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消費者不在の『逃亡者』

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著作権やライセンスの問題から、DVD化されたTV番組の内容が放映時と若干異なる……という話は珍しくないと思いますが(個人的にはタチコマのドナドナが最初に頭に浮かびます)、アメリカでこんな騒動が持ち上がっていたそうです:

往年の人気ドラマ「逃亡者」DVDにファンの批判集中 (Variety Japan)

ハリソン・フォード主演で映画化されたことでも有名な『逃亡者』。このシーズン2のDVDが今月発売されたそうなのですが、劇中で使用された音楽がテーマ曲を除いてすべて差し替えられていたため、ファンからの非難を浴びているそうです。

「逃亡者」に関して言えば、シーズン1のときは大きな問題がなかった。作曲家とは買い取り契約を交わしていたため、劇中で使用された楽曲は、制作側が権利を保有していたためだ。

しかし、シーズン2になると、オリジナル楽曲のほかに、ライブラリー音源が頻繁に使用されている。

ファンからの抗議を受けて、CBSホーム・エンタテイメントは以下のように釈明している。
「シーズン1とは異なり、シーズン2には大量の劇中音楽があり、しかも、そのほとんどの権利者が不明です。ですから、オリジナルのテーマ曲はそのままにしましたが、つなぎ目のないドラマ体験をみなさんにお届けするために、すべての音楽を新しいものに差し替えることにしたのです」

とのこと。権利関係がクリアにならなかったため、やむなく……という措置のようです。

その辺りの難しさは理解できるとしても、「CBSパラマウントは、DVDのパッケージに音楽を変更した旨を明記していなかった」というのはいただけません。黙っていれば分からないと思ったんだろ、と言われても反論できないでしょう。また「音楽など些末な部分で、映像に手を入れなければ文句はないはずだ」という意識もあったのかもしれません。

言うまでもなく、ファン=消費者にとっては音楽も合わせて大切な作品です。デジタルリマスターなどの形で映像の劣化を補うだけでも抵抗を感じる人がいるのですから、オリジナルに手を入れるのはリスクであるということを理解すべきでしょう。ただ、権利関係が片付かなくていつまでも過去の作品が日の目を見ない、というのもファンにとっては歓迎できない事態です。出せないならば出せない理由を、一部を変えて出すなら変えた理由を明確にすべきだと思います。

要は「消費者重視」という姿勢を忘れないこと。自分がファンだったら、想い出の作品をどう取り扱って欲しいか?という視点で考えてみるという、ごく簡単なことだと思います。最近は権利者団体も「消費者重視」という言葉を使うぐらいですから、実行に移すのは簡単なはず……なのですが、どうも「消費者を楽しませる」という視点が抜け落ちがちなような。新しい作品をリリースするときばかりでなく、過去の作品を再び世に送り出す際にも、消費者の方を向いて欲しいものです。

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