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ブログする病院

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猫も杓子もブログにSNS、ということで、いまや国の機関までブログ・SNSを開設する時代です。どんな組織や団体がブログを始めても驚きではないのですが、最近は病院までブログを活用しているのだとか:

■ 医療 広がるネット活用 -- ブログで病院PR◆技術向上へ意見交換 -- 患者も医師も呼び込み(日経産業新聞 2006年8月1日 第3面)

記事で紹介されている「病院ブログ」はこちら。東京・中野区にある病院が開設されたものです:

医療法人社団 健友会 中野共立病院

ブログを一見すると気付くと思いますが、記事ではしきりに看護婦さん・お医者さんを募集されています。そもそもこのブログがホスティングされている「メディカルブログ」は、医療人材サービスのキャリアブレインが開設しているサービスで、同社に求人広告を掲載している医療機関が無料でブログを始められるのだとか。人材募集のためのPR、という側面が強いのもなるほどといったところです。

日経産業新聞の記事によれば、医療機関の経営環境は診療報酬の引き下げなどで厳しさを増しており、医師と患者の奪い合いが始まっているそうです。普通にモノを買う場合と同様、医療機関を探す場合にもネットを活用する人が増えており、患者へのPRと人材募集を兼ねてブログを始める病院が増えていると解説されています。実際、中野共立病院は「情報発信は一つの営業活動。営業をしないと医師も患者も集められない」とコメントしています。

確かに複雑な設定やメンテナンスがいらず、ASPもふんだんに用意されているブログは、専用のITスタッフが十分でない医療機関にはうってつけのPR方法でしょう。操作も簡単ですから、医師だけでなく看護婦や技師、事務スタッフなどといった人々に記事を書いてもらうことも可能です。また病気や手術に関する専門知識・経験など、様々なネタが詰まっている点もブログ向きでしょう。その意味では、ブログを活用する病院が増えているのも当然だと思います。

しかし残念ながら、メディカルブログで書かれている記事の多くは「お祭りがありました」「近所においしい料理屋があります」「面白いものを見つけました」といった個人日記のような内容です。中には病院の施設紹介やスタッフの業務内容を載せているブログもありますが、多くの記事は一般の人々が「病院ブログ」に求めているものとは少しずれているように思います。医師が記事を書くという例もあまり多くありません。「ブログは更新頻度が高いほど検索エンジンで上位に表示される」というアドバイスを素直に実践して、とにかく何でもいいから毎日更新を、と考えている病院が多いのではないかとすら感じてしまいます。

ブログを担当されている多くのスタッフの方々は、普段の業務を一生懸命こなされているのだと思います。ネットを通じたPR、それ以前に医療機関のマーケティングなどといったものを専門に勉強された方は少ないでしょう。そこにブログというツールだけ登場しても、ちぐはぐな印象になってしまうのは当然です。情報発信のチカラを得た人が、即座に優れたコミュニケーターになれるわけではありません。

「激化する競争を勝ち抜くためのPRツール」という側面があることは分かるのですが、ここはもう少し一般の人々や、患者さんの視点に立ったブログがあっても良いのではないでしょうか。病院の都合で情報発信するのではなく、読んだ人が何を得るかという考え方でないと、結局は飽きられて終わってしまいます。情報発信は発信者だけでなく、受信者が存在して初めて意味を持つ行為です。であれば、発信頻度よりも内容を重視すべきなのは当然でしょう。

最近は検索エンジンだけでなく、ソーシャル・ブックマークや人気ブログなど、様々な「優良コンテンツを探す仕組み」が存在するようになりました。例え更新頻度が低く、検索エンジンで下位に表示されるブログであっても、本当に役立つコンテンツはどこかで誰かが拾い上げてくれます。ネット上でのプレゼンスを高めるという目的はひとまず忘れて、本当に価値のある情報をどう掲載していくかを考えることが、医療機関ブログには求められているのではないでしょうか。

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