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「発展空間」

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発展空間。中国語でキャリアパスを示す言葉なのだそうですが、ある調査報告書で使われているのを読んで、この言葉を知りました。

「発展する、発展できる」「空間、余地」。本来の中国語からは離れてしまうかもしれませんが、日本語で読むと、そんなイメージを連想させます。元々の「キャリアパス」が文字通りパス(path)、道であるのに対して、「発展空間」の方は様々な方向に向かっていける、可能性のようなものを感じさせないでしょうか?分岐のない一本道を延々と進まされるのではなく、大空を自由に羽ばたく――言葉遊びと言われてしまうかもしれませんが、この言葉を初めて聞いたとき、そんな違いを感じました。

少し前に話題に「クリエイティブ経済」という発想が話題になりました。日本では売り込み方法で失敗したせいか?バズワード的な扱いをされてしまったように感じているのですが、『クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭 』では今後の人々の働き方について、様々な示唆を与えてくれています。この中で、こんな一節が登場します:

会議のあと、私はカーネギーメロン大学公共政策学科の一年生にこの問題について説明した。そして、彼らに「きみたちに選択できる職業が二つしかないとすれば、高級で、一生続けられる工場、または低い給与で景気変動の影響を受けやすい美容室のどちらで働きたいか」と質問したのである。のちに、同じ質問をアメリカ中でも投げかけてみた。

幾度となく同じ質問を繰り返したところ、ほとんどの人が美容室と答え、その理由は常に同じだった。もちろん美容室の給与はそれほどよくないが、環境はより刺激的である。柔軟で、清潔である。工場でノルマを果たすために必死に勉強し、自分を監視している上司とスケジュールを合わせる代わりに、美容室では顧客と会うスケジュールを決められるだけで、その後は干渉されることはない。おもしろい人々と共に仕事するようになり、常に最新の流行という新たな物事を学べる。仕事に自分ならではの手法を加えるようになり、クリエイティブな決断を下すようになる。

重ねて、本来の「発展空間」という中国語の単語からは離れてしまうかもしれませんが、僕は従来の「キャリアパス」は上記の工場で働くイメージ、「発展空間」は美容室で働くイメージに近いと感じました(もちろん工場と美容室の実態がどうなのか、という話は別にして)。タスクとルールが決められた一本道を歩く仕事と、様々な可能性が詰まった平野を自分の意志で歩ける仕事。仮に給料が低かったとしても、後者に魅力を感じる人が増えているわけですね。

個人的にも、「パス」ではなく、「空間」を感じさせるような仕事には魅力を感じます。具体的にそれがどういったものなのか、どんな要素があれば「キャリアパス」ではなく「発展空間」を感じて貰えるかという議論は当然する必要があると思いますが、これからはキャリアパスではなく「発展空間」を用意してあげることが企業に要求されてくるのかな――と感じた次第です。

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