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なぜ若者は Twitter を使わないのか?

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インターネット上の流行は、技術に明るい若者たちによって生み出されるもの――そんな常識が当てはまらなかったのが Twitter です。各所での調査(一例)によって、Twitter のユーザーは大人たちが中心であり、十代の若者たちは少数派であることが明らかになっています。その理由については様々な説が述べられていますが、今日の New York Times の記事は必読でしょう:

Who’s Driving Twitter’s Popularity? Not Teenagers (New York Times)

若者たちが Twitter を使わない理由について、主なものがまとめられています。少し抜粋してみましょう。

まずは「若者は Twitter を必要としていなかった」説:

Similarly, Twitter did not attract the young trendsetters at the outset. Its growth has instead come from adults who might not have used other social sites before Twitter, said Jeremiah Owyang, an industry analyst studying social media. “Adults are just catching up to what teens have been doing for years,” he said.

Many young people, who have used Facebook since they began using the Internet and for whom text messaging is their primary method of communication, say they simply do not have a need for Twitter.

同様に、Twitter は当初、流行に敏感な若者たちを惹きつけなかった。その代わり、それ以前にはSNSを使ったことのなかった大人達によって Twitter の成長がもたらされた、とソーシャルメディアに詳しいアナリストの Jeremiah Owyang は言う。「大人達は単に、十代の若者たちがずっと前からしていたことに追いつこうとしているのです。」

多くの若者はインターネットを始めた時から Facebook を使っており、テキストメッセージが主要なコミュニケーション方法なので、単に Twitter を必要としていないのだ。

確かによく考えてみれば、携帯電話によるテキストメッセージ、Facebook などのSNSサイトと比べた場合、Twitter は後発サービスでしかないわけですね。なので最初からこれらのサービスやツールを使っている若者は Twitter に関心を示さず、逆に経験のなかった大人たちが手を伸ばした、と。

実際、Forrester Research がこんな調査を発表しているようです:

Almost everyone under 35 uses social networks, but the growth of these networks over the last year has come from older adults, according to a report from Forrester Research issued Tuesday. Use of social networking by people aged 35 to 54 grew 60 percent in the last year.

火曜日に発表された Forrester Research のレポートによると、35歳以下の人々はほとんどがソーシャルネットワークを使っているが、最近のネットワークの成長を促しているのはより高齢の大人たちである。昨年、35歳から54歳までの人々によるSNSの利用は60%増加した。

次に「若者の生活スタイルとは合わなかった」説:

Another reason that teenagers do not use Twitter may be that their lives tend to revolve around their friends. Though Twitter’s founders originally conceived of the site as a way to stay in touch with acquaintances, it turns out that it is better for broadcasting ideas or questions and answers to the outside world or for marketing a product. It is also useful for marketing the person doing the tweeting, a need few teenagers are attuned to.

十代の若者が Twitter を使わない別の理由は、彼らの生活は周囲にいる友人たちとの交流が中心であるという点である。Twitter の創業者たちは、このサービスが知人との交流に使われることを想定していたが、ふたを開けてみればアイデアを発信したり、世界に向けて質問を投げかけたり、それに答えたり、製品のマーケティングを行ったりといった使い道の方が適していることが分かった。

この説を唱えている人も多いようですね。確かにいま僕が高校生ぐらいだったとしたら、Mixi やモバゲー(もしくは大人たちが知らないようなSNS系サービスとか)あたりで「実生活でも友人関係にある」友人たちを中心とした交流を行うことで満足しているでしょう。ただしこの理由の場合には、Twitter は将来を悲観しなくて良いようです:

Wendy Grazier, a mother in Arkansas, said her two teenaged daughters thought Twitter was “lame,” yet they asked her to follow teenage pop stars like Miley Cyrus and Taylor Swift on Twitter so she could report back on what the celebrities wrote. Why won’t they deign to do it themselves? “It seems more, like, professional, and not something that a teenager would do,” said 16-year-old Miranda Grazier. “I think I might join when I’m older.”

Arkansas 州に住む Wendy Grazier は2人の娘を持つ母親だが、彼女の娘たちは Twitter を「退屈」と表している。しかし母親に Miley Cyrus や Taylor Swift のようなポップスターを Twitter でフォローして、何が書き込まれているかを教えてくれるように頼んでいる。なぜ自分でしようとしないのか?16歳の Miranda Grazier はこう述べている:「何か少し専門的な感じがして、若者がするようなものじゃないように感じるから。もっと大人になったら始めるかもね。」

またもう1つ重要な理由として、「プライバシーのコントロールができないから」説も紹介されています:

The public nature of Twitter is particularly sensitive for the under-18 set, whether because they want to hide what they are doing from their parents or, more often, because their parents restrict their interaction with strangers on the Web.

Georgia Marentis, a 14-year-old in Great Falls, Va., uses Facebook instead of Twitter because she can choose who sees her updates. “My parents wouldn’t want me to have everything going on in my life displayed for the entire world,” she said. (Of course, because of the public nature of social networks and the ease of creating a fake identity on the Web, even sites with more privacy settings have proved dangerous for young people in some cases.)

Twitter が開放的な性質を持つという点は、特に18歳以下の若者にとって問題をはらんでいる。彼らは自分の行動を親には隠しておきたいと考えたり、ネット上で見知らぬ人々と交流することを親が制限していたりするからだ。

バージニア州 Great Falls に住む14歳の Georgia Marentis は、Twitter の代わりに Facebook を使っている。彼女のアップデートを誰が閲覧できるのか、彼女自身が設定できるからだ。「私の生活の全てを世界中にさらけだすなんて、親は認めないと思う」と彼女は言う。(もちろん Twitter に限った話ではなく、ソーシャルネットワークは開放的な性質を持つものであり、ウェブ上では偽のアイデンティティを作るのが簡単なこともあって、もっとプライバシー設定が充実している他のサイトでも若者が危険な目にあうというケースが発生している。)

「若者の生活スタイルと合わなかったから」説と似ていますが、そちらがそもそも交流の範囲を広くする必要がないという話であるのに対して、こちらは様々な理由(親から隠れたい、犯罪者と接触する危険を避けたい等)から交流の範囲を塀で囲ってしまいたいという話ですね。もちろん Twitter もメッセージを非公開にすることはできますが、それではクローズドなSNSに参加しているのと変りはなく、Twitter でなければならないという理由は薄れるでしょう。

……と、少し長くなりましたが、それぞれに説得力のある説だと思います。当然ながらどれか1つが正解というわけではなく、それぞれの理由が組み合わさって「Twitter には若者が少ない/大人が中心となっている珍しい流行サービス」という状態をつくり出しているのでしょう。

問題は今後どうなるのか。仮に「若者は別のサービスを使っているから」説が強いとしたら、今後は Facebook などのサービスが主流派になっていくことでしょう。逆に「子供の生活スタイルとは合わないから」であれば、単に彼らが社会人になるのを待てば良いということになります。個人的には無理に若者を取り込もうとする必要はなく、仮にニーズがあればサードパーティーが関連ツール/サービスを提供するようになると考えているのですが、果たして今後 Twitter のユーザー構成はどうなっていくのでしょうか。

【○年前の今日の記事】

ジョージ・オーウェル、ブログを開始 (2008年8月26日)

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