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歴史を語る拡張現実

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「電脳コイルのような」という形容詞ですっかりお馴染みになった、拡張現実(AR)という概念。様々なサービスが具体化され始めていますが、雑誌『Pen』の10月15日号に、ドイツ・ベルリンでの意外な利用法が紹介されていました。

その利用法とは、「壁ガイド(MauerGuide)」。ベルリンで壁といえば大体想像はつくかもしれませんが、その名の通り、ベルリンの壁を案内してくれるというサービスです。東西冷戦の象徴であり、同時に終結の象徴ともなったベルリンの壁ですが、崩壊から早くも19年。現在は解体が進み、痕跡すら残っていないという場所も多いのだとか。そこで登場したのが、GPS搭載端末を使ったサービス「壁ガイド」です。ベルリン内にある5つの貸し出し所で端末を借り、適当な場所で操作すると

現在位置を即時に割り出し、最寄りの「壁」をナビゲートしてくれる。しかし、それだけではない。壁の跡地まで来ると、当時の写真やビデオ、時代の証人たちの肉声が流れる。たとえば、ベルナウワー通りでは、親が東側にいたため、壁の横で結婚式を挙げた女性が登場。壁の東側のビルの窓から、西側へと花束を投げる親の姿が画面に映る。

とのこと。最近では日本国内でも、美術館や動物園の施設内ガイドとしてマルチメディア端末を活用するという事例が出始めていますが、それを屋外まで拡張したのが「壁ガイド」だと言えるでしょうか。いま自分が実際に訪れている場所で、数十年前に起きた出来事が再生されるわけですから、心に残るものは大きいでしょう。

ちょうど AFPBB News にも写真付きの記事がありましたので、より詳しく知りたいという方は以下のリンクを参照してみて下さい:

ベルリンの壁の歴史を再現、ドイツ旅行者必携の観光ガイド (AFPBB News)

もちろん遊びのためや、実生活で使える情報を得るための拡張現実というのも有意義な存在ですが、こうして歴史を学ぶために使うというのも面白い発想ですよね。例えば東京都内で働く・学ぶ人のために、「江戸時代に海だったエリアに入ると波の音を出す携帯アプリ」なんてのはどうでしょうか。ご存知の通り、江戸時代の東京湾の海岸線は、現在よりもずっと内陸に位置していました。ふとした瞬間に潮騒が聞こえてきて、「ああ、この辺も海だったんだなぁ」と感じられるという……とまぁこの良し悪しは別にして、学校の教材にも使えるような拡張現実、今後増えてくるかもしれませんね。

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