し、現場でメーカー側の技術者と当社技術者が協業にてタッチ検証についての未検証のリスクを発見し、ハードウェア、ファームウェアの観点で不具合原因を分析致します。

 

 ハードウェア面における不具合事例

 - タッチパネルの密着性に誤差があり、実質のタッチポイントとパネル面の反応に誤差が発生する。これらのハードウェアの問題に関しては正常なタッチパネルへと交換する必要がある。

 - スクリーンの外枠の組立不良、あるいは運送過程の衝撃により浮き上がりが発生し、再度固定するか、パネルを交換する必要がある。

 - 赤外線パーツの故障により、特定のエリアの検出/判別が不可能となり、赤外線パーツを交換する必要がある。

 

 ファームウェア面における不具合事例

 - タッチ精度が低く、誤差が大きいため、再校正が必要。

 - タッチ精度が低く、誤差が大きいため、ファームの更新が必要。

 - タッチ精度が低く、誤差が大きいため、プログラムの更新が必要。

 - 検出点の間違いがあるため、安定器を取付け、電源ノイズ干渉を解決。またはプログラムを更新する。

 

 各メーカー及びユーザーはタッチパネルの利用拡大に期待していますが、これらの利用範囲は多様なデバイスへと広がりを見せており、現在のサプライチェーンの状況から見ると、業界関係者の関心はタッチパネルの生産規模と各社の出荷能力に集中しています。しかし、市場では最終価格とコストパフォーマンスなどの外因によってユーザーがそれを受け入れるかどうかが決まります。この為、最終的にはタッチパネル技術の歩留まり率の改善と技術的な向上が、大型サイズの機器にまでタッチパネル・ビジネスを広げるための要因となり得るでしょう。

 以上のように、当社ではタッチパネルを用いた製品に対する検証に関するいくつかの試験ソリューションを検討しました。タッチパネルのセンサー技術(抵抗膜式、静電容量方式、光学式等)は複数 存在するので、それぞれに対応した検証方法を採用する必要があります。センサー技術も常にに進歩しています。更に研究を進めることで、技術の革新が可能となり、市場で普及しているタッチデバイスを高い製品歩留まりで、製造効率の向上を実現することができることでしょう。アリオンは総合的なセンサー技術のソリューションと、そしてこれらの検証過程に発見した問題点を総合的に整理しお客様に報告いたします。また、関連するメーカーへと問題発見と発生原因を特定する技術サポートを提供いたします。タッチパネル検証やWindows 8のタッチ試験など、検証に関するお問い合わせにつきましては、service@allion.co.jpまでお気軽にお問い合わせください。

Comment(0)