隠れたユーザーを探す
これまでも「団塊の世代」をターゲットとした製品/サービスを見てきましたが、最近はダイビングや格闘技などの体育会系アクティビティに取り組むシニア層を「アクティブシニア」と呼び、彼らを狙った動きが活発化してきているとのこと:
■ 泳いで飛んで 体育会系シニア (日経流通新聞 2006年5月22日 第20面)
例えばさいたま市にあるシーメイドダイビングスクールでは、ライセンス取得や体験ダイビングなどの年間参加者約300人のうち、約2割が50歳以上となっているそうです。スクール側では、「タンクを担ぐのが大変」「入れ歯でレギュレーターをするのはきつい」という中高年層の声に応えて、「タンクなし・レギュレーターなし」という新しいサービスを始めたとのこと。5月に実施したテストケースの評判は上々だったそうです。
シーメイドダイビングスクールの例のように、「中高年の負担を考えたものを用意するスクールが多い」ことが記事では指摘されています。また「同じ内容、同じ指導をする場合にも、自分たちの年齢に近いインストラクターから教わるほうがすんなりと受け入れられることがある」のだとか。要は若者が参加することを念頭に開発された既存サービスをそのまま提供するのではなく、新たに登場した「アクティブシニア」という人々を見つめ、彼らが参加しやすいようにカスタマイズしたサービスが必要だということでしょう。
しかし考えてみれば、ユーザーに合ったカスタマイズを行うというのは、何もシニア向けの製品/サービスに限った話ではないはずです。「女性」「子供」「都市部で働くビジネスマン」「子育て中の主婦」など様々なグループが存在しているわけで、本来は各セグメントに適した製品/サービスが提供されなければなりません。「アクティブシニア」層は団塊世代の退職により注目されるようになりましたが、実は他にも隠れたユーザー層が存在し、彼ら向けにカスタマイズされた製品/サービスを待っているのではないでしょうか。
「アクティブシニア向けの体育会系サービス」の登場を阻んでいたのは、「お年寄りがダイビングなんてするはずない」という思い込みでした。「子供がRSSリーダーなんて使うはずない」「男性がデパートに化粧品を買いにくるはずがない」「お年寄りは携帯電話を使いこなせない」 -- などなど、他にも様々な思い込みがはびこっているはずです。そんな思い込みを探すことは、隠れたユーザー層を発見する手がかりになるかもしれません。