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「仕事のイメージが悪い」で済ませていいのか

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情報処理推進機構(IPA)が発表した報告書と、それに対する IPA 理事長のコメントが波紋を呼んでいます:

IT企業、新卒採用苦戦の理由は「仕事のイメージが悪い」 (@IT)

IT人材についての実態調査の中で、IT企業が「新卒採用の課題」として挙げた回答で最も多かったのが「業界の仕事のイメージがよくない」だったとのこと。これについて IPA 理事長の藤原武平太氏が、次のようにコメントされています:

IT業界の仕事のイメージについて「3K、5K、7K、10Kなど私自身は根拠がないと思っていることが、面白おかしく伝わっている。

またIT業界のイメージアップについては

別の調査ではエンジニアの3分の2近くが仕事に意義を感じている。業界として、トップからもそういうことを発信していくべきと思う

と語られたとのこと。これに対し、はてなブックマークのコメントなどで「実態が分かっていない」「(厳しい実態があることを)認めるとマズイから認めないのでは」等の反論が起きています。

個人的な経験で言えば、という前置きをさせていただいた上で、「根拠がない」というのはさすがに言い過ぎでしょう。「他に労働条件が過酷な業界なんていくらでもあるじゃないか、なんでIT業界だけやり玉に挙げるんだ」と言うのならまだ分かりますが(だからと言って問題を解決しなくて良いという意味ではありませんよ)、デスマーチと呼ばれるような状況で働かざるを得ない人々は確実に存在しています。それでも根拠がないと言うのなら、データを挙げて反論すべきでしょう。

それよりも疑問に感じたのは、「エンジニアの3分の2近くが仕事に意義を感じている、だからイメージを変えていけばいいのだ」というロジックです。普通、「仕事に魅力を感じている人は多い、しかし業界に入ってこようという人は少ないという」状況を前にしたら、

問題があるのは仕事内容ではなく、企業の姿勢なのだ

と考えるべきではないでしょうか。仕事に意義を感じれば、人はどんな会社でも喜んで働くなどということはあり得ません。仮にいくら仕事内容に対する理解が進んだとしても、企業の体質が変わらないのであれば、IT業界を目指そうという人が増えることはないでしょう。

個人的にも、ITの仕事に携ることは非常に魅力的だと感じています。だからこそ、悪質な企業によってエンジニアが酷使されるような現状はなくなって欲しいと願います。政府や業界団体がすべきは、「イメージを矯正すること」などではなく、実態を正確に把握してその改善に地道に努めることではないでしょうか。

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