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Kindle が大学のテキストに使われ始めている件

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誰もが半ば予想していたことかもしれませんが、ソニーと松下が電子書籍事業からの撤退を決めたそうです:

電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退 (ITmedia News)

利用するにはネット+専用の端末が必要で、端末の価格は決して安くなく、さらに流通している電子書籍の数には限りがある……となれば、成功する方がおかしいというもの。ただし記事でも指摘されている通り、携帯電話向け電子書籍市場が成長しているそうですから、電子書籍という分野に魅力がないわけではないでしょう。他にもニンテンドーDSやPSP等で読める電子書籍/コミックも増えていますし、端末の問題はいずれクリアされると思います。

それではどんな場面から電子書籍が一般化していくのか。先日、こんな記事が目に留まりました:

University Presses Start to Sell Via Kindle (Inside Higher Ed)

ご存知 Amazon が手がける電子書籍端末"Kindle"向けに、大学用のテキストを出版する動きが出ているというニュース。と言うだけで詳しい説明は不要でしょうが、確かに大学生の頃って、人生のなかで最も本を持ち歩く時期かもしれませんよね。特に米国の大学では大きくて分厚いテキストが使われることがあり、僕も留学中にヒーヒー言いながら持ち歩いていた思い出があります(特に会計やファイナンス系のテキストがやたら重かった記憶が)。それが小さな端末に収まるというのであれば、喜んで電子書籍に乗り換えるでしょう。実際、Kindle 版の方が何倍も売れたというテキストが出始めているとのこと。

また大学のテキストの場合、授業が終わったらほとんど使わない/他人にあげてしまう場合も多いという特性(?)があります。電子書籍であれば、利用者にとっては「使い終わった後でも保管場所を取られない」という利点が、出版社にとっては「転売や譲渡による機会損失を防げる」(特に Kindle の場合、コンテンツが容易にコピー/転送されないような仕掛けが施されています)という利点があるでしょう。ただし電子版の方の値段を安くしておかなければ、「後で後輩に売って元手を取り返せるから、持ち運びは大変だけど紙版を買おう」、あるいは「紙版を1冊買ってコピーして、何人かでシェアする方が安い」などと考える学生が出てきそうですが。

もちろん「僕はテキストにメモを書き込むタイプだから、電子書籍はちょっと」という学生もいるでしょうから、大学のテキストがすべて電子書籍に置き換わる、ということは考えにくいと思います。しかし電子書籍の特性が活かされる可能性が高いという点では、大学テキストという分野は有望ではないでしょうか。さらにここで電子書籍に触れた若者が、今後電子書籍の有力な利用者として成長する――という効果も期待できるかもしれません。そういえば先日、中学の英語授業にニンテンドーDS活用というニュースもありましたが、教育分野とデジタル端末という組み合わせは相性が良いかもしれませんね。

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