「子供たちのメール依存度が高まっている」に感じる違和感
日本PTA全国協議会が発表した意識調査結果をめぐり、「子供たちのメール依存度が高まっている」という意見が出ています:
■ 携帯持つ中学2年生、4割近くがメールを1日20通以上 (YOMIURI ONLINE)
「深夜でもメールをする」とした生徒は51%、「メールの返信がないととても不安になる」も24%に上り、調査結果を分析した千葉大教育学部の明石要一教授は「子供たちのメール依存度が高まっている」と指摘している。
ちなみに元となった調査結果はこちら:
■ 子どもとメディアに関する意識調査 調査結果報告書 平成20年3月
昨年11月、小学5年と中学2年の計4,800人を対象に行われた調査です。メディアで取り上げられている箇所以外にも、興味深い内容がいくつも含まれていますので、お時間のある方はご一読を。
で、確かに調査結果を見ると、「1日のメールの送受信数」(※送信数、ではない)は「21通以上」と回答した中学2年生の合計が37.3%となっています(ちなみに小学5年生では7.8%)。「深夜でもかまわずメールのやりとりをしてしまう(ことがある)」という問いに「ある」と答えた中学2年生は51.4%(同じく小学5年生では11.2%)、「メールの返信がないととても不安になる(ことがある)」という問いに「ある」と答えた中学2年生は24.3%(同18.0%)という数字になっています。
ただこれら結果が示されているのは今回の調査(平成19年度)だけで、過去の推移がどうなっているのかは分かりません(ちなみに他の設問では、平成18年度の結果が示されているものもあります)。また他の年代、例えば高齢者層などのメール利用状況と比較しているわけではありませんから、これだけで「子供たちがメール依存度を高めている」と言うのはやや先走り過ぎではないでしょうか(他の調査結果や、ここには現れていない過去のデータを参照しているのであれば別として)。
また携帯メールという通信手段しか持たない子供たちが、送信・受信合わせて21通以上メールをやり取りするというのはさほど異常とも思えません(「うん」「そうだね」とか短いメールもカウントしているのであれば特に)。メールという手段を通じてであるかどうかは別にして、誰にだって「大事な告白をしたのに、返事が返ってこなくて不安になる」という経験はあるでしょうし、夜中に友達と盛り上がるのは楽しいものです。だからと言って無秩序にケータイを使っていいという訳ではありませんが、「依存」というレッテルを貼ってしまうのには注意が必要でしょう。
それよりも、僕は別の結果に不安を感じます。「親子の間で、携帯電話やPHSの使用内容について話しているか」という問いに対し、子供の側(中学2年生)で「よく話している」「時々話している」と回答したのは合わせて46.4%。ところが保護者の側で同じく「よく話している」「時々話している」と回答したのは、合わせて84.8%になっています。「よく」「時々」の定義の曖昧さはありますが、このギャップは注目に値するのではないでしょうか。さらに携帯電話の使用内容について「ほとんど話さない」という親の割合は、平成18年度の9.3%から12.7%に増加、「時々話す」という割合は56.5%から53.2%に低下しています。
メール依存度云々を議論するのであれば、親たちの理解不足・無関心の方にも注意すべきではないでしょうか。でないと、いたずらに「子供たちが悪いことをしている!」と煽るのは過剰な反応を引き起こす危険があると思います。ちなみに、ITmedia でこんな記事があったことを指摘しておきます:
■ 子どもの掲示板やSNS利用、ネット苦手な親ほど心配 (ITmedia News)
< 追記 >
関連ですが、こんなニュースもあります:
■ 教育再生懇中間報告案、小中学生に携帯持たせず (NIKKEI NET)
政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応塾長)が6月にまとめる中間報告の素案が15日、明らかになった。有害情報から子供を守る観点などから、小中学生に携帯電話を持たせないことを提言。
とのこと。フィルタリング云々がさらにエスカレートして、そもそも持たせなけりゃ良くね?という話が出ているようです。政治家が言ってるから、という親は少ないでしょうが、よく分からないから取り上げちゃえという親が増えないことを願います。