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身勝手なコミュニケーション

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SNS流行の背景には、現代社会の希薄化した人間関係への反動がある -- なんて書くとどこぞのワイドショーで大学教授が言い出しそうな話ですが、「他人とのコミュニケーションを楽しみたい」という心理が存在していることは事実でしょう。その心理がネット上に現れたのがSNSの流行だとすれば、現実世界に現れたのは「ゲストハウス」の流行かもしれません:

■ ブームの裏側 -- 若者呼ぶゲストハウス (日経流通新聞 2007年1月8日 第16面)

昨日の日経流通新聞の特集記事。最近若者たちの間で、トイレや風呂などの生活施設を共用にした安価な賃貸住宅「ゲストハウス」が人気なんですよ -- という解説なのですが、以前からテレビ等で紹介されていましたし、いまごろ気づいたの?と思われる方も多いかもしれませんね。

このゲストハウス人気の一因として、記事が指摘しているのが「コミュニティーの存在」。もちろん賃料が安いことも魅力ですが、共用施設があることで必然的に他人とのコミュニケーションが生まれ、寮生活のような賑やかさが楽しめる点が若者にウケているというわけです。実際、1990年代初めには外国人がほとんどだった入居者は、いまでは日本人が約8割を占めているのだとか。この辺りの流れは、SNSの流行となぞらえることができるかもしれません。

一方、記事には面白い指摘があります。入居を求める人々は、なんでもいいからコミュニケーションしたいという訳ではないようです:

共同生活ゆえの問題点もある。例えば、人間関係。「物件ごとに“アグレッシブ系”や“まったり系”などカラーがあり、入居希望者を振り分ける苦労がある」(水谷代表※)。仲介側としても、入居者の個性の見極めが大切だ。
(※ゲストハウスを運営する「チューリップ不動産」の代表)

共同生活を求めてゲストハウスに来るのに、自分に合わないスタイルでは交流したくない -- というと何とも身勝手ですが、昔のような「ゼロか100か」という人間関係は求めていないということなのでしょう。しかし物件ごとに「まったり系」などのカラーがあるというのは面白いですね。良くも悪くも、現実世界では「身勝手なコミュニケーション」に対応する環境が整いつつあるということかもしれません。

以前から mixi の「足跡機能」(自分のページにアクセスしたユーザーのIDを調べることができる=他人に自分の来訪が知られる機能)について、「無くして欲しい」「いや必要だ、嫌なら入会しなければいいじゃないか」という議論が繰り返されています。この背景にあるのも、ゲストハウスに見られるような微妙な心理状態なのかもしれません。SNSもゲストハウスのように、自分に合うコミュニケーションが可能なサービスを求めて人々が放浪する(多種多様なSNSが乱立・共存する)ようになるか、コミュニケーションのスタイルがカスタマイズ可能なように大手SNSが対応する(mixi が足跡機能をオプション機能にするなど)ようになる可能性があると思うのですが、どうでしょうか。

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