外来種を増やそう!
ある環境に固有の生物ではなく、外部から持ち込まれた生物――外来種がその環境の生態系を破壊する、という問題が起きているのはご存知の通り。日本でも外来生物法という法律が制定されており、海外の動植物が勝手に持ち込まれることのないよう厳しく監視されています。しかし生物ではなく、アイデアの世界での話なら、外来種は歓迎されるべき存在になる可能性があります。
生物の場合、外来種が在来種を圧倒してしまう原因の1つとして、「天敵がいない」ということが挙げられます。通常の生態系は長い時間をかけてバランスが築かれたものですから、まったく新しい存在が突然やってきても、それに対抗する存在が出てくるのには時間がかかるわけですね。
例えば問題を起こしている外来種の典型例として知られるブラックバスの場合、あらゆる生物にとって最大の天敵である「人間」になぜ食べ尽くされてしまわなかったのかというと、日本では「生臭くて料理に向かない魚」というイメージがあるからなのだとか。しかしこれは日本人が誤解しているだけで、海外では食用として普通に食べられているそうです。ブラックバスの問題を解決するためには、長い年月をかけて生態系のバランスを元に戻そうとするよりも、日本人に「ブラックバスはおいしい魚」というイメージを広めてしまうのが有効かもしれません(実際、そのような活動を行っている方々がいらっしゃるようです)。
余談はさておき、この「保たれているバランスを崩す」という力、ある環境の内側から出てくることを期待するのは難しいでしょう。その環境を構成する存在たちは、既にバランスを保つものとして組み込まれてしまっているわけであり、変化といってもゆるやかなペースで進むことしか期待できません。「突然変異」という可能性もありますが、あくまでも「突然」という偶然性に期待するものであり、積極的に変化を起こしたい場合には別の手法が必要になるでしょう。そこで期待できるのが、その環境の外にいる存在――外来種です。
生態系のバランスを崩すのは問題ですが、ビジネスで新しい展開が求められている場面なら話は別です。他の業界や業種、他の国々や世代といったところから、どんどん外来種を輸入してしまって良いのではないでしょうか。その際、ある世界で大成功している存在、つまり生態系のトップにいる「生物」だけに注目する必要はありません。トップに立つ存在は、その環境に完璧に適応してしまっており、他の環境では意外に脆かったりする可能性があります。例えば米国ではコイが生態系を破壊するとして問題になっているように(日本におけるブラックバスとは逆のパターン)、元の環境では目立たない、ありふれた存在の方が意外な強さを発揮するかもしれません。
昨日から、早くも5月になりました。4月から新しい環境にいるという方、「なんだかこの環境にはなじめないな……」と感じていたとしても、どこかでバランスを崩すチャンスがあるはずです。周囲にいる方々も、「外来種」によって混乱が起きることを疎んじるのではなく、積極的に活用することを考えていって欲しいと思います。