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ゴールドラッシュで儲けたのは・・・

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ゴールドラッシュで儲けたのは誰か?という謎解きがあります。もちろん答えは「金脈を掘り当てた人」ではなく(現実にはそんな人もいるのでしょうが)、正解は:

  • 穴を掘るのに使うスコップを売る人だった
  • 金鉱目当てに集まった人々に衣服を売った人だった
  • 金鉱付近の地図を売った人だった

などなど、要は「金鉱を掘ること自体ではなく、その派生ビジネスで成功した人々」だった -- という話です。ビジネス書などでもよく紹介されている話なので、ご存知の方も多いかもしれませんね。

この「派生ビジネスで儲ける」という手法は、どんなヒット現象にも応用できると思いますが、流行のWEB2.0 も例外ではないようです。今日の日経MJにこんな記事がありました:

■ ブームの裏側 -- ウェブに輝く漫画ヒーロー 読み、描き、批評 デジタル化 (日経流通新聞 2006年9月29日 第24面)

最近、PCやケータイからマンガが読めるサイトが増えていることを紹介した記事。またマンガに特化したSNS「マンガ読もっ!」や、マンガ版 Flickr (?)とでも呼ぶべきマンガ共有サイト「マンガ市場ドットコム」などを通じて、書き手と読み手の間の境界線が薄れてきたことが紹介され、「漫画も Web2.0 時代を迎えている」と総括されています。

興味深いのは、この記事の中で「お金」に関係する説明が出てくる部分。ちょっと列挙してみると:

  • プロの漫画が無料で読めるウェブコミック(一覧表)
  • ・・・9作品を無料公開中だ。
  • ケータイ☆ブラッドでは月額315円からの情報料とパケット代で全作品が・・・
  • ・・・「マンガ読もっ!」は、いわばミクシィの漫画版。無料で会員登録でき・・・
  • ・・・「マンガ市場ドットコム」。誰でも自分の作品を公開でき、現在、約1030作が無料で読める。2003年のサイト開設当初は漫画の公開・閲覧は有料だったが、2005年に双方とも無料にした。

と、安価・無料のオンパレード。これは WEB2.0 系の分野ではおなじみの話ですよね。しかし唯一、まとまったお金が出てくる部分があります。それは:

そんな漫画制作を手助けするソフトの一つがセルシス(東京・渋谷)の「ComicStudio」(1万2600-4万8300円)。2001年8月の発売以来5万本以上を出荷し、外国向けの「MangaStudio」も米国、英国、カナダ、ドイツで販売する。

と、実はツールに関する部分だったりします。WEB2.0 が現代のゴールドラッシュだとしたら、「ComicStudio」はまさしく金鉱を掘るためのスコップ、といったところでしょうか。

いまだ広告収入しか確固たる収入源の見えない WEB2.0 のコア(?)ビジネスに比べ、こうした派生ビジネスでは、従来通りの「モノを売る」という手法が通用するのかもしれませんね。もちろん誰かが「ComicStudio」と同等の性能を備えた無料ソフトを開発・配布する時が来るのかもしれませんが、その使い方を解説する本を書いて売ったり、どのソフトを使うか・どうやって使いこなすかをコンサルテーションするビジネスにシフトするなど、別の派生ビジネスに移っていくこともできるでしょう。

以前もご紹介しましたが、クリス・アンダーソンの本『ロングテール』(最近日本語訳が出版されました ― オススメです)では、ロングテール現象を「生産手段の民主化」「流通手段の民主化」「需要と供給の一致」の3つにブレークダウンし、それぞれの局面でビジネスが生まれると説いています。すなわちアマゾンのように直接的なロングテールモデルを追及するだけでなく、ComicStudio のような生産手段を販売したり、無数の選択肢の中から良いものを見つける手助けをする(雑誌の専門誌やコンサルティングなど)といったモデルが考えられるということですね。「派生ビジネス」と言うと流行にタダ乗りするようなイメージもありますが、ある現象の全体像を捉え、そのエコシステムのどの部分が儲かるのかを考えることが重要なのだと思います。

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