初音ミクは国立新美術館の夢を見るか?
CGMという言葉が(少なくともIT系メディアの中では)定着し、文章や画像、映像といったコンテンツを普通の人々が作り出す時代になりました。中にはプロ級のクオリティを誇る作品も登場し、日夜私たちを楽しませてくれているのはご存知の通り。それではCGM上で作り出されたコンテンツが、アートとして美術館で展示されるという時代はやってくるのでしょうか?
CGM上で作り出されたコンテンツが、別の場所・別の形で消費可能になるという現象は既に起きています。例えば「ブログが本になる」などというのはその最たる例でしょう。また至近な例で恐縮ですが、妻が某所に旅行写真をアップしておいたところ、(同意の上で)雑誌に掲載されたりカレンダーの一部に使われたりということがありました。そう考えれば、例えば Flickr にアップされている写真を出力・額装して東京都写真美術館に展示、などということが起きるかもしれません(もちろん著作権関係をクリアにした上で)。
しかしそれより一歩進んで、誰が作ったのか明確に区別できないようなコンテンツがアートとして展示される、というケースは起きうるでしょうか?既に『電車男』などのように、作者が明確になっていない(明確にできない)場合でも、元々のコンテンツが書籍化・映像化されるケースは出てきています。それと同じ構図で、例えば「初音ミク」をテーマにした映像や画像、漫画やフィギュアなどを集め、展示室で見てもらう――などという可能性はあるでしょうか。
当然ながら、「ネット上でいつでも・誰にも見れるようになっている映像を、わざわざ展示スペースという物理空間に閉じこめる意味はない」という議論もあるかもしれません。しかしただの便器が「アート」として展示されるだけで、まったく違った意味が付与されるようになるように、あえて展覧会というカタチをとることで、まったく別の次元が開けてくるかもしれません。もちろん単に入場料を稼ぐためだけに、ネット上にある無料のコンテンツが利用されるなどということがあってはなりませんが。
ふと「アートとCGM」という関係が気になり、実験的に文章にまとめてみました。個人的には、何年か後に「初音ミク展」のような話がどこかで出てくるように感じています。