オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

美術としての怪獣

»

Photo いきなりですが、この写真に写っているもの、何だか分かりますか?僕と同年代の方であれば、一目瞭然だと思うのですが……そう、ウルトラマンに登場した怪獣・ジャミラです!実は今日まで三鷹市民ギャラリーで開催されていた、『怪獣と美術-成田亨の造形芸術とその後の怪獣美術-展』(ウェブ魚拓はこちら)に行ってきました。これは会場ロビーに掲げられていた、垂れ幕に印刷されていたジャミラ。子供の頃、服の丸首の部分を頭のところにまで持ってきて「ジャミラだよー」とか言って遊んだものです(恥)。

「怪獣と美術?怪獣なんて子供番組に登場するものだろ、どこがアートなんだ?」と思われた方は、まずは先入観を捨てて、成田亨さんがデザインした怪獣たちを眺めてみるのをお薦めします。このジャミラを始めとして、その発想や造形美の素晴らしさというものに気づかれるのではないでしょうか。また成田さんの後を継いで「ウルトラセブン」の怪獣デザインを手がけた池谷仙克さんの作品など、初期のウルトラマンシリーズに登場した怪獣には魅力的なものが数多くあります。

また怪獣だけではなく、ウルトラマンの姿を思い出してみて下さい。子供の頃から見慣れてしまっているので、改めて意識しないかもしれませんが、あれほど奇妙な造形もありません。のっぺりとした表面、抽象絵画のような模様、そして仏像のような微笑み――実際、ウルトラマンをデザインする際に、「本当に強い者は微かに笑う」という発想からアルカイックスマイルが取り入れられたのだそうです。このエピソードだけでも、ウルトラマンとそれに登場する怪獣たちが「子供騙し」でデザインされたのではない、ということが分かるのではないでしょうか。

ちなみに成田氏は、「怪獣とは何か」を追及し、以下のような「怪獣三原則」を持ってデザインに臨んでいたそうです:

  1. 既存の動物を映像演出の効果だけで巨大に見せることはしない。
  2. 人間と動物、動物と動物を合体する表現は使っても、奇形化はさせない。
  3. 身体に傷をつけたり、血を流させたりするような、生理的に不愉快のものにしない。    
    (以上、『怪獣と美術』展の図録より抜粋)

残念ながらその後、怪獣デザインは「子供騙し」的な方向に進んでしまい、成田氏はそれを批判していたとのこと。またハリウッド映画などの影響もあり、SF作品の敵役というと単にグロテスクなもの・不快なもの(成田氏が言うところの「お化け的」怪獣)が普通になってしまいました。その意味で怪獣デザインの全てが評価に値するものではありませんが、成田さんらが進めた「怪獣という枠組みの中で、まったく新しい存在を作り出すという姿勢」には、学ぶものが大きいのではないかと感じました。

残念ながら東京展は今日で終わりだったのですが(もっと早く行っておけば良かった!)……場所を栃木県足利市の足利市立美術館に移して、11月3日から12月24日まで栃木展が開催されるそうです。チャンスのある方は、ぜひ足を運んでみて下さい。

< 追記 2007.10.22 >

日経のサイトで紹介記事が出ていましたので、リンクを張っておきます:

ウルトラ怪獣の父、成田亨の仕事展 (日経WagaMaga)

Comment(8)