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誰に買ってもらいたいのか?

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実は昨日参加したイベントがもう1つ。アジャイルメディア・ネットワークの「ウイルスバスター・ブロガーミーティング」にお邪魔してきました。その名の通り、トレンドマイクロさんのアンチウィルスソフト「ウイルスバスター」をテーマに語ろうという企画で、まもなく発売となる「ウイルスバスター2008」を一足早く体験。さらに普段は公開されない(なんと記者や企業向けではない、一般人向けの見学会としては初めてとのこと)リージョナルトレンドラボまで立ち入らせていただけました。

ウイルスバスター2008の目玉機能としてご説明いただいたのが、「Webからの脅威」への対策。いわゆる不正サイトにアクセスした結果、ウィルスやボットなどを仕込まれてデータが破壊/盗難されるなどといった事態に対抗するため、「Webレピュテーション技術」を活用しているとのこと。これは従来のURLフィルタリングから進化した技術で、「怪しいサイトかどうか」を判別するためにサイト内のコンテンツを調べるだけでなく、そのサイトがリンクしているサイトの安全性/そのサイトにリンクを張っているサイトの安全性/サーバの登録年月日など、いわば「メタデータ」も含めて調査するというもの。デモとして、検索エンジンの結果一覧画面において、サイトへのリンクを安全度に応じて緑・黄・赤の3色で表示するという「Trend プロテクト」などの機能を見せていただきました。

トレンドマイクロさんは、この「Webレピュテーション技術」を差別化要因の1つとして考えておられるようで、ディスカッションのテーマとして「『(Webレピュテーション技術が防御する)Webからの脅威』をどのように消費者に理解してもらえば良いか?」という問いがなされていました。うーん、そうした啓蒙活動って確かに重要なことなのですが……実際に交通事故にあったことのない人に、「交通事故って恐いんだよ」といくら説明しても「ふーん、オレは気をつけてるから大丈夫」と耳を傾けてくれないように、一朝一夕で効果が出るアイデアって難しいですよね。また出席者の方々からも指摘がありましたが、ウィルス対策ソフトって、「ウィルス退治の性能」だけで人気が決まるのではないという点も難しいところ。つまり「動作が軽い」「メンテが手間いらず」「操作しやすい」「(どーせ必要悪だから)とにかく安い」などなど、本当は二次的であるべき要因が購入を左右してしまうわけです。だとしたら、手間ヒマのかかる啓蒙活動などやめて、「安い」「使いやすい」といった点にフォーカスするのも手なのかも……。

しかし、トレンドマイクロさんの強みが「リージョナルトランドラボを東京に置くなど、とにかく新しいウィルスをいち早く検知して手を打つ」という技術力にあるのだとしたら、「ウィルス対抗力の強いソフトの必要性」を認識しない人々をユーザーとして取り込むのは危険と言えるでしょう。仮に「ウィルス対策ソフトはとにかく安ければいい」という人々に売り込むために値下げに踏み切れば、彼らをつなぎ止めるためには低価格を維持しなければなりませんから、けっきょく価格競争に巻き込まれるのがオチです。奇をてらわずに、地道な啓蒙活動(交通事故防止キャンペーンのように、ウィルス被害にあった人々に実名で登場してもらう、などといった手が使えるかもしれません)を続け、それに反応した人々だけを相手にする……というのが、最終的には最も効率的な道となるのでしょう。

この「誰に買ってもらいたいのか」という点は、あらゆるビジネスに共通する点ですよね。幸いウイルスバスターは、最近ますます競争が激化しているウィルス対策ソフト市場にあっても、好調な売上を持続しているとのこと。今後は製品そのものをPRすることに加え、リージョナルトレンドラボの活動をPRするなど、「高い技術力を有するプロフェッショナル集団である」という点を理解してもらうというのも有効かもしれません。

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