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iPhoneが家庭用エネルギー管理市場のスターになる日

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米アップル社といえば、1月27日に発表される(はずの)タブレット製品の噂でもちきりですが。一方で、こんな注目すべきニュースも流れてます:

アップル、家庭用エネルギー管理に関する2件の特許を申請 (YOMIURI ONLINE)

Appleは、コンピュータや周辺機器、「iPod」を含むさまざまな電子機器への電力供給を最適化することによって、電気料金を節約する手段を提供する2件の特許を申請した。2009年5月に申請されたこれらの特許は、Patently Appleが米国時間1月14日に取り上げ、解説している。

(中略)

例えば、消費者はオフピーク料金でガジェットを充電できるスケジュール設定方法について、アドバイスを受けることができる。あるいは、この電子機器制御装置は、設定した時間が経過した後、デバイスをハイバネーションモードに移行させることが可能になるかもしれない。

ユーザーは、液晶などのディスプレイやポータブルプロジェクタで、これらのタスクを制御したり、電力使用を監視したりすることも考えられる。人々のコンピュータやモバイルデバイスへの依存度が高まる中で、電力管理およびコストの問題の重要性は増している、とAppleは特許申請で主張している。

情報通信技術を活用して、家庭内にある様々な機器(家電製品やPC,オーディオ機器など)を一括で管理し、エネルギー使用量を最適化する「HEMS(Home Energy Management System、家庭用エネルギー管理システム)」という分野が存在しているのですが、今回明らかになった特許はHEMSを意識したものといって間違いないでしょう。対象となるのはアップルの周辺機器が念頭に置かれているようですが、いったん家庭内に入ってしまえば、そこで他の機器も管理したいと考えるようになるのが人間というものでしょう。そうなれば当然、この「アップル製HEMS」に対応する機器も増えてくるはず。

しかしいくらアップルだからといって、HEMS市場で勝ち目があるのでしょうか?ご存知の方も多いと思いますが、この分野には Google や Microsoft なども興味を示しており、関連製品をリリースしています。こうした競合他社に対してアップルが持つ優位性として、マイケル・カネロス氏がこんなことを指摘しています:

アップル、PLC関連の特許を申請--エネルギー管理分野参入への布石か (マイケル・カネロスの「海外グリーンテック事情」)

技術の独自性は、アップルが得意とする点ではない。同社が優れているのは、サードパーティが開発した要素技術を集め、それに気の利いたデザインを組み合わせて、まったく新しいものを創り出すことだ。iPodも、あるいは液晶画面を採用したiMacもそうした例で、これは重要なスキルだ。

ここにもう1つ付け加えるとするならば、iPod+iTunes や iPhone+App Store で見せたような、エコシステムを創り上げることの上手さでしょう。もちろん、こうした過去の成功が繰り返されるとは限りません。しかし「エネルギー管理」という、ともすれば地味な世界の中に、アップルが持つデザイン性や操作性・エンターテイメント性といった要素が持ち込まれる――ちょっとワクワクする話ではないでしょうか。

数年後。iPhone で今月の電気料金を確認して、ちょっと使い過ぎてるなと思ったら、iPhone 上からエアコンの設定温度を変えてみたり。あるいはEVの充電完了のお知らせを、同じく iPhone 上で通知してもらったり。そんな風景が日常的になるかもしれません。いや、こんな陳腐な想像をはるかに上回るような、便利で楽しい世界がそこに実現されているかも?いずれにしてもアップルが本格的にHEMS市場に参入するとなれば、その動きが業界に大きな影響を与えることになるのは必至ではないでしょうか。

【○年前の今日の記事】

YouTube が(検索サービスとして)Google を超える日 (2009年1月20日)

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