オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

いま見てるテレビ、つぶやきますか?

»

BuzztterなどTwitter上のトレンドを可視化するサービスを利用していると、ある傾向が現れることがあります。それは「いま放送中のテレビ番組に関するツイートが急増する」という現象。先日のサッカー日本代表戦や、箱根駅伝などといった注目度の高いスポーツ中継はもとより、人気お笑い番組・アニメ番組などでもこの状況が見られることがあり、最近では番組公式ハッシュタグを用意される例まで出てきました。またTwitterの関係者自ら「ツイートの相当数がテレビに関連している」という発言をしていますし(参考記事)、また米国の人気テレビドラマ『ロスト』の最終回には、約48万件の関連ツイートが投稿されたというデータも出ています(参考記事)。

確かにいま見ているテレビ番組についてツイートする、また他人の関連ツイートを読むというのは、なかなか楽しい行為です。感動や笑い、驚きなどといった感情を共有したり、あるいは「このテーマが気になるならこのサイトを参照するといいよ」などといった情報が得られたり。『リアルタイムウェブ-「なう」の時代』の中でも、こんな風に表現してみました:

考えてみれば、私たちはかつて「お茶の間」という空間において、家族や友人たちと会話しながらテレビを見るという行為を普通に行っていた。ツイッター上で発言しつつ、一方で検索しながらテレビを見るというのは、例えるなら「バーチャルなお茶の間」を出現させる行為だと言えるだろう。

それでは「バーチャルお茶の間」をユーザーはどの程度望んでいるのか。ちょっと面白いアンケート結果が発表されています:

Survey: Only 25% Want to Share TV Habits With Friends (ReadWriteWeb)

タイトルの通り、「テレビ視聴歴を友人とシェアしたいのは25%に過ぎない」という調査が出たことについて。これを行ったのはSideReelという会社で、対象となったのは同社のサービス(テレビ番組の検索と視聴を容易化するというもの)を利用している1,800名のユーザー。従って母集団に偏りがある可能性もありますが、いろいろと面白い結果が出ています。

まずテレビ視聴歴を共有したいかという点ですが、今回の調査ではタイトルの通り25%という結果になっているものの、2009年に行われた同様の調査では50%という結果が出ていたとのこと。この下降が何を意味しているのか分析は行われておらず、原因が気になるところです。また番組を視聴中にリアルタイムで情報発信するか、もしくは友人達がそのような行動を行っていた場合にその情報を読むかという点については、「YES」と答えたのは10%のみだったとのこと。一方で「シェアする」という場合に使われるツールとしては、Twitterが第1位で、29%のユーザーが使用すると答えたそうです。

この結果をどう解釈するか。個人的には、「テレビ番組だからシェアしようとするのではなく、あくまでも楽しい体験をした時にシェアしたくなるのだ」という風に捉えています。自分が見ているテレビ番組の履歴全てを公開したいか?あるいはリアルタイムでツイートしたいか?と聞かれれば、僕もNOと答えるでしょう。年末年始ずーっとお笑い番組を見ていたとか知られたくないですし、日曜日の朝はオーズとプリキュアを欠かさず見ていることとかもちょっとマズイですし。しかし番組中のある瞬間であれば話は別です。思わず「笑い飯おめでとう!」とつぶやきますし(優勝ぐらいみんな気になるよね)、「ダークプリキュアだ!って娘も驚いてる!」というツイートも書き込みます(娘と一緒に見てるならいいよね)。そのように、やはり共有したい感情が表れたときに、共有したい形でシェアするのだというのがより正確な捉え方ではないでしょうか。

実際、同じくReadWriteWebの先日の記事(What Glee Means for Twitter & Television)でゴールデングローブ賞とツイートの関係が分析されているのですが、そこで以下のようなデータが公開されています:

gg_infographic_big_export

ゴールデングローブ賞関連のツイートは総計約30万件に上るのですが、テレビの放送時間中均等にツイートされていたわけではなく、非常に大きな波があることが現れています。当然ながらピークが発生しているのは、何か大きな発表があった瞬間。例えば『トイ・ストーリー3』がアニメーション映画賞に選ばれた瞬間には、2,958件のツイートが投稿されています。あの映画、文句なしに感動的でしたからね……。

ということで、ソーシャルメディアの時代だからといって「放っておいても視聴者がツイートしてくれて、番組を宣伝してくれる」などというのは幻想だということ。シェアしたくなる、あるいはシェアを容易にするような仕掛けを考えていかなければならないということ。当たり前の話ですが、上記の各種調査結果からは、こんな結論が導き出せるのではないでしょうか。

リアルタイムウェブ-「なう」の時代 (マイコミ新書) リアルタイムウェブ-「なう」の時代 (マイコミ新書)
小林 啓倫

毎日コミュニケーションズ 2010-12-25
売り上げランキング : 2793

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

【○年前の今日の記事】

Twitter の Dunbar's Number (2008年1月22日)
ビジュアル・デザインとソーシャル・デザイン (2007年1月22日)

Comment(0)