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防犯は省エネと相性が良い?

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家庭内での電力消費を簡単に把握できるようにして、省エネ行動を促そうという動きが盛んになっています。様々な管理機器やソフトが登場しつつありますが、Google も「PowerMeter」というガジェットを提供していることをご存知の方も多いでしょう(ITmedia での参考記事)。しかしいくら省エネが消費者にとってもお得な話だからといって、管理機器や管理ソフトに対して積極的にお金を払おうという人ばかりではありません。それでは電力会社に効果を訴え、彼らの負担で機器/ソフトの配布を行ってもらえるように説得するのも難しい……ということで、面白い戦略に出た企業が登場しているようです:

ホームセキュリティ企業に投資したクライナー・パーキンスの思惑 (マイケル・カネロスの「海外グリーンテック事情」)

米国に iControl という会社があり、「エネルギー消費量の監視サービスを、セキュリティ監視サービスの追加メニューとして提供している」とのこと。彼らに対して、iFund の運営でも有名な米国のベンチャーキャピタル Kleiner Perkins Caufield & Byers が出資したのですが、その狙いが以下のように解説されています:

家庭でのエネルギー管理分野をターゲットにするベンチャー企業各社はある決断を迫られる。投資家や起業家が重大な難問と認識するこの決断とは、管理用機器の製造コストの一部をユーティリティ企業が肩代わりしてくれるのを待つか、それとも消費者に自腹を切って機器を買うよう訴えるか、というものだ。

この点に関して、クライナー・パーキンス・コウフィールド・バイヤーズ(Kleiner Perkins Caufield & Byers。以下、KPCB)のパートナー、エレン・パオ(Ellen Pao)氏は、消費者のセキュリティへの関心というルートを経由すれば省エネへの関心も開けてくるとの考えを持っている。

(中略)

「消費者は自宅でのエネルギー消費量を監視し抑制するためだけに数百ドルも支払うつもりはないと判った。短期間でベネフィットを実感できないとお金を出さない」(パオ氏)

いっぽう、ホームセキュリティに対しては「消費者は新しい技術に数百ドルを注ぎ込む。また安心を求めてセキュリティサービスにひと月30〜40ドルを払う。つまり、この"トロイの木馬"を利用することで、エネルギー管理用の新しい技術を家庭に持ち込めることにわれわれは気付いた」と同氏は付け加えた。

「トロイの木馬」というとちょっとネガティブな印象になってしまいますが、要は消費者が「ここならお金を出しても良い」という分野でうまくバンドルを進めることで、省エネツールの導入を進めようと。また防犯サービスであれば「家庭に出向いて機器を設置する」という能力を享有できますし、さらにサービスを統合できれば別々の会社に出向いて契約する必要が無くなりますから、心理的抵抗感という点でも優れた戦略だと思います。日本だとセコムが「ご家庭のエネルギー無駄使いも監視します!」などといったサービスをスタートさせるようなものですが、彼らも新しいサービス展開に積極的に乗り出していますから、あり得ない話ではないかもしれません。

もちろん将来的に環境意識が高まれば、エネルギー管理の方が「キラーアプリ」となって、防犯・防災が付加的なサービスとなっていくかもしれません。あるいはスマートメーター単体で導入される、というケースも増えるでしょう。しかし当面は(政府や電力会社が実験として無償導入するようなケースを除き)上記のように、既に家庭にリーチしている別のサービスにエネルギー管理が乗っかる、という導入の方が可能性が高いように感じます。近い将来、家でくつろいでいると防犯会社から電話がかかってきて「電力消費が異常値を示しています!何かスイッチをつけっぱなしにしていないか確認して下さい」と警告してくれたり、あるいは不在中に切り忘れたスイッチを自動で切ってくれる、なんてサービスが始まったりして。

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