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家族コラボレーションの時代

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あらゆる情報がデジタル化される時代。家系図も桐の箱に収められた巻物で、ではなく、オンラインで管理される時代が来るのかもしれません。Business Week に、その名も「家系図2.0」という記事が掲載されていました:

Family Trees 2.0 (BusinessWeek)

記事で紹介されているのは"Geni.com"と"Ancestry.com"という2つのサービス。どちらも簡単な操作で家系図が作れて、WEB2.0的に様々な人々(家族や兄弟、いとこ、もしくは見知らぬ人々)を巻き込んで情報を収集できるというもの。まさしく「家系図でつながるSNS」という表現がピッタリかもしれません。さらにオンラインならではの仕組みとして、写真のアップロードや、家族に関する逸話の共有など様々な機能が用意されています。

まあ現実にはこういったサービスを利用して家系図を作ろうとしても、父親や母親に「招待メール」を送った段階で作業が止まってしまう(少なくとも僕の両親はSNSはおろか、メールすら満足に操作できないはず)と思いますが、面白い試みではないでしょうか。実際、「専門家が調査して家系図を作ってくれるサービス」などというものが高額にも関わらず人気を集めているそうです。それだけ家系図作りというものが人々の関心を集めやすいということでしょうから、こういったウェブサイトがきっかけとなって、親子や親族の交流が進むなどということもあるかもしれません。

先日、祖母が亡くなって遺品整理をしていたとき、古いアルバムが出てきました。僕のご先祖様(といっても明治・大正時代の話ですが)は東京・大塚で畳屋を営んでいたそうで、職人が集まって撮った記念写真や、大掛かりな結婚式を準備している写真、戦争で出征する兵士の写真などが収められています。しかし何の注釈も書かれていないので、そこに写っているのが誰なのかほとんど分からない……そこで法事で親戚が集まった際、祖母の兄弟に尋ねてみたところ、「これは○○ちゃんだ」「これは××が結婚した時だよ」などと様々な話が出て盛り上がりました。まさしく、古い写真をきっかけに親戚間の交流が生まれたわけです。

ウェブ上で不特定多数の人々が共同作業できるサービス、プロジェクトメンバーが協力できるサービス等には既に様々なものが生まれています。しかし「家族・親戚コラボレーション」を可能にするサービスはこれまで見落とされてきたのではないでしょうか。もちろん現在の「親」世代にITリテラシーが不足しているという点は考慮しなければなりませんが、だからと言って全くニーズがないというわけではありません。家系図作りのような趣味的なものもあれば、孫の写真やビデオを共有するといった日常的なものもあるでしょう。さらにPCスキルを持つおじいちゃん・おばあちゃんが増えてくればもっと様々なニーズが生まれてくると思います。

近い将来、桐の箱ならぬ「デジタル保管庫」にログインすると、自分のひいじいちゃんが撮っておいた「美しい畳の作り方」などといったビデオが再生される……などといった体験が可能になっていたら楽しいと思うのですが。そしたら逆に、「子孫に尊敬されるような何かを残しておかないと」という気分になってしまうでしょうか?

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